《停念堂閑記》145
「停念堂寄席」」82
「欲張り」
本日も、「停念堂閑記」に、ようこそお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。
せっかくお越し下さいましたが、ここでの話は、相も変わらぬ、毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、要するに間抜けな話で御座います。
深刻にならないところが、取り得ですよ。
夜、眠れなくなったりしませんからね。
もー、すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。
なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。
あるお方が申しておられましたよ。
ヒマ潰しにすることは、須(すべか)らくおよそアホくさいものだと。
まさにその通りで御座いますな。間違いおまへん。
ところが、このアホくさい中から、凄い事が産まれる場合があるんだってさ。ものすごくタマにね。
しかし、アホくさい事は、紛れもなく殆どアホくさい事なんだそうですだよ。
間違い御座いません。《停念堂閑記》がそれを証明している代表的なものですだ。
定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。
毎日のヒマを。
お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。
しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。
手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。
その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。
と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。
打倒、閑、暇、ひま、ヒマーッ!
A A O! エイエイ、オー!
ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声ですなー。
情けねー! トホホ。
毎度バカバカしい話で、しばしのヒマ潰しにお付き合い下さいませ。
ところで、この「バカバカしい」と言うのは、何を基準として、ここからこっちはバカバカしい、ここからあっちは、バカバカしくない、と判断すれば良いのか、と言う大問題が横たわっているのですよ。
対策としましてはね。「バカバカしい基準設定委員会」なるものを設置しましてね。そこで、基準を設定すると言う方法が御座いますよ。
まずは、誰を委員にするのかを決めるなくてはなりませんよ。そこで「バカバカしい基準設定委員会委員選定準備会」を設けましてね。さらに、この準備会のメンバーをどの様にして決めるかの「バカバカしい基準設定委員会委員選定準備会メンバー選定準備会」が必要になりましてね。・・・・・
実に、その準備を整えるまでの準備が切りがない事態になるのですよ。民主主義を徹底するには、中々難しいところがありますねー。
そして、見事に「バカバカしい基準設定委員会」ができましたら、その審議過程をガラス張りにして、透明性が失われてはなりませんので、常に、一般公開で議事録もキチンと残さなくてはなりませんよ。
離任する人が、その後任を裏でコソコソと決めようなんて、そんな姑息なことをやったり、また、やらせてはいけませんよ。
基準は、関わる全ての事柄の判断の基、出発点ですからね。とにかく、裏でコソコソと取り引きして、一部の者に都合の良いことを秘密裏に決めていく、いわば伝統的永田町文化の様なものを認めてはなりませんよ。
そして、最初の問題は、「バカバカしい基準の設定」に関わる課題が、永田町管轄のものかどうか、と言う課題が存在しますな。まずは、この点に関する審議が必要で、その機関が必要となり、この準備機関の設置に関わる必要がありましてね。この準備にまた、・・・・・・と、色々と手間暇が必要となるのですよ。
ネッ、勝ち負けがハッキリしているスポーツ界だって、決勝戦を迎えるまで、幾たびもの関門が御座いますから、基準を決めるのは大事なことで、中々難しい側面がありますね。
と言いますとね。「バカバカしい基準の設定」はどうなるのか、と言いますと、この手の事柄は、一律にコレって言うものを設定するには、馴染まない側面がある様なので、結局は、それぞれの個人が、それなりの基準を持って臨んで貰うのが、良い様に思われるのですよ。
と言うことで、「停念堂閑記」におきましては、「バカバカしい基準」は、個々人がそれぞれ持てば良い、と言うあたりで、手を打っては、と言うことにしたいと考えますので、よろしくお願い申し上げます。
とかなんとか、バカバカしいことで、幾分のヒマ潰しができましたよ。
さて、本日のバカバカしい話のネタには、「欲張り」と言うのを持ってきましたよ。
では、ヒマ潰し、参りますよ。
「御隠居。いらっしゃいますか。」
『六さん。お待ちしておりましたよ。』
「いやね。アッシは、今日はものすごく良い天気なもんで、ひょっとしたら、御隠居、お出かけかなー。なんて、思っておりやしたら、留守でなくて、よかったですだ。」
『今日は、天気も良いし、六さんも元気いっぱいのようで、結構な日ですなー。』
「いやいや、そーでもねーですだよ。これで、アッシもいろいろこぜーやして。」
『なんです。六さん。 なんぞ悩み事ですか。』
「いやー、そんな深刻な事ではねーですだ。
何時ものことですだよ。その、カカーとでやすね。
朝から、一戦交えましただよ。
今日は、まー、引き分けと言ったところでして。」
『引き分けですか。それはよかったですね。
ご無事で何よりですよ。』
「御隠居。それはねーですよ。それでは、アッシは何時もボコボコにやられてる見てーではねーですか。」
『これはこれは、失礼いたしました。例のごとく、パチンコ玉攻撃にあってね。ボコボコに。』
「御隠居には、かなわねーな。
何ねー、些細なことで、この欲張りーと、きやしたので、お前こそー、と言い返しましてね。それであれこれと、お互いに欲張りの検証となりやしてね。なかなか決め手に欠く事態となりやして、ここは、一つ民主的に解決しょーじゃねーか、と言う事になりやしてね。投票箱と投票用紙を用意しやしてね。投票の結果、お互い1票ずつの得票で、それでもって、まー、今日のところは引き分けと言う結果でして。へー。」
『それはそれは、お二人で投票による決着を。民主的でよー御座いましたね。軍隊が介入すると、パチンコ玉が飛んできますからね。平和的に解決できて、本当によー御座いました。』
「へー、事態はなんとか、乗り切ったのでやすが、カカーと欲張りの検証をしているうちに、あれも、これも、と言う事態で、何が何だかグチャグチャになってしまいやしてね。
そもそも、欲張りってなんだか、分からなくなっちまっただよ。
それで、今日は、欲張りってどう言うことか、御隠居に教わろうと、出かけて来ましただよ。」
『まー、欲張りについてですか。これは、難しいですよ。難題ですよ。六さん。』
「へー、そんなに難しいことですかい。どの辺が難しいだよ。御隠居。」
『まずは、欲張りの判断基準が必要になりますよ。ここまでは欲張りではない。ここからが欲張りだ、と言う判断基準をはっきりさせておかなくては、欲張りかどうかの判断ができませんよ。六さん。』
「そー言われれば、そりゃーまーそうですだな。それでは、その基準とやらを、作るには、どーしたら良いだよ。御隠居。」
『対策としましてはね。「欲張り判断基準設定委員会」を設置しましてね。そこで、審議を行い基準を設定すると言う方法が御座いますよ。』
「それでは、早速その「欲張り判断基準設定委員会」を作らなくてはならねーだな。御隠居。」
『それでは、まずは、誰を委員にするのかを決めるなくてはなりませんよ。そこで「欲張り判断基準設定委員会委員選定準備会」を設けましてね。さらに、この準備会のメンバーをどの様にして決めるかの「欲張り判断基準設定委員会委員選定準備会メンバー選定準備会」が必要になりますよ。』
「御隠居。それでは、「欲張り判断基準設定委員会委員選定準備会メンバー選定準備会」を作るべ。」
『六さん。そう言いますが、「欲張り判断基準設定委員会委員選定準備会メンバー選定準備会」を作るには、その準備委員会を作る必要があるのですよ。
とにかく、その準備を整えるまでの準備が切りがない事態になるのですよ。民主主義を徹底するには、中々難しいところがありますねー。六さん。』
「御隠居。中々手間がかかりそうですだなー。」
『そして、見事に「欲張り判断基準設定委員会」ができましたら、その審議過程をガラス張りにして、透明性が失われてはなりませんので、常に、一般公開で議事録もキチンと残さなくてはなりませんよ。六さん。』
「御隠居。なんだか、似たようなことを、一度聞いたような気がしますだよ。
結局、この手の事柄は、一律にコレって言うものを設定するには、馴染まない側面がある様なので、結局は、それぞれの個人が、それなりの基準を持って臨んで貰うのが、良い様に思われるのですよ。
なんて、言いだすのではねーでしょうね。御隠居。」
『六さん。察しが良いですねー。その通り。
と言うことで、六さんはどうしますか。』
「アッシのところでは、民主主義が第一でやんすから、カカーと意見を出し合って、その上投票で決めますだよ。御隠居。」
『それで、1票対1票で、引分けですか。六さん。』
「御隠居。よくご存知で。」
『六さんのところの民主主義は、中々進展しそうにありませんな。』
「だから、御隠居に相談してるだよ。」
『相談事は、欲張りとはどう言うことか、と言う事ですよね。六さん。』
「そーですだよ。御隠居の教えを受けて、けーって、もう一度、カカーと討議の上、民主的に投票で結論を導くだよ。」
『それでは、私の独偏(独断と偏見の略語)で参りますよ。
まず、パソコンで「意味 欲張り」で検索しますと、出ましたよ。六さん。ズバリ来ましたね。「欲を張る事」だって。なんと分かり易い解説では御座いませんか。
六さん。あなた欲を張ってませんか。』
「だから、欲を張るとは、どう言うことか、と尋ねてるだよ。」
『と言うことは、「欲」とは何か、と言うことから始めなくてはなりませんよ。これは、ヨク考えなくては、ヨク分かりませんよ。六さん。』
「御隠居、ダジャレやってねーで、さっさと頼みますよ。」
『と言うことは、一応「欲とは何か検討委員会」を設置して、ここで検討しなくてはなりませんよ。そのためには、その準備委員会が必要になりますよ。六さん。』
「御隠居、それはもういーだよ。アッシとカカーの投票で、民主的に決めるだから。」
『と言うことは、1票対1票の引き分けと言う結果になりますなー。どうします。六さん。』
「だから、ここは、御隠居の独偏でいーですだよ。」
『では、独偏で行きますか。
まず、「欲」の概念を一応はっきりさせておかないと、話がもつれますね。と言いながら、この概念の形成は、すこぶる難しいようですよ。だけれど、ここは、「停念堂閑記」ですからね。身に合ったところで、まーまーの大雑把なところで、ご勘弁頂くことにしますよ。よろしいですね。六さん。』
「何でもいーだから、さっさとやって下せーよ。御隠居。ただし、堅苦しくてはなんねーだよ。小難しくなると、アッシは自動的に寝てしまうだよ。まー、良い加減でいーだから、面白、可笑しく頼みますだよ。」
『となれば、気楽でいーですなー。まー、六さんと私の間のヒマ潰しの話ですからね。』
「そーですだよ。余分な話で、かなりヒマ潰しちゃってるから、あとは、ざっとで良いーだよ。ざっとで。」
『それでは、にわか雨で行きますか。』
「御隠居、何ですだ。そのにわか雨で行くとは。」
『ザーッと、行くと言うことですよ。』
「御隠居、ダジャレですかい。そんなヒマ潰しはいーだから、ささっとおねげーしますだよ。」
『それでは、ささっと、行きますと、「欲」とは、人間誰でも持っている、色々な物・事を自分のものにしたい、と言う心のことでしょーな。』
「へーへー、「欲」とは、左様なことですけー。ヨクわかっただよ。」
『六さんだって、そんな見え見えなダジャレを。』
「御隠居は、ちょっと気を許すと、小難しい方向へ進もうとするから、ここは、止むを得ず、アッシがちょいと、ダジャレブレーキをと、これで色々と気を使ってるだよ。」
『それはどーも。お気を使わせて、申し訳御座いませんね。ただ、ダジャレを言いたかっただけでしよ。本当は。』
「御隠居、何ぞ言いましたか。」
『イヤイヤ、空耳でしょ。空耳。』
「それでは、御隠居、その「色々な物・事を自分のものにしたい、と言う心は、何処から湧いてくるのですだ。」
『六さん、そんな難しいことを気軽に聞かないで下さいよ。そんなこと、簡単に分かるわけありませんよ。
六さんの場合は、六さんの心にそのようなことが、きっとあるのですよ。』
「御隠居、そんな訳の分からねー事言わねーで、もっと分かり良く言って下せーよ。
それでは、アッシの場合は、何時からそんなことが心にあったのですだー。」
『また、そんな難しい事を。きっと、生まれた時から持っていたのではないのですか。』
「生まれた時から。気がつかなかったなー。何処に置いてあったのかなー。御隠居、何処に置いてあったと、思います?」
『そんな事、知りませんよ。二階の押入れの中がどっか、そのあたりではないですか。』
「二階の押入れね。御隠居、ではちょと探してくるだよ。」
『ちょっと、ちょっと、六さん。冗談ですよ。冗談。』
「御隠居、アッシも冗談だよ。だいたいアッシの家は、平家だよ。二階はねーだよ。」
『もー、参りましたね。
例えば、人間、十人十色と言われるように、色々な性格の人がいますよねー。その一人一人異なる性格の中に、共通で持っている性格があるでしょ。例えば、好き嫌いとかね。
「欲」はきっと、その人の持っている「好き」と言う心の中に、潜んでいるのですよ。独偏ではね。
要するに、「好き」なものは、自分のものにしたくなる心が、すなわち、「欲」と言うものではないのでしょうか。嫌いなものは、自分のものにしたいと思わないでしょ。』
「なるほど、理屈はつけようだな。」
『六さん、何か言いましたか。』
「御隠居、空耳ですだよ。空耳。年の割には、耳はいいようだな。」
『六さん、何か言いましたか。』
「御隠居、空耳ですだよ。空耳。遠い遠い、ハヤブサが土だか埃だかを取ってきた、遠い空の彼方の空耳ですだよ。」
『そんな空耳、聞いたことが御座いませんよ。六さん。』
「要するに、御隠居。「欲」は、それぞれが持っている「好き心」から発生するだな。好きな物・事を自分のものにしたい、と言うのが「欲」と言う事だな。」
『概ねそんなところでどうですか。それから、「好き心」とは別に、人間は生を受けたら、誰しも、生きていかなくてはなりませんので、行きていくために、無くてはならないものを手に入れなくてはなりませんよ。』
「と言うと、具体的にはどう言う事ですだ。御隠居。分かりやすく頼みますだよ。」
『六さん、あなたそんな事を気軽に言いますが、具体的とか分かりやすくと言うことが、一番難しいのですよ。』
「だから、そこをなんとか、御隠居の独偏で構わねーだから、ダジャレでも、屁理屈でもいーだから、アッシに分かるように、頼んでいるだよ。御隠居。」
『参りましたね。例えば、人間生きて行く上で、最も必要なものは、昔から、衣食住と言われていますよね。これが、手に入りにくいと、とにかく、生きて行くのに困る訳ですよ。これは、誰しも好き嫌いを言っていられない場合が御座いますよ。ただし、現実には、この入手にあたっても、当然のように好き嫌いが介入してくるのですよ。結局、好きなものを手に入れたがることになるのですよ。例えば、「衣」すなわち着るものだって、すぐに好みが出るでしょ。「食」すなわち食べ物だって、好みが関わってくるでしょ。「住」すなわち、家だって、あれこれと好みがあるでしょ。事情によっては、好みの度合いを言ってられない場合もありますがね。
要するに、人間誰しも生きて行くのに必要なものを手に入れたい。できれば、自分の好みにあったものを、豊富に手に入れたい、と思うのではありませんか。
物ばかりでは無くてね。カッコいいねとか、凄いねとか、何でもできるのだねとか、精神的な満足なども、手に入ればいいな、と思ったりするでしょ。
その手に入れたいと言う心が、すなわち「欲」と言うものではないのでしょうか。
このあたりで、どうでしょうかね。六さん。』
「もう一息のところまで、来ただよ。「欲」は何となくわかったような気がしますだが、これにくっついている「張り」の方は、どうなるだ。御隠居、もう一踏ん張りおねげーしますだよ。」
『また、そんなダジャレを。シャーシャーと。
「張る」ですか。これは、色々な場面でよく使われますねー。そのたびに幾分のニュアンスが変わったりしますので、ここでは「欲」にくっついた場合をみることにしますかね。
この場合の「張る」は、要するに、「広く、多く、いっぱいにする」と言った意味合いになる、と考えてはどうでしょうか。』
「早い話が、いっぱいだ、と言うことですかね。御隠居。」
『その辺りで良いのではないでしょうかね。
だから「欲」にくっついて「欲張り」となれば、「好みの物や事を手に入れたいと言う心がいっぱい」なのが、「欲張り」と言われているのではないのでしょうかね。』
「御隠居、どうも有難うこぜーやした。早速、家にけーって、カカーとの再戦に臨むことにしますだー。」
『六さん、あまり「欲」をだすと、嫌われますよ。ほどほどが良いですよ。』
「へー、分かりやした。いざとなったら、民主的に投票で決着をつけますだ。」
毎度のことですが、引っ張りはしましたが、特に、これと言ったオチは御座いません。時節柄、入試の時期ですので、落ちはつけない方が、良いのかなー、なんてね。
「停念堂寄席」の話に、なるほどと言ったオチを期待しては、いけませんよ。それは、「欲張り」と言うものです。
所詮は、気まぐれのヒマ潰しですから。
どうもお疲れ様で御座いました。
お後が宜しいようで。