「停念堂閑記」143

《停念堂閑記》143

 

「停念堂寄席」」80

 

「イタチごっこ

 

 

本日も、「停念堂閑記」に、ようこそお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

せっかくお越し下さいましたが、ここでの話は、相も変わらぬ、毎度の代わり映えのしない、間抜けな話で御座います。

いくぶん具体的に申しますと、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリのアホくさい、バカバカしい、クダラない、要するに間抜けな話で御座います。

深刻にならないところが、取り得ですよ。

夜、眠れなくなったりしませんからね。

もー、すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。

 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。

あるお方が申しておられましたよ。ヒマ潰しにすることは、須らくおよそアホくさいものだと。まさにその通りで御座いますな。間違いおまへん。

ところが、このアホくさいと思われる中から、凄い事が産まれる場合があるんだってさ。すごくタマにね。

しかし、アホくさい事は、紛れもなく殆どアホくさい事なんだそうですだよ。

間違い御座いません。《停念堂閑記》がそれを証明している代表的なものですだ。

 

定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。

 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒、閑、暇、ひま、ヒマーッ!

A A O!  エイエイ、オー!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声ですなー。

情けねー! トホホ。

 

 

毎度バカバカしい話で、しばしのヒマ潰しにお付き合い下さいませ。

このバカバカしい話というのがですね、結構骨が折れるのですよ。

真面目な話は、大して骨が折れることはないのですよ。以前にね、言いましたように、他人がどう言おうと、小生は、真面目がスーツならず靴下を履いているような、ただただ真面目一方ですから、真面目な話は、ごく当たり前のことを言っていれば事すみますからね。簡単なのですよ。

これが、バカバカしい方はですね。当たり前のことを、淡々とと言っているのでは、ダメなのですよ。当たり前のことを、当たり前でなくとか、当たり前でないことを当たり前のようにですな、聞いている方をなんとか笑いに誘い込もうと、一捻りしなくてはならないのですよ。ここが、ヒマ潰しになるので御座いますよ。

これが、団扇(うちわ)ではなくてですね、センスの問題なのですよ。上手いこと笑わすには、それはそれは骨折する、いや骨が折れるのですよ。

しかしですね、所詮ヒマ潰しですからね、団扇もセンスも、骨折も、大して問題ではないのですよ。

ひたすら、ズーズーしくやる根性があるかどうかなのですよ。言い換えれば、真面目に取り組むかどうかの問題でして、その点、小生は、真面目がスーツではなく、靴下履いている様な存在ですので、大して問題がないので御座いますよ。幸いにですね。

そこで、ズーズーしく本日も、と言う次第なのですよ。

 

さて、本日は、「イタチごっこ」と言うのにチャレンジしてみたいと思うのですが、どうでしょうか。

と問いかけたところで、すぐに、返事を頂けるシステムにはなっておりませんから、結局は、こちらが勝手気ままにやっちゃう、と言うことですね。

しょっちゅう聞きますよね。「イタチごっこ」。今更、こんなことについて、どうのこうの言って見たって、どうなります。なんて、すぐに言われちゃうわけですが。これがですね。これが結構ヒマ潰しになりそうな気配を感ずるのですよ。

 

 それでは、参ります。

 

「御隠居、居留守ですかー。」

『なんです。六さん。いきなり、居留守ですかー、なんて。』

「ヘエ、アッシが御隠居の所に現れるのは、言うまでもなく、クダラネー相談の時なのですだよ。それで、御隠居も、良い加減ヘキエキしやしてね、モー居留守使っちゃおーかなー、なんて思うのでないかと、ちょいと先回りをしてみただよ。」

『そーですか。今日は、チョット捻りを入れてきましたね。まーまー、立ち話では、埒が明きそうにありませんから、どうぞお上がり下さい。』

「では、お邪魔いたしますだよ。」

『おばーさん、六さんですよ。お茶をお願いしますよ。』

[ハーイ、これは、これは、六さん、連日のお越しで、ご苦労様です。六さんも、やはり、ヒマ潰しに色々とご苦労なさっておられるのですか。おじいさんもね、毎日、ヒマ潰しに苦労しているのですよ。しかし、六さんが、いらしてくれるので、すごく助かっているですよ。今日も、よろしくお願いしますね。]

「ヘイ、アッシがお役に立てれば、明日も、明後日も、定期券を買ってでも、毎日参りますだ。奥様はヒマ潰しに、何かをなさっておられるんで。」

[私は、六さんのお茶受けを、今日は、何にしようかなーと、これが楽しみでしてね。いつも、頭をひねっているのですよ。それで、今日は、すり鉢に、ヒマの素のですね、味噌とゴマを入れましてね。これを擂粉木で、ゴリゴリとね。ヒマ潰しをしていたところですよ。]

「と言うことは、今日のお茶受けは、金目鯛の握りでも、おイナリさんでもなく、コンニャクの田楽ですかな。」

[惜しい、良いところつきますね。今日は、コンニャクではなく、絹豆腐にゴマ味噌を垂らして、絹豆腐田楽ですよ。]

「ヒェーッ、絹豆腐の田楽ですけー。」

[それで、六さん。角っこのお豆腐屋さんまで、絹豆腐を買いに行って来て下さいませんか。]

「奥さま、それだけは、それだけは、どーぞご勘弁下せー。

コンニャクならでーじょうぶですだ。絹豆腐はご勘弁を。」

[冗談ですよ、六さん。ちゃんと、絹豆腐は用意してありますから。それでは、少々、お待ち下さいませ。]

 

「ヒーッ、びっくりしたな。もー。

御隠居、奥さま中々やりますなー。御隠居より、はるかにセンスがありますぜ。キビシー、ですなー。さぞかし、御隠居も。」

『いえいえ、そんなことは、御座いませんよ。それより、六さんの奥方さま、まだ、節分のお面つけているのですか。』

「御隠居も、来ますなー。

ところで、御隠居。今日は、つまんねー事でやすが、「イタチごっこ」てやつについて、教えてもらいたくて、来たのですだよ。」

『今日は、イタチごっこですか。』

「へー、昨日、熊の処へ、ちょいとヒマ潰しに出かけましただよ。そしたら、なんと熊んとこの夫婦喧嘩の真っ只中に、行っちまっただよ。どうも熊の野郎がヒマ潰しに、昔遊んだブラモデルを部屋中いっぱいに、おっ散らかしたらしいのだよ。それを、熊のカミさんが、小言を言いながら、片付けたらしいのですだよ。そしたら、熊の野郎が、カミさんの隙を狙って、また、部屋中におっ広げたのだと。そしたら、また、カミさんが、片つけたのだと、そしたら、また、熊が・・・。と言う次第で、ついにカミさんが切れちゃって、いつまで、こんなイタチごっこやってられるかってんで、プラモデルを手当たり次第熊めがけて、投げ付け出しだだと。

そこに、アッシがヒョッコリと顔を出したもんだから、いきなり零戦が飛んで来やして、危うく直撃を食らうところだったのですだよ。」

『それで、それで、どうなりました。六さん。』

「御隠居、そんなに急かせないで下せーよ。御隠居。

そこで、アッシは、零戦をヒラリとかわし、たかったのだけれど、かわしきれずに、顔面直撃となりやしてね。

これではいけねー、と思いやして、落ちていたウルトラマンを拾うや、カミさん目がけて、スペシウム光線を、ビビビーっとね。」

『それで、それで、どうなりました。六さん。』

「そしたら、熊の野郎が、ゴジラを持って、ガオーッと火を噴きやがったのですだよ。」

『それで、それで、どうなりました。六さん。』

「御隠居、そんなに乗り出さねーで下せーよ。こんな話、好きでやんすか。」

『エー、そりゃーもー。ヒマ潰しにはもってこいで。』

「そしたら、カミさんが戦艦大和を出動させやしてね。ウルトラマンゴジラ戦艦大和が、三つ巴になりやして・・・。

御隠居、どこまでやらせるだよ。もー、朝っぱらから、めーったなー。」

『それで、結果はどうなりました。』

「結果ですけー。結果はこれですだー。」

『それですかー。さっきから、気にはなっていたのですよ。おでこのバンソーコー。御宅では、まだ、節分を続けているのですかー、なんて、思っていたのですが。そーではなくて。』

「そーなんですだよ。いきなり、熊の野郎、カミさんと組みしやがって、ゴジラ戦艦大和の連合軍に、虚しくウルトラマンがやられちまった、と言う事でして。面目ごぜーやせん。」

『それは、それは、災難でしたなー。で、六さんの奥様は、それで納得されたのですか。』

「それがですだよ。御隠居。家へけーって来て、バンソーコーを張り終わるや、例のパチンコ玉の入った枡を持って、飛び出そうとしたのですだよ。」

『そーでしょう。そーでしょう。そー来なくては、いけませんよ。ウルトラの妻の出番ですね。』

「御隠居、そんな、期待しねーで下せーよ。必死に止めたのですだよ。これ以上、大げさになると、全面、戦争になりやすから。そんなこんなで、アッシは、今後、パチンコはやらないと言う約束をさせられちまった、と言う次第なのですだよ。とんだトバッチリですだよ。」

『それは、お気の毒でしたねー。

それで、今日は、そのご報告に、おいでになった、と言う事ですか。』

「まー、それもあるだが、もう一つあるだよ。それは、熊の奥さんが、熊と揉めていた時に、「イタチごっこ」がどうのと言っていたのを思い出したのですだよ。それで、この「イタチごっこ」つーのをね、ちょいと教えて貰おうと、思いやしてね。」

『はー、ここで、「イタチごっこ」に飛び火するのですかー。これ以上、燃え広がらなければ良いですがねー。』

「どうです。御隠居。「イタチごっこ」で、ヒマ潰しと言うのは。」

『まー、悪くは御座いませんね。

では、早速ですが、六さんは、勿論、イタチはご存知ですよね。』

「それくれーは、存じ上げておりますだよ。でけーのも、知ってますだよ。オオイタチ。」

『なんです。そのでけーの、と言うのは。』

「御隠居だって知っているでしょ。オオイタチ。アッシの田舎では、秋祭りと言うのが、一大イベントでしてね。出店や見世物小屋が結構沢山並んでいたのですだよ。

綿菓子店、ヨーヨー釣り、金魚すくい、チョコバナナ、いろいろ屋台が出てましたよ。呼び名が何だったか、忘れちゃったけれど、丸い直径1メートル程のルーレット盤の様なものがあって、中央は平らで、周囲が5、6箇所に区切られていて、そこに景品が入れられいてるのですだよ。この盤が、手動で回る仕組みになっているのですだよ。そして、盤の中央に30センチほどの高さのヤグラが置かれていて、上にジョウゴの様なのが据え付けられていて、そこに、ビー玉を入れると、下の盤に落ちて、グルグル回って、どこかの景品のところに、ビー玉が入る仕組みになっているのですよ。ビー玉が入ったところの景品がもらえると言う仕組みですだよ。これが、良い景品のところには、中々入らないのですだよ。たいていは、スカで、飴玉1個とか、煎餅1枚とか、しょぼいところにしか入らないのですだよ。昭和の20年代後半の頃でしたね。アッシは、もっぱらこれにトライしましたね。いろいろ工夫しましてね。素直に、ビー玉をストーンと落とせば、間違いなくスカなのですよ。それで、ビー玉に回転を加えると良いぞ、と言う事になって、ビー玉を親指と中指で挟んで、思いっきり、ヒネって回転を加えて、ジョーロの口に落とすのですよ。これが、正解でしてね。アッシは、最も高いブリキの結構大きな自動車をゲットしたのですだよ。1回10円でしたからね。大儲けですよ。味を占めて、翌日やったら、また大当たりだったのですよ。調子に乗って、もう1回といったら、断られてしましましたね。もう、立ち入り禁止にされてしまいましただよ。」

『それは、すごいですね。それで、今は、もっぱらパチンコという次第だったのですか。

と言うより、それがイタチとどう関係がおありなのですか。』

「そーでしたな。お祭りには出店の他に、見世物小屋が来てましたよ。大掛かりなのは、やはりサーカスでしたなー。空中ブランコも、象の玉乗りとか、おどけたピエロとかね、結構盛り上がりましたね。他には、オートバイの樽回りだな。木の板で、結構大きな樽状のものが作られ、その内側をオートバイが横になって、走り回る訳で、これが落っこちないのですよ。日の丸を頭からかけたりして、目が見えない状態で、樽中をグルグルと回ったりするのですよ。時々、樽の上部まで上がってきて、飛び出てしまうか、とひやっとしたりしましてね。それから、人形劇もありましたね。岩見重太郎のヒヒ退治とかね。棒の先に人形がつけられていて、刀もくくりつけられていてね、棒が丸見えだったけれど、結構、面白かっただよ。

その他にですよ。にわか作りのテントの見世物小屋が建てられていて、木戸口に、「大イタチ」の看板を掲げたのがありましてね。木戸銭を払って入ったら、大きな板に赤いペンキが塗られていたのが置かれていて、これが、すなわち、大板血と言う訳でして、秋祭りは盛り上がってましたね。戦後、間もない頃は、こんなのが、年に一度の楽しみでね。学校も休みか、午前中だけだったりしましたね。中々のものでしたよ。

御隠居、これが大イタチですがな。」

『六さん、大分引っ張りましたねー。わかりましたよ。オオイタチ。』

「お祭りが終わっても、子供らはまだお祭り気分が抜けず、小さな板に絵の具で赤くして、これを引っ張って、走り回ったりしましてね。これが、イタチごっこてんでして。と言うのは、嘘です。そんなことは、しませんでしたよ。」

『六さんのイタチごっこは、創作ですねー。ヒマ潰しには、中々良い話でしたよ。』

「御隠居、本物の「イタチごつこ」の方を、おねげーしますだ。

イタチは、最後っ屁のイタチで、良いのだよね。」

『そうですね。毛皮のエリマキに使われたりするイタチのことですね。』

「御隠居、イタチは良いとして、「ごっこ」と言うのはなんですけー。」

『「ごっこ」は、難題ですなー。「こっこ」だったらねー。分かり易いのですがね。』

「なんです。その「こっこ」と言うのは。御隠居。」

『ニワトリとは関係ないですよ。北海道では、犬のこっこ、と言えば、犬の子、猫のこっこ、と言えば、猫の子のことですよ。広く言う時には、子犬、子猫も含める形で使っている様ですが。』

「そうすると、「こっこ」の前の「こ」が「子」なのか、後の「こ」が「子」なのか、「こっこ」が「子」なのかねー。御隠居。」

『六さん。細かく出てきましたね。私は、特に、国語学的に研究したことは、ありませんが、素人考えでは、前の「こ」が「子」に相当し、後の「こ」は、とくに意味を持たない、接尾語に相当するのかなー、なんて思っちゃったりするのですがねー。どんなものでしょうかねー。』

「御隠居、そのどーでしょうか、と言うの止めて下せーよ。アッシに言われても、どーにもなりませんよ。」

『そーですね。私だって、困っているのですから。

それはそうと、タラコと言うのがありますよね。ホカホカ御飯にタラコ、たまりませんなー。さっと、火で炙ると、また、風味が増しますよ。魚の鱈の卵を漬けたものですよね。

これを北海道流で言えば、鱈の卵は「鱈のこっこ」となる訳ですよ。また、「鱈のこっこ」が孵化して、小さい時も、「鱈のこっこ」の範疇に入りますね。

要するに、「鱈のこっこ」は、「鱈のこ(子)」で良いのですよ。これに、接尾語の「こ」が、くっ付いちゃうのでしょうな。

「こっこ」の形で、「子」に相当していると見ても、特に問題は無いようにも思われますがねー。詳しくは、国語学の専門家に聞いて貰えれば、解決することですね。ここでは、ヒマ潰しの材料でしか、御座いませんよ。』

「なんだ、ヒマ潰しですけー、御隠居。」

『ヒマ潰しにもう一丁行きますか。

北海道には、「ごっこ」と言う魚がいるのですよ。カサゴの一種とか。この魚の卵となると、これがなんと「ごっこのこっこ」ですからね。ごっこ鍋、ごっこ汁がうまい様ですよ。私はまだお目にかかったことが御座いませんがね。

子供の遊びになると、おママゴトでは、ごっこのこっこを使って、ごっこ汁とごっこ鍋を作ろうよ。てな会話になりそうですよ。

ヒマ潰しでした。「イタチごっこ」の「ごっこ」とは、なんの関係も御座いません。単なる、ヒマ潰しでした。悪しからず。』

「御隠居、「イタチごっこ」の「ごっこ」の方を頼みますよ。

「そっちの方ですかー。私だって、常日頃、「ごっこ」なんて、あまり考えてませんからね。でも、この「ごっこ」ってなにかなー、なんて思うことはあったのですよ。それで、今回、ちょっとねー。ヒマ潰し的に、ツッいてみたまでのことなのですがね。

ネットで検索して、チョコチョコと、拾い読みしたところでは、「イタチごっこ」については、子供の遊びの一つに、例えばA・B・Cの三人で、まず、Aが片方の手を甲を上にして差し出すと、Bがその甲の皮の部分を摘むのですよ。そしたら、次にCがBの甲の皮を摘むのですよ。そしたら、次に AがCの甲の皮を摘み、そのAの甲の皮を Bが摘む、と言う具合に、延々と続ける遊びらしいのですよ。実に、エンドレスですわ。それで、いつまでも同じことの繰り返しで、決着のつかないことを「イタチごっこ」と言う様になった、とか言うらしいですよ。』

「御隠居、同じことの繰り返し、と言うのは、分かったけんど、なんでそこにイタチが登場するのですだよ。」

『イタチだって、タマには、出たいと思うこともあるのでは無いですか。』

「そーきゃすか。御隠居。もう少し、ピリッとワサビの効いたのでおねげーしますよ。ホント。」

『失礼、失礼。これはですね。手の甲を摘む時に、「イタチ」「ネズミ」と、代わる代わる言いながら、摘んだと言うことらしいですよ。』

「へー、「ネズミ」も登場するのですけー。御隠居。としたら、なんで、「イタチ」と「ネズミ」なのですけー。」

『そりゃー、ネズミだって、タマには、出たかったんじゃー無いのですか。』

「また、ですけー。御隠居。頼みますよ。ホント。

なら、馬と鹿でもいーでねーですか。」

『イヤイヤ、それはダメですよ。そんな馬鹿なことを言っては。そんな大きい重い動物だと、手の甲に載せられ無いでしょー。手に余すのですよ。』

「御隠居、ここでダジャレですけー。」

『六さんが、馬と鹿なんぞと、誘導したくせに。』

「それでは、コオロギとキリギリスでは、どうですだべ。」

『そんな、似た様な例は、ムシしますよ。』

「また、御隠居、そんなダジャレを。」

『六さん、あなたがシムけるからですよ。』

「ダジャレは、一休みして、なんで、イタチとネズミが、「ごっこ」となるのですけー。御隠居。」

『イタチは、最近、都会では滅多にお目にかかることは、無いでしょうね。ネズミは、結構、都心の方にもいる様ですね。

この二匹の関係は、多分、イタチは、ネズミを追っかける、ネズミはイタチから逃げようとする、と言う関係にあったからなのでしょうね。

だから、次から次へと、手の甲の皮をつまんでいく時に、この追いかけっこが、遊びの掛け声として面白かったのでは無いのでしょうか。と独偏(独断と偏見)では、思うのですが。六さんは、どう思いますか。』

「言ったでしょう。アッシは、思わない方なのですだ。

まー、イタチとネズミの関係は、追う、逃げるの関係で、スピードをつけてやれば、ネズミが捕まっちゃったりして面白いかもしれねーが、これに「ごっこ」が付くのは、どうしたことですだ。」

『それは、多分、誰かが調子に乗って、「ごっこ」とつけちゃったのでは無いですか。』

「またまた、御隠居、頼みますよ。独偏で良いだから、それらしきことを、言って下せーよ。」

『らしきことですか。

ネットの情報によりますとね。「こうご(交互)」がなまって、「ごっこ」になったのでは、と言う説が紹介されていたましたよ。それ、イタチとネズミを交互に言いながら、手の甲の皮を交互につまんで遊んだ様ですからね。』

「本当ですかや。なんだか、御隠居みてーな、ダジャレの様な発想ですだよ。」

『さすがですね。六さん。私も何となくその様な気がしているのですよ。

だいたい「イタチごっこ」と言う遊びは、ネットでは、江戸時代からあった様に紹介されていましたが、どうでしょうね。何か根拠があるのでしょうかね。』

「そんなことは、アッシの知ったことではねーですだよ。ヒマ潰しに、御隠居が調べてみては、どーですだ。」

『だいたい、こうご(交互)がなまって「ごっこ」になりますかね。六さん、やってみて下さいよ。』

「アッシがですけー。では、行きますだよ。

こうご こうご こうご こうご こうご・・・・・

中々「ごっこ」には、ならねーだよ。御隠居、どこまでやれば良いだよ。」

『そーですね。短く見ても、三、四十年は、いや、五、六十年はねー。』

「御隠居、ジョーダンではねーですだよ。そんな長い間、御隠居のヒマ潰しにつき合えねーよ。」

『ご苦労様でした。「交互」が「ごっこ」に変身するには、中々時間がかかりそーですなー。

それからですね。「交互」が「ごっこ」に変身したと言うことは、初めは、「イタチ交互」だったと言うことになりますなー。

「イタチ交互」だったとすれば、子供の遊びの名称として、なんか固い感じがしませんか。

子供に「交互」は、あまり馴染まない気がするのですよ。「かわりばんこ」とか「かわるがわる」の方が、日常用語として、馴染みがありますよね。

そもそも、「交互」という言葉が、江戸時代の日常に子供の遊びに使われる存在だった様には、ちょっと無理があるのでは、と感じられるのですよ。』

「そうですだよ。アッシらは、もっぱら「かわりばんこ」ですだよ。」

『「交互」と言う言葉が、いつ頃から日本の日常用語として定着しだしたかは、トントと分かりませんが、これを突き止めるのは、大変な労力が必要ですよ。なんたって、昔からある書物をかたっぱしから、全部調べなくてはなりませんからね。私のヒマ潰しでは、到底、手に負える仕事では御座いませんよ。「古事記」とか「日本書紀』とか、利用者の多い書物は、ある程度索引が作られていますが、まだまだね。全ての書物についてはねー、手が回っるには、何年先になりますかねー。』

「御隠居そんなもの作る人が、いるのですけー。」

『利用度の高い書物については、かなり索引が作られてますが、まだまだですねー。

「交互」については、独偏では、明治になってから西洋の書物が日本に入ってきて、それを和訳する時に、色々と苦心したと思われるのですよ。そんな中で、「交互」と言う言葉が使用されだしたのではないかなー、なんて勝手に思ったりするのですよ。

例えば、「ライブラリー」と言えば、今は誰でも「図書館」だとわかっていますが、明治まで、日本には「図書館」と言う言葉はありませんでしたからね。「ライブラリー」をさあどう和訳したらいいか、と言う時に「図書館」としよう、と閃いた人がいたのですよね。』

「はー、翻訳は、テーヘンでんなー。そー言えば、今は、外国語をそのまま使うことが多いようで、電気製品を買っても、説明書が、外国語ばっかりで、アッシにやー、さっぱりわからねーだよ。」

『そーですね。説明書になってないものが多いですねー。ちんぷんかんぷんで。

どなたが、「交互」と言う言葉を使い出したのかは、知りませんが、たまたま「イタチごっこ」には、「交互」の概念が合うのでしょうが、例えば、「チャンバラごっこ」には、「交互」の概念は入り込みにくいですよね。「お人形さんごっこ」もね。

邪推すれば、誰か、きっとダジャレ趣味の誰かさんが、まさに、ヒマ潰しにですね。「ごっこ」に近い言葉はないかなー、なんて、たどり着いたのが「交互」だったりしましてね。』

「とすると、御隠居。昔、誰かは知らねーだが、御隠居みたいな人がいて、ダジャレで「交互」を「ごっこ」に結びつけた、チューことですな。」

『分かり良く言ってしまえば、そんなところでは、と思ったりしましてね。

またね。こう言う事情も、こじつけられはしないかとも、思われるのですよ。

と言いますのはね。仮にですよ。仮に、前に書いた様に「イタチ交互」が訛って、「イタチごっこ」になったとしますね。

これが、仮に、日常用語となって、一般的に普及した、としますとね。そーしている内に、「ごっこ」に「相互」の概念があろうがなかろうが関係なくなってしまい、子供の遊びに接尾語として、「ごっこ」が、くっつく様になってしまったんだとさ。と言う事情も考えられなくもないのですよ。』

 

「なるほど、屁理屈ですなー。御隠居。」

『へー、イタチだけにね。』

 

お疲れ様で御座いました。

またのお越しを、お待ち申し上げます。

 

お後がよろしい様で。