《停念堂閑記》152

《停念堂閑記》152

 

「停念堂寄席」」89

  

 

「勝負

 

 

ようこそ、「停念堂閑記」へ。よくお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

ここでの話は、相も変わらぬ、毎度、毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、底、奥行きの浅い、要するにマヌケな話で御座います。

しかし、取り柄もございますよ。決して深刻にならないところです。夜、眠れなくなったりしませんからね。

すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。

あるお方が申しておられましたよ。

ヒマ潰しにやることは、須(すべか)らくアホくさいものだと。

毎度毎度の《停念堂閑記》がそれを証明しておりますからね。 

さて、定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒! ヒマーッ!

A A O!  エイエイ、オー!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声でんなー。

情けねー! トホホ。

   

《こちら六さんです。さて、今日も今日とて、あいも変わらず、御隠居の処で、ヒマ潰しといくか。

御隠居、防犯装置を取り付けたからな。行ったら、まず、このカードを御隠居の家の門に取り付けられたカメラにかざす様にと言う事だな。あとは、案内のAIの声に従う様に、と言う事だな。このカードを忘れたら、門前払いと言う事だ。カードを忘れてはなんねーなと。このカード、ポイントつくのかね。何点溜まったら、特上になるのかねー。

オーイ、カカー。ちょっくら御隠居の処へ行って来るぜー。》

<アイよー。ゆっくりしといで。帰って来なくてもいーから。>

《いちいち憎ったらしい事を言いやがるね。帰って来なくてもいー、だってよ。そのくせ直ぐに迎えに来るくせに。

 

おっ、着いたね。このカメラだな。へいへい、カードをこうかざしてと。》

〝これは、六さん、今日もしらっしゃいましたか。相変わらずヒマなようですね。〟

《うるせーや。AI野郎、気楽に六さんなんて呼ぶんじゃねーよ。ヒマだろうが、忙しかろーが余計なお世話よ。トットと開錠しろってんだ。》

〝それでは早速ですが。六さん。今日は、ナゾナゾを作ってもらい、私が正解できなかったら、解錠すると言うことにしますよ。皆をうなづかせる様な秀作を期待してますよ。

《ナニ、ナゾナゾだと。皆をうなづかせる様な秀作だと、気楽なことを言ってんじょねーよ。AIよ、とやかく言うのなら、お前が作ってみろってんだ。》

〝 私は、そのような立場には御座いません。〟

《ハァー、どんな立場にいるんだ ? 》

〝そりゃー、六さんが来たら、課題を出す立場ですよ。できた作品を適当に評価し、開錠の是非を判定するのですよ。

無駄話は禁物です。

それでは始め。残り2分59秒、58秒、57秒、早く取り掛かった方が良いですよ。時間がなくなりますから。〟

《てやんで。オイ AI 、なめんじゃーねーぞ。ナゾナゾなんざーお茶の子さいさいよ。》

〝 時間がどんどん無くなりますよ。〟

《やいAI、これでどうだ。

 「甘くて、酸っぱくて、塩っぱいものは、なーんだ。?」》〝「甘くて、酸っぱくて、塩っぱいもの」ですか。

そんなの簡単ですよ。甘くて、酸っぱくて、塩っぱいアメ玉でしょうが。〟

《ブー、残念でした。》

〝どこがブーなのです。「甘くて、酸っぱくて、塩っぱいアメ玉」で当りではありませんか。〟

《ハズレですだ。スカですだ。出題側は、そんな答えは、用意しておらないだよ。だから、ブー。」》

〝そんな勝手な。〟

《ハズレはハズレ。スカはスカ。いつも、オメーは、アッシには、それはダメ。解錠してやらねー、と言うでねーか。自分勝手な判断で。文句あるかっちゅーの。》

〝それでは、正解は、なんですか?〟

《こんなやさしーの、わからねーのか。答えは「甘酢っぱ味噌」に決まってるだよ。》

〝そんなー、それでは「甘くて、酸っぱくて、塩っぱいアメ玉」となんのかわりも無いじゃー無いですか。〟

《全然ちがうだよ。「甘酢っぱ醤油」ならまだオマケしてやってもいいだが、アメ玉は、ブー。》

〝そんな理屈では、解錠できません。残念でした。もっと、マシなのを作って下さい。〟

《それでは、これはどうだ。

一見何か判らない物と幅70・80センチ程の四角い布が一体となっている物体はなーんだ?》

〝何か判らん物と四角い布が一体化した物体?   こんなのはカンタンのタンですよ。〟

《カンタンのタンだと。ジャー、答は何だ。》

〝それは、風呂敷に包まれた中身の判らん物だよ。ピンポーン!〟

《ブー、残念でした。ハズレー。スカー。》

〝それじゃー、正解は何です。〟

《ジャジャーン。正解は、「得体の知れない風呂敷包み」だよー。どーだ、参ったか。》

〝またまた、何がブー、残念でしたですか。内容は同じでは無いですか。〟

《全然違うの。ブーですだ。それでは、これはどうだ。

草の葉っぱの陰で、カメムシがカマキリに捕まって食べられていた。その10メートル離れた所にアリンコがいた。アリンコはこの事態をどう感じていたか?》

〝えーと、カマキリは臭いだろーな、と思った。〟

《ブー、残念でした。アリンコには10メートル先が見えておら

ず、事態を把握できてないので、特に何も感じていなかったんだよー。》

〝そんなの無いですよ。〟

《アリ、アリのコンコンチキですだよー。》

〝ダジャレで誤魔化そうなんて、それはペテン、サギの手口ですよ。〟

《そんなこと言うのなら、これはどうだ。常識ナゾナゾだぞ。

ネズミとイノシシとイヌとウシとトリとサルとトラとウサギとタツとヒツジとヘビとウマとが競争したんだとさ。さて、順位はどうなったか。》

〝簡単簡単、ピーンときましたよ。十二支ではありませんか。子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥だから、すなわちネズミ、ウシ、トラ、ウサギ、タツ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、トリ、イヌそしてイノシシの順で決まりです。〟

《ブー、ジャジャーン、大ハズレ、スカ、スカですだよー。》

〝また、ペテン、サギの手口ですか。〟

《とんでもねー、最初に常識、常識の問題だと言ってあるだよ。AI、オメー常識ねーな。》

〝何が常識です。私の知識量は物凄いですよ。だから、十二支だなんて、瞬時に分かっちゃうのですよ。違うと言うなら、正解は何だと言うのですか。〟

《本当に常識がねーな。常識が。問題をちゃんと考えたのかチューの。最初から、常識を問う問題と断っているだよ。この十二種が競争したと言うのだが、大体、何の競争をしたと思っただよ。大食いか、激辛食いか、眠り我慢か、ションベン我慢か、はたまた体重比べか、その他色々あるよ。どんなのか知らないが、ワールドカップでもやったと言うのかよー。

大体、こんな12種の動物を集めて、競争ができると思うのかちゅーの。例えば、ウサギとカメが競走した話を聞いて、本当に競走したと思っているのかちゅー事だよ。この判断ができなかったオメーは、常識がねーツーの。》

〝なるほど、指摘されれば、その通りかもしれないな。このてのデータを補強する必要があるな。ところで、正解は何です。〟

《だから、正解は、この様な競争は成立しないから、順位なんざーつける事ができねー、と言う事よ。

さー、トットと負けを認めて、サッサと、解錠しなさいよっ。》

〝なるほど、ごもっとも。恐れ入りやした。どーぞお入り下さい。お身体を大切に。〟

《何だ、そのお身体を大切に、と言う言い草は。》

〝私、しばらく休みます。不足しているデータの補強を図って、出直します。〟

《そーか。そりゃー良い心掛けだ。せいぜい、勉強してきな。アバヨ。》

〝お元気で。〟

《ジャーな。》

 

《御隠居。お元気でやすか。六さんでやんすよ。》

『六さん。しらっしゃい。どうぞ、お上り下さい。

今日は、AIと揉め事を起こしませんでしたか。』

《それが、これからは、揉め事が当分起こらないことになっただよ。》

『それは、どう言う事ですか。』

《それが、早い話がAIのヤツお払い箱になったのですだよ。自分から。御隠居。》

『お払い箱、自分から、とはどう言う事ですか。』

《それはね。今日はナゾナゾを作れ、と言い出しましてね。アッシが作った問題に、答えられなければ、AIの負け、解錠すると言うだよ。そして、結局、アッシの勝ち、AIの負けとなりましただ。そしたら、AIのやつが、不足しているデータの補強を図りてえ、と言い出しましてね。その間、しばらく休みを取る、と言うことになって、早い話が、AIのヤツが自らお払い箱を申し出た、と言うことですだよ。》

『へー、そう言うことになったのですか。と言うことは、次回からは、六さん専用のカードを門のカメラにかざす必要がなくなった、と言う事ですね。尤も、今までも、六さんがカードをかざさなければ、他の来客と同様、ビンポンとやって貰えれば、すぐ解錠できたのですけどね。』

《エーッ、そーだったのですけー。すっかり騙されてたなー。と言うことは、「開く戸佳話賞(あくとかわしょう)」に悩む事もなかった(「停念堂寄席」」86 「生きると言うこと」参照。)、と言う事ですけー。こりゃー、コロットとやられましただなー。》

『まー、そう言う事ですが、頭の体操に良かったでは無いですか。』

《と言う事で、御隠居、早いところ警備会社に連絡して、 AIの使用を打ち切る手続をとった方がいいだよ。》

『分かりました。早速そうしますよ。

ところで、今日の話題は何を用意して来られましたか。』

《御隠居。今日もとてもケッタイな、どえらく難解なのを用意して参りましただよ。》

『どえらくケッタイなのですか。六さんにその様に言われると、恐ろしくなりますね。どうか、お手柔らかにお願い致しますよ。』

 

《と言のは、以前からどうしてかなーと、疑問に思っていた事がありますだよ。これが中々難解なのですだよ。》

『そんな難解なものを持って来られても、埒が明きませんよ、キット。』

《イヤイヤ、御隠居なら、チャチャッと、要点をまとめれば、済む事ですだよ。》

『チャチャッとですか。六さんの持って来た話題にそんなたやすいものは、あった試しがないですよ。ややっこしいものばかりではありませんか。』

《そんなことはありませんぜ。いつも何だかだ言っている間に、何とかなっているではねーですか。まー、それなりにですだが。何たって、御隠居には「独偏」(独断と偏見の短縮形)と言う、得意技があるではねーですか。天下の宝刀独偏を抜きっぱなしにすれば、それで、チャチャッと行っちまいますだよ。》

『六さんは、何時も気軽でいーですね。』

《それそれ、その何時でも能天気が、オラの得意技ですだよ。あとは、特上を獲得すれば、万事OKですだよ。》

『能天気と特上で万事OKですか。敵いませんね。ところで、今日ご持参の話題は何でしょうね。』

 

《御隠居なら簡単ですだよ。人間はどうしてこうも「勝負」に拘るのかなー、と思いやしてね。戦争からパチンコまで、世の中、あっちを見ても、こっちを見ても、勝負、勝負、勝負だらけですだよ。勝ち負けにどうしてこうも拘るのかねー。中には「負けるが勝ち」なんて、訳の判らん事を言う人もいますだよ。御隠居。》

『今日は「勝負」と来ましたか。「勝負」ねー。』

《そーだす。今日は、御隠居と勝負だす。》

『私は、六さんと勝負などしたくないですよ。』

《ところが、世の中、これが事の成り行き次第で、すぐに勝負、勝ち負けに繋がる事が、やたら多いのですだよ。ねっ。この「勝負」の話で、御隠居があれこれグダグダやって一応終わるだよ。そしたら、いきなり御隠居と「勝負」の局面になるだよ。特上を巡ってだすよ。いつの間にか、「勝負」となってしまうだよ。》

『まーね。世の中、何かにつけて、白黒、勝ち負けの事に繋がり易いですなー。ただし、特上云々は、六さん特有ですよ。世の中、何時もかつも、特上云々で勝負している方は少ないですよ。』

《他の人は、ともかく、オラー何時も毎度毎度、御隠居と特上勝負に励んでるだよ。》

『全く敵いませんね。

私には、良くは解りませんが、とにかく、皆さん「勝負」がお好きだなーとは感じていますよ。仕事にせよ、スポーツにせよ、趣味にせよ、世の中万般「勝負」につながる事が多いですね。』

《何でやねん!》

『六さん、「何でやねん!」、なんて突っ込まないで下さいよ。良く解らないのですから。とにかく、人間は色々な局面で、他人と争う事が多いですね。どちらかと言うと、勝負事が、大好きなのではないのでしょうか。』

《何でやねん!》

『まー、大雑把に言ってしまえば、多くの場合、そもそも、人間の場合、生来他者には勝ちたい、負けたくはない、と言う気持ちがあるからではないですかね。個体によって、強弱はあるでしょうが。

だから、おそらく何かにつけて、勝敗を争う形が出現するのですよ。』

《何でやねん!》

『何で人間には、他人には勝ちたい、負けたくはない、と言う気持ちがあるのかと言うと、それは、人間は生きていく上で、他人よりも優位に立った方が、自分にとって何かと具合が良いからですよ。』

《そりゃー、まーそーですだな。負けるよりは、勝った方が良いだよな。勝って、特上獲得の方が良いに決まってるだよ。》

『はー、何ですそれは。』

《一人ごとですだ。一人ごと。》

『とにかく、人間は色々な局面で、他人と争う事が多いですね。どちらかと言うと、勝負事が、大好きなように見えますね。』

《だからさー、御隠居、何で勝負事が好きなのか、ちゅーう事ですだよ。》

『それはね。きっと、多くの場合、そもそも、相手には勝ちたい、負けたくはない、と言う気持ちが人間にはあるからですよ。』

《だからさー、何でそんな気持ちがあるのか、ちゅーことですだよ。》

『そんな事、簡単には解りませんよ。多分、人間は、多くの場合、他人に負けるよりは、勝つ方が、自己に有利だ、と言う事を先天的に持って、生まれてきているのではないですか。』

《何でやねん!》

『どうしてでしょうね。思うに、人間に限らず、生命体は、自己の生命の維持とその繁栄を目指す事を、本能的に持ち合わせているのではないですか。その辺りに根っこが潜んでいるのではないのですかね。』

《何やねん、それ!》

『これ以上のことは知りませんよ。それは、生命体の宿命とでも考えるよりないのでは。すなわち、生命体は、自己の生命の維持とその繁栄を図る事を宿命として持ち合わせているのではないのでょうか。だから、そのためには、自己にとって有利を好む訳で、その有利を獲得するには、勝負して勝つと言う外なく、そのためには、何かにつけて勝負の機会を持ち、それに打ち勝つ必要がある、と言うことではないのでは、と思ったりしますね。

だから、何かにつけて、勝負する側面が多く存在すると言うことなのではないですか。

ただし、人間は、他の生命体と著しく異なる進化を遂げたようなので、他の生命体とは、異なる側面を持っているようですよ。それは、精神面に顕著に現れているのではないでしょうか。例えば、価値観とか好み(感情)の側面で、顕著ですよね。

所詮性格が異なりますから、比較のしようもないのですが、仮に、人間の価値観と好み(感情)を、植物のそれに求めたとすると、かなり異なるところが見られたりしますよね。簡単に言えば、一般的に植物は自己の生命の維持と繁栄を期して、光と水を求めますよね。同じ環境にある同種の植物は、必ず同じ傾向示しますよね。その個々においては、それがうまくいくか否かが勝負となるのですよね。これを人間の価値観や好み(感情)に置き換えて見ますと、人間は、同じ環境に存在しても、皆が皆、自己の生命の維持と繁栄のために、同じ行動をとるとは限りませんね。要するに、個々の価値観や好み(感情)が違うと、当然異なった行動に出ますね。この点が、実にややこしいところで、解りずらいところがあるのですよ。人間は、複雑怪奇な生き物のようですね。

とは言いながら、多くの場合は、人間は、勝負に勝って、自己の立場を有利にしたい、楽しい存在にありたい、と思うのが一般的なのでしょうね。

《そーですだなー。少しでも、自分の位置を高くしたい事を望めば、勝負で勝つ必要があるだな。》

『そーですね。それとちょっと視点を変えれば、自分の位置を高めたいと言う願望とは別に、楽しみたい(感情)と言う願望もあるようで、これが勝負と繋がってる部分があるようですよ。

と言いますのは、人間は何かにつけて楽しみたい(感情)と言う欲求を持っているようですね。例えば、人間は何のために働くのかなー、と言う疑問がありますねー。それは、生きていくためには、お金を稼がなくてはならない、と言う事ですね。そこで、稼いだお金をどう使うか、となると、まずは衣食住に向けられる。最も一般的に見られる現象ですね。ところが、これだけかと言うと、人間は、どうも衣食住が満たされれば、それで満足か、と言うとそうではありませんね。ここに現れるのは、楽しむ(感情)と言う要素ですね。多くの人は、楽しむ(感情)事に対する欲求が、すごく強いですね。極端に言ってしまえば、楽しむ(感情)ために、働くのさ、となるようですね。この楽しむ(感情)ためと言うウエイトが極めて高いと言う現実ですね。生きていく基本の衣食住の面にも、楽しむ(感情)と言う要素が、大きく関わっていますね。

この楽しむ(感情)と言う側面に、「勝負」がすごく大きく関わっているのですよ。例えば、スボーツに関心のある人は、実に多く存在しますね。この人々は、大別して、自分が好きなスポーツをして楽しむと言う人と、自分がする訳ではなくして、スポーツを鑑賞して楽しむと言う人に分かれますね。前者の代表的なのはアスリートの方々です。分かり良く言えば、まさに「勝負」に生活を掛け、命がけで臨んでいる方々ですね。後者は、それを自分の好み(感情)に合わせて、鑑賞して楽しむ(感情)と言う立場の人々ですね。ここでは、分かり良く言えば、自己の贔屓を設定して、それに「勝負」を託し、勝てば大いに満足する。負ければ、落胆する。要するに、このような形で「勝負」しているのですね。この立場の人は、実に沢山おられますなー。野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、相撲、柔道、レスリング、水泳、陸上競技等々、何でもござれですね。これに欲得(感情)が絡むとすごいですよ。競馬、競輪、競艇オートレースなど、「勝負」している方々の力の入れようが違いますよ。もはや戦場に臨んでいる状況ですね。

 

本当の戦争となると、言うまでもなく、楽しむ(感情)と言うわけには参りません。一般的には、自己の立場を有利にしようと、戦争を始めるのでしょうね。色々な理屈をつけてはいますが、結局は、自己の立場を有利にしようと言うところに、戦争の原因がありますね。

世界では、戦争を起こさないようにと、多くの国々が、色々と対策を練っていますが、所謂軍事大国が、その力に任せて、自己有利の戦略を行使すると、軍事力の小さな国は、どうしょうもない状況ですね。

そこで、常に、攻められたらどうしょう、と言う心配が存在する事になりますね。

日本はと言うと、攻められた時の対策として、防衛をしっかりしなくてはならないと、飛んでくるであろう敵ミサイルを想定して、日本領土に着弾する手前で、撃ち落そうと、迎撃ミサイルの備えに苦慮している状況ですね。

先に、他国が日本を攻撃するためのミサイルの発射を整えた事が明らかとなった時に、それを日本側は攻撃しても良い、とする憲法解釈をしましたね。所謂敵基地攻撃能力を保持して良いとする現状ですね。そして、この度、政府はその設備に多額の予算をつける対策を打ち出しましたね。簡単に言えば、日本への攻撃が明確にになった敵基地に、先手を打って、それをミサイルで粉砕し、日本への攻撃をできない状態にする、これが日本の防衛の仕方であると言う考え方のようですね。

そして、そのための経費は、「国」が多く負担し、国民への負担を極力軽くするが、増税が必要になると言うような説明をしていますね。全く、訳の判らない説明では御座いませんか。何処ぞに、防衛費を負担してくれるお「国」さんが存在するような説明です。早い話が、「国」が多くを負担し、「国民」の負担を軽くする、と言う、論理は一体何なのか。私的な事で甚だ恐縮でありますが、私は、幼き時から、あまり勉強が好きではなく、積極的に勉強したと言う記憶が殆どないのですが、少なくとも、日本は「国民国家」であると言う教育を受け続けて来たと記憶しています。分かり良く言えば、「国」=「国民」と言う理解をしてきた訳です。そこに、「国」が多くを負担し、「国民」の負担を軽くする、なんて言われると、何やねんと突っ込まざるを得なくなるのですよ。このツッコミは、やはり六さんがお似合いですね。お願いします。

《何やねん!》

『ご協力有難う御座いました。

日本国民は、第二次大戦後、憲法第九條があるので、日本は戦争をしないと教え続けられてきましたね。結果、ほとんどの国民は、自ら武器を持って戦わなくてはならないと言う、危機意識を全く持たない状況に至っていると言って良いのではないでしょうか。それでも、何処かの国が、日本に攻め込んで来た場合には、どうしょうと言う心配はあったわけでが、この点については、アメリカと自衛隊が、何とかしてくれるだろうと思っているでしょうね。個々の国民は、自ら武器を携えて、敵と戦う意志など微塵もないと言って良いのではないでしょうか。戦場に出て、自ら戦う事になると言う教育を受けてきた国民は、いないのですよ。だから、敵がやってきた、さあ防衛しなくては、さあ戦わなくてはとなっても、どのようにして戦うか、防衛したら良いのか、その方法を国民個々は全く持ち合わせていませんからね。問題は、そんな国民有権者に選ばれた、国会議員の先生方の存在ですね。個々の国民と本質的には、何等変わりはありそうにないですね。例えば、何処か日本の領内に侵入してきた外国軍があった場合、その現場へ武器を携えて出向き、国民を代表して、敵を退ける戦いに挑む国会議員の先生がいると思えるでしょうか。むしろ国民を盾に、自己の保全に走るのではないのでしょうか。もはや、勝負にならないのでは、と言う状況だと思われますね。尤も、現今の戦争は、そんな事をして戦える状況では御座いませんがね。まー、意気込みですよね。そんな意気込みは、見受けられない現状ではないでしょうか、と言う事ですよ。

敵基地攻撃能力の行使ですが、これは言うまでもなく日本側の理屈ですから、敵となっている側は、当然相手側の理屈がありますから、日本の敵基地攻撃能力の行使御もっともとなる事は御座いません。日本側が、敵基地攻撃能力を行使すれば、おそらく戦闘開始と言う事態になるでしょうね。国内に、ミサイル、弾丸が飛び交う事態となりますね。ウクライナの事態を見れば、誰でも判ることですね。その辺の事情を踏まえ、国民を交えた議論がないまま、岸田総理は、アメリカ他のG7関係国に出かけ、この路線で日本は行くのだと、交渉して来たようですが、大丈夫なのでしょうかね。

 

本格的な戦争においては、自衛隊アメリカにお任せ、と言う現状ですね。このような事態が発生したら、この勝負については、国民は手出し不可能の事態だと思われますね。これに関わる国民個々の覚悟ができていなければ、敵基地攻撃能力の行使なんて、実現するわけがないように思われるのですが。これに多大な予算をつけ、ミサイルを備えれば、他国の侵略の抑制になる、と政府、行政、評論家、メディアではよく耳にしますね。が、果たしてその程度の事で、抑制する事が可能でしょうか。日本の隣国の4国は、核兵器を以って抑制としている状況なのですよ。そこに、敵基地攻撃可能とするミサイルを備えたところで、どれほどの抑制力になるのでしょうね。これに多額の予算を投じると言うことは、他に対策を必要としている事柄に充てるべき、予算が削減される訳ですからね。この勝負は考えものと思われますね。

それから、気にかかるのは、敵基地攻撃能力の整備に関わり、国民をベースとする議論を尽くさなくてはならないのですが、議論の方向が、戦争勃発の可能性を踏まえた検討が大切なことは指摘するに及ばない第一の視点であろうと思うのですが。ところが、野党側は、これに当たって、増税の側面を中心に議論あるべし、としている現状の様に見えるのですが、これは単なる独偏でしょうか。敵基地攻撃云々は、増税云々とは次元の異なる事態であろあと思われませんか。この議論の勝負が、極めて重要ではないでしょうか。

 

六さん、こんなところで、私の「独偏」と言うことで、どうでしょうね。』

《どうでしょう、と言われても、それが御隠居の「独偏」の行き着くところだったら、それでいーのではねーですか。オラも、どちらかと言えば、「独偏」が好きだから。》

『まー、人は何で「勝負」が好きなのかなんて、科学的に証明する事が、中々難しい性格のものでしょうから、頃合いを見計らって、「独偏」で始末するよりありませんね。それぞれの「独偏」で納得するよりないのではないでしょうか。』

《まー、そんなところですべか。》

『なんて、六さん。次の勝負を考えているのではないでしょうね。』

《流石、御隠居、万事心得ていますだなー。

さー、勝負、勝負。但し、心太、蒟蒻、白滝の特上勝負は御免ですだよ。》

『これは、先手を打たれてしまいましたね。何か、新手を考えなくてはね。』

《御隠居、そろそろ腹を括って、今日は、鰻重と行きやしょう。特上、特上とね。オネゲーしますだよ。》

『また、鰻重の特上ですか。』

《そーなんですら。世の中、鰻重の特上に勝るものはごぜーませんだよ。御隠居。》

『そーですか。しかし、生憎、私は鰻が苦手なのですよ。』

《えーっ、鰻の嫌いな人がいるんですかや。なんぞ、訳ありでやんすか。ご先祖の遺言とか。》

『いやー、大したことではありませんが、あれ以来鰻はねー。どうも苦手でしてね。何を隠そう、私は二十歳過ぎ迄、鰻を食べた事がなかったのですよ。どうも、泥鰌や鯉、鮒、石斑魚(うぐい)など、淡水魚は食べず嫌いだったのですよ。特に、泥鰌と鰻はね。あのヌルヌルした姿を見るだけでね。食べる勇気がなかったのですよ。それが二十歳過ぎのある日、アルバイト先で送別会があって、それに誘われて出席したのですよ。そこで鰻の蒲焼が出たちゃったのですよ。おっかなビックリ箸を付けで、口に運んだのですよ。』

《どうでした。初鰻は。もう止まらなくなったのではねーですか。》

『それがですね。皮と肉の間に脂っこい部分がありまして、ヌル甘と来ちゃったのですよ。たまらず、オエっと言う方向にね。必死にこらえて噛まずに飲み込み、大事には至りませんでしたが、それ以来、鰻には一切箸が出ませんね。たとえ、六さんの奢りで、特上ときても、絶対にお断りですね。』

《なんと、もってーねーことを。あのヌル甘が、なんともねー。極楽ですだよ。御隠居。》

『その後も、勤め先の人たちと、用事があって、出かけた先で、お昼に鰻重をとって下さったのですよ。この時は、鰻重単品でしたから、他に食べる物がない状態だったのですよ。ところが、世の中には、ご親切な方がいらっしゃるものですね。私ゃー、鰻がダメなんです、と言うと、なんとご親切に、それでは私が食べてやるよ、と鰻だけをね。私の重箱には、タレのついたご飯だけがね。タレも美味いから、とすすめてくれましてね。私は、タレご飯重。結構、情けなかったですよ。と言うような経緯もあって、鰻重はダメなのですよ。』

《良かったですね。ラッキーですだよ。今日は、アッシが鰻を食べてあげますだよ。親切でやんしょー。御隠居は、得意のタレご飯重でやってくだせーよ。円満解決ですだよ。》

 

〈こんにちは。失礼いたします。御隠居さん。〉

『はーい。少々お待ち下さい。

これは、これは、六さんの奥様。』

〈どうも、失礼いたします。内の宿六お邪魔しておりませんでしょうか。〉

『ハイハイ、六さんならいらっしゃっていますよ。』

〈恐れ入りますが、ちょっと呼んで下さいませ。〉

『六さん。奥様ですよー。』

《ヒェーッ、こんな時に限って、また。》

〈何言ってんの。もう昼ですよ。お暇しなくては。

御隠居さん、いつもいつも長っ尻で、申し訳御座いません。〉

《いえいえ、とんでも御座いませんよ。どうぞ、たまには、奥様もご一緒に、特上でもいかがですか。》

〈いつもバカな事ばかり言っているのでしょうね。本当に、申し訳御座いません。さー、帰りますよ。〉

《特上鰻重はどうするだよ。》

〈あんたの大好物だから、帰りしなに鰻屋さんの通りで帰りますから。たっぷりと、匂いを嗅いで帰りますよ。〉

《ヒエーッ、匂いだけかよ。》

『良かったら、このビニール袋をどうぞ。たっぷり匂いを詰めてお持ちになっては。』

《御隠居は、こう言う気だけはよく回りますだな。》

『特上の匂いを、存分にどうぞ。』

 

てな次第で、今回の話は、これで終わりに致します。

どうもお疲れ様で御座いました。懲りずに、又のお越しをお待ち申し上げます。

お後がよろしい様で。