《停念堂閑記》154

《停念堂閑記》154

 

「停念堂寄席」」91

  

 

いつも、危機意識を!」

 

 

ようこそ、「停念堂閑記」へ。よくお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

早速、恐縮で御座いますが、ここでの話は、相も変わらぬ、毎度毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、底、奥行きの浅い、要するにマヌケな話で御座います。

しかし、取り柄もございますよ。決して深刻にならないところです。夜、眠れなくなったりしませんからね。

すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。この目的さえ、しっかりと認識しておけば、万事OKで御座いますよ。

あるお方が申しておられましたよ。

ヒマ潰しにやることは、須(すべか)らくアホくさいものだと。

毎度毎度の《停念堂閑記》がそれを証明しておりますからね。 

さて、定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。これがリタイア後の最大の課題ですからね。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒! ヒマーッ!

A A O!  エイエイ オー!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声でんなー。

情けねー! トホホ。

   

《こちら六さんです。さて、今日も今日とて、あいも変わらず、御隠居の処で、ヒマ潰しといくか。

オーイ、カカー。ちょっくら御隠居の処へ行って来るぜー。》

<アイヨー。ゆっくりしといで。帰って来なくてもいーから。>

《いちいち憎ったらしい事を言いやがるね。帰って来なくてもいー、だってよ。そのくせ直ぐに迎えに来るくせに。》

 

 

《おっ、着いたね。御隠居いるかな。今日も退屈してるかね。

御隠居。お元気でやすか。退屈しのぎの六さんでやんすよ。》

『六さん。しらっしゃい。お待ちしておりましたよ。どうぞ、お上り下さい。』

《へいへい、それでは、ちょっくらお邪魔しますだよ。》

『今日は、良いお天気ですね。』

《へい、見ての通り、雲一つない、晴天でやすよ。それが何か?》

『おっ、そう来ましたか。』

《そう、来ましたかって、御隠居。何で、人と出会ったら、天気の事を言いだすのですかや。》

『どうしてでしょうかね。』

《どうしてでしょうかねって、それでは会話が途切れてしまいますだよ。御隠居。》

『そうですね、きっと、会話を途切れさせないためではないでしょうか。』

《と言う事は、天気の事を話題にすると、会話が途切れないのですかえ。》

『多分ね。まず、人と出会って、何の話をしようかな。と言う時には、天気の事でも話題にすれば、間をつなぐのに良いのではないでしょうか。』

《天気の話をすれば、話が進むのですけ。》

『その相手、状況にもよるでしょうが、大抵の場合は、天気については、お互いに多少の関心があるでしょうし、ちょっとした知識も持ち合わせていると思われますので、共通の話題としてふさわしいのではないでしょうか。』

《なるほどね。しかし、何時迄も天気の話をしていてもしようが御座いませんよ。天気の次はどうします。御隠居。》

『お決まりから言えば、天気の次は健康の話ですよ。人に出会うと、必ずと言って良いほど、お元気ですか、と切り出す方が多いですよね。誰でも、健康には関心があるのですよ。』

《なるほど、健康ね。オラだって、特上の次は、健康に関心があるだよ。そー言われてみれば、みんな健康を気にしているだよな。オラの知り合いの連中も、顔を合わせると体のここが、かしこが、痛いだの痺れるなどと、すぐ自分の方が重症だと、自慢話をするだよ。》

『自慢話ですか。』

《そーですだよ。以前温泉で同窓会をやった時にも、みんなデカ腹を並べやがって、熊の野郎が、どうだ俺の手術の傷跡が一番でかい、と自慢したら、虎の野郎が、いや俺は三ヶ所やったと威張り、そしたら丑の野郎が、俺は、内視鏡の手術だったので、傷跡は小せえが、癌の末期だったので、5時間もかかったと自慢しやがって、すごく盛り上がっただよ。》

『そーですか。そーですか。それにしても、六さんのお知り合いは、熊さん、寅さん、丑さんなど、なんか動物系統のお方が多い様ですね。』

《そーだな、女性を含めると十二支が出来上がるだよ。》

『動物園を開業出来そうですね。』

《囲いに放した熊だの虎だのを見に行くだか。まーおもしれーと言えば、面白いかもしれねーな。あいつらの行動は、予想がつかねーからな。》

『えーッ、熊さんや寅さんを使って、一儲けしようと言うのではないでしょうね。』

《冗談、冗談ですだよ。御隠居。》

『分かってますよ。

ところで、今日の話題は何を用意して来られましたか。』

《御隠居。今日はとても深刻なのを用意して参りましただよ。》

『えーっ、深刻なのですか。お手柔らかにお願い致しますよ。』

《と言うのは、以前から、常々疑問に思っていた事がありますだよ。これが中々深刻なやつでしてね。夜もおちおち眠れなくなるのですだよ。》

『六さんが眠れなくなるような、そんな深刻なものを持って来られても、埒が明きませんよ、キット。』

《イヤイヤ、御隠居なら、チャチャッと、要点をまとめれば、済む事ですだよ。》

『チャチャッとですか。六さんの持って来た話題にそんな簡単なものは、あった試しがないですよ。ややっこしいものばかりではありませんか。』

《そんなことはありませんぜ。いつも何だかだ言っている間に、何とかなっているではねーですか。まー、それなりにですだが。何たって、御隠居には「独偏」(独断と偏見の短縮形)と言う、得意技があるではねーですか。天下の宝刀独偏を抜きっぱなしにすれば、それで、チャチャッと行っちまいますだよ。》

『六さんは、何時も気軽でいーですね。』

《それそれ、この何時でもの能天気が、オラの得意技ですだよ。あとは、特上を獲得すれば、万事OKですだよ。》

『能天気と特上で万事OKですか。敵いませんね。

ところで、今日ご持参のその深刻な話題とは何でしょうね。』

《それが、なんと危機意識と言うやつですだよ。いつも周辺を見れば、危ない事だらけですだよ。もー、夜もおちおち寝てらんねーだよ。と言いながら、眠気に勝てず、ストーンと眠りに落っこちてしまうだよ。この危険を前にして、ストーンと眠りに落っこちてしまうことが、そもそも危険なのですだよ。いけねー、寝てしまった。とハッとして、目を覚ますだよ。ところがそれは一瞬のことで、間をおかず、またまたストーンと眠りに陥ってしまうだよ。どうしたもんだべ、御隠居。》

『六さん、それは本人が思っているより、危険に対する意識が、相当薄いのではないですか。』

《それがね、この間、夜中に飛び起きて「地震だー!」と、叫んじまっただよ。そしたら、カカーに「なに寝ぼけてんのよ」としこたま怒られちまっただよ。地震の夢を見ただよな。ところが翌日夜中に、カカーに「地震だよ」と叩き起こされただよ。オラは、「それは夢だ」てんで、ストーンと眠りに落ちちまっただよ。そしたら、なに寝ぼけてるの、まだ揺れているでしょ、とまた、カカーにしこたま怒られちまっただよ。地震より、カカーの方が、よっぽどおっかねーだよ。》

『六さんの場合は、カカー、地震、雷、火事と言う順ですなー。

確かにね。地震、雷、火事などは毎日発生するわけではないけれど、カカー様は、常時毎日顔を付き合わせる存在ですから、気を抜けませんね。危険度満載、危機意識を怠ると痛い目に合う事必定ですねー。』

《御隠居の場合もそーでやんすか。オラの所は、もー、一瞬たりとも、油断をしようものなら、途端に大爆発でやんすよ。ぜってー、スマホを手放す事はできねーだよ。すぐに110番か119番に通報しなくてはならねーだから。》

『本当ですか? 六さん。』

《御隠居、こんな話に、いちいち本当ですかは、ねーでしょ。本当かは。》

『これはどうも失礼致しました。うっかり無粋な発言を致しました。それにしても常に警戒に怠りなく、気をつけて下さいよ。』

《御隠居、そこまで念をおさなくとも。》

『これは、重ね重ね失言でした。どうかご勘弁を。

ところで、危機意識を、常に持たなくてはならない昨今ですねー。身近な所で何が起こるか、全く予想がつかない状況ですね。』

《そーですだよ。先日も、Jアラートと言うやつですけ。テレビやらスマホから一斉に警報が鳴り響いて、ビックリさせられただよ。北朝鮮がミサイルを飛ばしてよこしたとかで。安全な所へ非難しろだって。》

『そうですね。嘗ての安倍政権の時に、北朝鮮がミサイルを飛ばした。さあ、安全な所へ非難せよ、と言うJアラートが全国向けに発せられましたね。あの時も、そんな事言われても国民は、何処へ逃げれば良いのだと、大いに戸惑いましたね。』

《そうですだよ。大変だ。さあ逃げろと言われたって、何処に、どんなものが、何時飛んで来るのだか、さっぱり分からず、何処へ逃げれば良いのかが全然分からず、参っただよ。》

『これで、政府の危機意識の低さが、はっきりと暴露されましたね。時の総理大臣が、お題目的に “国民の生命と財産は、絶対に守る” と事あるごとに強調していた、その具体策が、これでしたからね。Jアラートを発しされても、その対処の仕方が全く用意されていませんでしたからね。国民はどうすれば良いんだ状況で、困惑するばかりでしたからね。』

《それで、こんな対処不能のJアラートを発っして、何の意味があるのか、と言う批判が続出して、結局、北朝鮮のミサイル発射に関する、Jアラートは、あまり出なくなっただよな。》

『つまる所、国民は警報を出されても、その対処の仕方を知らされていませんので、どうしょうもできないわけで、戸惑うばかりですからね。どの様なモノが、何時、何処に落ちてくるのか分からないのですから、気をつけろと言われても、どうしょうもない事態ですよね。』

《大体どの様なモノなんですだべ。発射時の模様がテレビでよく放映されたりしているだが、あの発射された物体が、ドスーンと落っこちて来るのですかや。それとも、どこかの時点で破壊された状態のモノが落っこちて来るのですかや。》

『どんなものを想定しているのでしょうね。時に、自爆装置が付けられていて、事情によって自爆することが、度々報じられたりしてますね。はたまた落っこちた時点で爆発する可能性があるのでしょうかね。』

《気をつけろ、と言われても、何が落っこちて来るのかわからないからね。何時、何処に、と言う点についても、全然不明の状態ですだよ。》

『そーなんですよ。発射後、日本列島を飛び越えたらしい、と報じられたかと思いきや、いや、突然レーダから消えちゃって、行方不明と報じられたり、何がどうなっているのか、ただただJアラートを発して、気をつけろと言われてもね。対処のしようが御座いませんよ。』

《テレビでは、逃げ場所としては、地下室へ、と言う様なことがよく言われているだが、そうそう都合がよく逃げ込める地下室がありますかチューの。》

『それですよ。大きな都市では、地下室を持つビルがあちこちにありますが、警報が出た時に、大勢の人が押し掛けた場合、受け入れてくれるのですかね。高層ビルの場合、ビルにいる人は、一斉に地下室に逃げ込むのですかね。よほどどでかい地下室でないと、収容不可能ですよ。』

《地下鉄に逃げれば、と言う事もよく耳にするだが、警報が出た場合、地下鉄は受けてれてくれるのかね。入場券買わなくてはならねーのかね。だいたい、逃げ込める地下鉄や地下室など、全国的に見れば、完備されていますかチューの。』

『警報発令によって、皆が地下鉄に逃げ込んで、大混乱になったと言うニュースにお目にかかったことがございますか。国民は、警報が出されても、誰も逃げ回らないのですよ。』

《そーですだ。結局は、“あー又かい” の “オオカミ総理” 状態 に陥ってしまうのがオチですだよ。警報の効果になど、何ら期待できない状態ですだよ。この様な事態に、発信責任者の総理は、どう思っているのですかや。警報は発したのだ。総理、政府としては、するべきことはした。あとは国民個々が対処すべき、とでも思っているのですかや。困っちまった状況ですだな。まったく。》

ところで、六さんはどの様に対処したのですか。』

《どの様にったって、とりあえず、近くにあった毛布をひっかぶっただよ。》

『毛布1枚で、ミサイルを防ごうとしたのですか。』

《流石に、毛布1枚ではと気づき、せめて布団をと思ったのやんすが、何とカカーもそー思った様で、布団の奪い合いになっちまっただよ。》

『それで、どーなりました?』

《いきなり、カカーのパンチがね。オラー、ノックアウトされちまって、気絶しちまっただよ。気がついたら、毛布も剥ぎ取られていただよ。Jアラートッアー、カカーの直撃警報と言うわけだか。御隠居。》

『それはそれは、災難でしたねー。ミサイルが落下して来る以前に、奥様のパンチをくらっちゃったー、と言うわけですか。それは、ひとたまりもありませんなー。不用意なJアラートの実害は、この様に現れるのですねー。総理の責任は、計り知れませんなー。』

《そーですだよ。御隠居。これで “国民の生命は絶対に守る” と事ある毎に言っている総理は、どう責任をとってくれるだよ。Jアラートのせいで、オラの生命は、危険にさらされちまっただよ。御隠居。》

『六さんの奥さんのパンチをまともに喰らおうものなら、そりゃープロボクサーだって、一発で落命し兼ねませんでしょうからね。よくぞご無事で何よりでした。』

《御隠居、オラーそこまでは言ってねーだよ。》

『これはこれは、大変失礼をば致しました。言い過ぎでした。前言を撤回しますので、どうぞ、ご勘弁のほどを。』

《そんじゃー、特別にカカーには内緒にしますだよ。その代りと言っちゃー何でやんすが、そのー、何でやんすなー。そのー早い話が、特上の方をよろしくお願いしますだよ。》

『おっとそー来ましたか。危険はどこに潜んでいるか分かりませんねー。しかし、今度ばかりは致し方御座いません。いーでしょう。今日は特上寿司と参りましょうか。

総理、この様な事態に進展するのですよ。責任をとってもらわなくては。ホント。』

《御隠居は、流石に物分りが良くて、いーですだよ。いっそのこと、総理になっては、どうーですだべ。》

《六さん、そんなおべっか言って、毎日、特上にありつこーなんて、そーは問屋が卸しませんよ。》

《おんや、御隠居。問屋と来ただか。ついに流通業にも、手を広げたのでやんすか。》

『まったく、とぼけちゃって。参りましたね。

そもそもの危機意識から、かなり離れた話になってしまいましたよ。』

《そーですだよ。危機意識問題が、特上問題に次ぐ重要問題ですだが、特上問題が円満解決したので、危機意識問題に話を戻したら、いかがなものでやんすか。》

『まったく調子の良いことを。

危機意識に関わる近時の出来事と言えば、安倍元総理の狙撃事件がこざいましたな。驚きましたね。警察もそれなりの警備・警護態勢を敷いていたと思われますが、ぽっかりと抜け穴があったのですね。それが元総理の正に命取りとなってしまったのですね。これも元はと言えば、危機意識の希薄がもたらせた結果と言えるでしょうね。結果論かもしれませんが、安倍元総理も、あの様な場所での演説について、もっと配慮する必要があったでしょうし、警護に当たる奈良県警の方も、万全とは言えなかった、と言うことでしょうね。』

《そうですだよなー。びっくりしただよ。不特定多数の人が集まる場合の警備は、何が起こるが分からないと言う事を前提に、出来得る限り幾通りものパータンを想定して、準備を怠りなく、臨まなくてはならないだよな。》

『そのとーりですね。それが何事も無い事態が続くと、どうしても緊張感が薄れ、そのために基本をウッカリ疎かにしてしまう事になりがちですからね。』

《その後の岸田現総理の事件が、たいして間をおかずに発生してしまっただよ。この事件でも、警備態勢の御粗末と言う他ない側面があっただよな。》

『そーなんですよ。もっと緊張感のある警備ができなかったのかねー、と思いますね。安倍元総理の事件があって間も無い時だから、普通はもっと、緊張感があって良かったのではないのでしょうかねー。》

《にも関わらず、事件が起きてしまったたよな。》

『まー、判断の難しいところがありますが、日本の警察の特質と見られなくもない側面がありそーですねー。よく言われていますが、日本の警察は、発生してしまった事件の犯人の捜査・確保に専念する傾向が強く、事件を未然に防ぐための対策に弱い側面があるのではないか、と言う指摘がありますね。』

《そーですだよ。安倍元総理の時も、その後の岸田現総理の時も、事が起こる以前の警備がもっと徹底していたならば、あるいはあの様な事態が起こらなかったかも知れねーだよな。》

『そーなのですよ。事件が起きてからでは、もー手遅れですからね。岸田現総理の事件後に、担当県警の責任者が会見で、その時、幾つかの反省点を申しておりましたが、その中に、総理の演説を聞こうと集まった民衆を、突然の予期せぬ危険な事態勃発に際して、退避させるための対策に、警察の警備上十分な対策が講じられていなかった、と言う様なことを述べておりましたが、問題の一つは、正にその点にもあるのでしょうね。要するに、総理の警護を専らするために、SPがつけられていた。しかし、集まった民衆の退避誘導など、すなわち民衆の警護の方は、正に脆弱であったと言うことですよ。』

《そーなんですだよ。総理の警護には、専属のSPが付けられているだよな。その他に、警察も総理の警護に当たっていただよ。ところが、集まった民衆は、警察の警備(不審者の摘発)の対象にはなっているが、警護の対象とされているのかと言うと、この辺がどうも怪しい、非弱だったのでは、と言う事すだよ。》

『正に、そーですね。SPは当然のことながら、警察も専ら総理の警護第一で、民衆の警護は、最初から手薄になっていた。初めから、あまり準備されていなかったと言う事ですね。』

《岸田総理の時は、SPが大活躍だったな。何かが民衆の中から、岸田総理に向けて投げつけられたけんど、それにいち早く対応したのが、一人のSPでやしたなー。》

『そーでしたね。あの時の映像は、誰が撮ったのですかね。何度も何度も、テレビで繰り返し繰り返し放映されましたね。一人のSPの足元に発煙して火花が散っている金属製と見られる短いパイプ状のものが落ちてきたのを、素早く防護用のカバンで跳ね返し、さらに片足で蹴って、遠ざけましたね。そして、直ちに総理を現場から、避難させたのでしょうね。避難の模様は、映像ではあまりよく分かりませんでしたが。』

《発煙して火花が散っている金属製と見られる短いパイプ状の物体に気付いた、近辺に居た女性が、悲鳴をあげて、駆けて逃げ出したのが映って居ただよ。》

『そーでしたね。女性は、この様な事態の時に、甲高い悲鳴を上げるのに長けてますね。女性の方が、危機意識が旺盛なのでしょうかね。男性の方は、甲高い悲鳴を上げる人は、あまり見かけませんよ。何だ何だとウロウロする方に長けている様ですが。この点については、時を改めて検討する必要がありそうですね。』

《その点については、オラがその内に、問題提起するだから、今は、危険物が総理目がけて投げつけられた事件に、集中して下せーよ。》

『ハイハイ、失礼いたしました。以前からちょっと気になっていたものですから。

SPによって蹴られた後の危険物については、映像では見られませんでしたね。集まっていた民衆が、異変に気付き、騒ぎ始めて間をおかず、破裂音が聞こえましたね。後の検証の結果、投げ込まれた金属製のパイプ状の物が、破裂したことがわかりましたが、その一部がかなり離れた建物の壁に突き刺さっているのが、確認されましたから、それ相当に危険な物であったのですね。大怪我を負った人が居なかったのが、偶然でしょうが幸いでしたね。』

《そこなんですだよ。そこ。SPが総理を、素早く危険から、避難させたので、総理に危険が及ばなかったは、本当に良かった、と言うことですだよ。》

『そーでしたね。総理に何かあった場合は、それこそ一大事でしたからね。』

《そーですだよ。総理の警護については、SPも警察も、何とか危機を免れた、と言うことですだよ。ところが、集まった民衆を危険から避難させる、と言う点については、どうだったのか、と言うことですだよ。》

『そこなんですよね。この点については、警察も大いに反省していた様ですよ。警察は、総理の警護に懸命だった、と言うことで、民衆の警護は、分かりよく言ってしまえば、結果的には、手薄になっていたと言う事なのでしょうね。』

《まー、全容が分からない混乱中の事ですだから、とっさに、最適な方法を行使出来なかったのも無理はなかったかもしれねーだが、しかし、その様な事態を想定した対策も用意すべきだと思われるだよな。》

『そーなのですよね。色々な事態の発生を予想した対策が、あらかじめ必要なのですよね。』

《それにしても、しかし、岸田総理は、絶好のチャンスを逃したと思わねーですかや。御隠居。》

『えーっ、それはどう言う事ですか。六さん。』

《えーっ、御隠居が気がつかねーとは、どう言う事だべ。すげー、簡単な事ですだよ。》

『何ですか。一体、それは。』

《それでは、明日の特上の予約をおねげーするとすベーかな。》

『ここで、また特上ですか。勘弁して下さいよ。頼みますよ。』

《あまり欲をかいては、後々の事もあるだから、この際、並で良しとしますだよ。並で。》

『並だって、得をするのは、結局は、六さんではないですか。まったく頼みますよ。』

《御隠居、危機意識発揮して来ただな。それでは、今日は特別ですだよ。

と言うのは、岸田総理は、途轍もない大物を取り逃してしまっただよ。まー、結果論ではあるけんど。惜しい事をしただなー。》

『もったいつけずに、サッサと教えて下さいよ。』

《それはだねー、これは、あくまでも結果論ですだが、岸田総理に大チャンスがあったのですだよ。

と言うのは、総理はSPに警護されて、危険な場所から、いち早く避難できたわけで、これはこれで大事に至らず幸いだったと言うことでんな。ところがですだよ。あの時に、あの場所に用意されていたと思われる演台が、確か、危険物が投げ込まれた映像に映っていただよな。》

『映ってましたね。演台と思しき台が。それがどうかしましたか。』

《危険物が投げつけられた時、すかさずSPが対応したのを岸田総理は、間近にいましたから、どの様な事態が発生したかは、直ぐに認識できていたと思われますだよ。それで、直ぐに退避して、大事に至らずに済んだわけですだが、これはあくまでも結果論、投げつけられた危険物による大きな被害が出なかったと言う結果論ですだが、あの時に、すかさず、総理が演台に駆け上がって、集まった民衆に向かって、 “ 危険だ! 直ちに、退避せよ!” と大声で指示した、としたら事態はどうなったか、と言う事ですだよ。》

『えーっ、そーきましたか。そーだったとしたら、これはえらい事になったかも知れませんね。六さん。』

《そーなんですだよ。もしもこーだったら、岸田総理は、我が身の危険を顧みず、集まった民衆の生命の安全を第一とする行動に出たと、もー日本中は大騒ぎになったと思われるだよ。

もー、テレビニュース、ワイドショーは、これ一色で持ちっきり、大変な盛り上がりを見せる事になった、と思われるだよ。》

『きっと、その様な事になったでしょうね。常日頃 “ 国民の生命と財産は絶対に守る ” と言っていたのは、単なる御題目ではなかったのだ、と言う証明になった事でしょうね。』

《きっと、“ 自分の身の危険を顧みず、民衆を救おうとした総理大臣 ” と後々、語り継がれ、ひよっとして教科書に掲載される事になったかも知れねーですだよ。》

『そうですね。結果論ではありますが、大きなチャンスだったのかも知れませんね。もー、総理の支持率は、90パーセントを超えたかも知れませんよ。今頃になって、国会の解散の頃合いを心配する苦労はなかったでしょうね。惜しい事をしましたね。』

《そーですだよ。結局、常日頃 “ 国民の生命と財産は絶対に守る ” というのは、以前と変わらない、所詮、単なる御題目と言う現状が続く事になっただからな。》

『実に、惜しいチャンスでしたね。結果論ですが。

総理に、この様な危険な事態が発生した時には、まずは、国民の生命を救わなければ、と言う強固な意識が徹底していたならば、と言う事ですかねー。』

《そうですだよ。常に危険とチャンスは、実に紙一重と言う事ですだよ。》

『とすると、この事件をチャンスとして、得をしたのは、特上寿司ゲットの六さんと言う事になりますね。ちょっと、方向が違いますが、六さんの危機意識は、常に機能していた、と言う事ですな。』

《そうですだよ。オラの危機意識は、特上と表裏一体となっているだよ。》

『まったく参りましたね。

それでは、六さん、危機意識についての今回の結論を、どうぞ。』

《オラが結論をですかえ。

それでは、甚だ僭越でごぜーますだが、皆さん、寝ても覚めても危機意識を疎かにしては、なんねーですだよ。大危機が大チャンスとなるかも知れねーだから。危機意識を常に持ち続け、並を特上にする様、心がけましょーうぜ。》

 

『どうもご苦労様で御座いました。

今日はこの辺で。

またのお越しを、と言う事に致しましょう。

お疲れ様で、御座いました。』

《停念堂閑記》153

《停念堂閑記》153

 

「停念堂寄席」」90

  

 

神様」

 

 

ようこそ、「停念堂閑記」へ。よくお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

早速、恐縮で御座いますが、ここでの話は、相も変わらぬ、毎度、毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、底、奥行きの浅い、要するにマヌケな話で御座います。

しかし、取り柄もございますよ。決して深刻にならないところです。夜、眠れなくなったりしませんからね。

すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。この目的さえ、しっかりと認識しておけば、万事OKで御座いますよ。

あるお方が申しておられましたよ。

ヒマ潰しにやることは、須(すべか)らくアホくさいものだと。

毎度毎度の《停念堂閑記》がそれを証明しておりますからね。 

さて、定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。これがリタイア後の最大の課題ですからね。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒! ヒマーッ!

A A O!  エイエイ、オー!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声でんなー。

情けねー! トホホ。

   

《こちら六さんです。さて、今日も今日とて、あいも変わらず、御隠居の処で、ヒマ潰しといくか。

オーイ、カカー。ちょっくら御隠居の処へ行って来るぜー。》

<アイヨー。ゆっくりしといで。帰って来なくてもいーから。>

《いちいち憎ったらしい事を言いやがるね。帰って来なくてもいー、だってよ。そのくせ直ぐに迎えに来るくせに。》

 

《おっ、着いたね。御隠居。お元気でやすか。六さんでやんすよ。》

『六さん。しらっしゃい。どうぞ、お上り下さい。

おばーさん、六さんですよ。お茶をお願いします。

おばーさん、この頃、いろいろなお茶にはまってましてね。今日は、どんなのが来ますかねー。』

《と言いやすと、どんなんがありやしたか。》

『昨日は、ドクダミ茶でしたね。』

《御隠居、いきなりドクダミでやんすか。ドクダミはいけませんよ。ドクダミだけは。》

『おや、六さん、既にドクダミ茶を嗜んだ事があるのですか。』

《いや、ドクダミ茶はまだ試した事はねーですが、カラオケの方で、ちょっとね。》

『カラオケですか。どこぞのカラオケ店で、ドクダミ茶を出すのですか。』

《いやいや、そーではなくてでんな。以前、カカーとカラオケをやりに出掛けたことがあるだよ。そこで、オラは、渡哲也のヒット曲「くちなしの花」を選曲しただよ。「~くちなしの白い花 お前のよーな花だった」と言うくだりがあるだが、その時、どうしたことか、フイーッと、一瞬ドクダミの花がオラの脳みそをかすめちまっただよ。そんで以って、図らずしも「~ドクダミの白い花 お前のよーな花だった」とやっちまっただよ。そしたら、カカーに、いきなりマイクを取り上げられ、襟首を押さえ込まれて、「なんやそれー」と、お尻ペンペンですわ。真っ赤に腫れ上がっちまったのですだよ。とまー、えらくとっちめられる羽目になりやして、それ以来、ドクダミはご法度、と言う次第でして、へい。》

『まー、その様なことがねー。お尻ペンペンですか。えらい災難でしたね。』

《御隠居は当然知っているでしょー。ドクダミの花。名前に似合わず、ちっちゃい白い可憐な花をつけるだよ。ただし、匂いがね。》

『そーですね。花だけ見ている分には、なんら問題は御座いませんがねー。匂いはねー。ちょいと頂けませんよね。それを「~お前のよーな花だった」なんてやられてはね。そりゃー、奥様だって、黙ってられませんよ。きっと。』

《それで、エレー目に会いましてね。それ以来、ドクダミはご法度、と言うことでして。》

『それは災難でしたね。さー、今日は何茶が出てくるか、楽しみですねー。』

《御隠居も、奥方様とカラオケをどうでやんす。「~ドクダミの白い花 お前のよーな花だった」とやってみてくだせーよ。きっと、お尻ペンペンですだよ。いや、奥方様なら、ホッペチネチネでやんすかねー。》

『何をバカバカしいことを。アホくさー。

ところで、今日の話題は何を用意して来られましたか。』

《御隠居。今日も今日とてケッタイな難解なのを用意して参りましただよ。》

『相変わらずケッタイなのですか。六さんのケッタイ課題は、難敵ですからね。お手柔らかにお願い致しますよ。』

 

《と言のは、以前からどうしてかなーと、常々疑問に思っていた事がありますだよ。これが中々難解なのですだよ。》

『そんな難解なものを持って来られても、埒が明きませんよ、キット。』

《イヤイヤ、御隠居なら、チャチャッと、要点をまとめれば、済む事ですだよ。》

『チャチャッとですか。六さんの持って来た話題にそんなたやすいものは、あった試しがないですよ。ややっこしいものばかりではありませんか。』

《そんなことはありませんぜ。いつも何だかだ言っている間に、何とかなっているではねーですか。まー、それなりにですだが。何たって、御隠居には「独偏」(独断と偏見の短縮形)と言う、得意技があるではねーですか。天下の宝刀独偏を抜きっぱなしにすれば、それで、チャチャッと行っちまいますだよ。》

『六さんは、何時も気軽でいーですね。』

《それそれ、この何時でも能天気が、オラの得意技ですだよ。あとは、特上を獲得すれば、万事OKですだよ。》

『能天気と特上で万事OKですか。敵いませんね。ところで、今日ご持参の話題は何でしょうね。』

 

[どうもお待ちどうさま。六さん、今日もお元気そうで、結構ですね。]

《へー、それだけが取り柄でして。元気、元気、能天気の六さんでやんす。》

[今日はね、六さんに特別すごいお茶を用意いたしましたよ。]

《特別茶でやんすか。よもやドクダミ茶ではないでしょうね。ドクダミだと、ややこしくなりますよ。ほっぺチネチネですよ。御隠居、覚悟ができてますか。》

『私を巻き込まないで下さいよ。頼みますよ。』

[なんですか。そのほっぺチネチネと言うのは。]

《それは、後で御隠居からよーく聞いてくだせー。ところで、本日の特別茶は、何ですだ。》

[今日はね、熊笹茶ですのよ。熊笹。六さんならご存知でしょ。]

熊笹茶でやんすか。熊笹はよーく知ってますだよ。オラの田舎では、どこにでも生えていただよ。だけど、あれをお茶にして飲んでいた人は、あまり聞かなかったな。家畜だって、あまり喜ばねーだよ。》

[それが最近結構流行ってますのよ。兎に角、一口試してみて下さいよ。特上の熊笹茶ですから。]

『六さんの目のない特上ですよ。』

《特上とあっては、グイーッといくほかねーだな。それでは、頂きますだ。一口、グイーッと。》

『どうです。六さん。特上の味は。』

《なんか、特別嫌なクセは感じないだよ。よくは分からねーだが、枯れ草の風味とでも言うのですかや。》

『六さん、枯れ草の味なんて知ってるのですか。』

《オラ、馬や牛ではねーだから、枯れ草を食べた事はねーだよ。だから、枯れ草の本当の味は知らねーだよ。まー、馬になった気分で、きっと、枯れ草は、こんな風味かなー、なんて言う感じかなー、なんて思ったりするだよ。まずくはねーだよ。枯れ草でも、センブリはいけねーだよ。あれはもー滅茶苦茶にげーだよ。飲めたもんじゃーねーですだよ。》

『今度、特上のセンブリにしましょうか。』

《御隠居、勘弁してくだせーよ。特上なら何でもいーと言う訳ではねーですだよ。》

[それでは、六さん、お口直しに、こちらに紅茶を用意してありますから、どーぞ。

六さん、ウナギが好物でしたね。ちょうど、知り合いから浜松のウナギパイを頂いたので、こちらもどーぞ。それでは、ごゆっくり。今度は、ペンペン草茶でも用意しておきましょうかね。]

《どーもお世話をおかけしますだ。》

 

『さて、話を戻しますか。今日の話題は何ですか。お手柔らかにお願いしますよ。』

《御隠居なら簡単ですだよ。人間はどうしてこうも「神様」に拘るのかなー、と思いやしてね。世の中、あっちを見ても、こっちを見ても、神社だらけですだよ。神社にどうしてこうも拘るのかねー。御隠居。

今日は、「神様」を用意いたしましただよ。世の中、とかく事の成り行き次第で、すぐに神様、神様と、神様に繋げる事が、やたら多いのですだよ。》

『まーね。世の中、何かにつけて、神様に繋げ易いところがありますなー。なんだかんだで、神様を便利に利用する傾向が見られますなー。

イタズラすると、神様にバチ当てられるよ。なんて以前は、日常いたる所で、神様を利用してましたね。』

《他の人はともかく、オラー神様の事は、良く解らねーだよ。》

『私も、解りませんが、とにかく、皆さん「神様」がお好きだなーとは感じていますよ。』

《何でやねん!》

『六さん、「何でやねん!」なんて突っ込まないで下さいよ。私だって、良く解らないのですから。とにかく、人間は色々な局面で、神様を出して来ますね。神様が余程大好きなのではないのでしょうかねー。』

《何でやねん!》

『まー、大雑把に言ってしまえば、人間の手に余ることは、神様にお願いしよう、と言う安易さが、人間にはあるのではないのでしょうかね。』

《何でやねん!》

『何で人間は、神様に走るのか、と言うと、人間ではどうにもならないことが、発生したら、人間を超越した存在のものに、頼る以外に手がないのではないのでしょか。』

《そりゃー、まーそーですだな。にっちも、さっちもいかなくなった時には、神様にでも頼る他はねーだよな。》

『とにかく、人間は色々な場面で、難儀に対面する場合が多いですからね。そんな時に、事をうまく運んでくれる神様がいてくれたら、助かるわけですね。』

《神様にお願いをしたら、願いが叶うのですかや。》

『さー、どうでしょうね。多分、願い事をして、その願い事が成就した場合は、きっと、神様が叶えてくれた、と思う人がいるかもしれませんね。』

《願い事が叶ったのに、神様が叶えてくれた、と思わない人もいるだか。》

『それは、いるのではないですか。神様が、自分の願い事を叶えるために、活動している現場を見ることは、ちょっとやそっとで出来ませんからね。とかく疑いを持ちやすいタイプの方は、すぐに疑問を持つのではないでしょうか。』

《それじゃー、願い事が、叶わなかった人は、神様を信用しない、と言うことになるのでやんすかや。》

『それはいちがいには言えないでしょうね。色々だと思いますね。神様の存在を認めない方も大勢おられますよね。それから、神様の存在を信じている方も、大勢おられる様ですね。それから、信じたら良いか、信じない方が良いか、不安定なチャランポランな存在の方もおられるでしょうね。まー、「神様」の存在は、信ずるか否かの世界でしょうからね。人間の心に関わる事なのでしょうね。』

《要するに、「神様」の存在や「神様」の力などは、個々の人々が、それを信ずるか、信じないかに関わっていると言う事ですだな。》

『そーでしょうね。例えば、自分の願望を叶えて下さいとお願いした場合、それが叶えられなかった時に、どう思うかと言うと、神様の存在を信じてやまない方は、神様だってみんなの願いを叶えるのは大変なのだよ。みんなに願い事をされて、てんてこ舞いなのだから、神様だって、多忙で手が回らなかったのだと思ったりね。また、自分の願い事自体に無理があったのだ。とか、願う態度が十分ではなかった、もっともっと熱心に、思いを込めて、お願いしなくてはならなかったのだとか、色々な思いがあるのではないでしょうか。』

《「神様」の存在を信じている人は、何かにつけて、「神様」びいきだすな。》

『さりゃーそーでしょうね。何たって、いざと言う時に、願い事を叶えてもらうためには、常日頃から、「神様」を立てて置かなくてはね。』

《やっぱり、常日頃から、「神様」と仲良くしておいた方がいーだよな。》

『こんな話を聞いた事がありますよ。知り合いの佐藤さんは、73才の時に、車の運転をやめたそうですよ。そのキッカケは、テレビなどでよく報じられているアクセルとブレーキの踏み間違いに類する事だったそうです。人それぞれ運転上のクセがありますよね。佐藤さんは、駐車する時は、ギアを前進に入れたまま、ブレーキの踏み方を調節して、駐車位置が決まったら、ブレーキを強く踏んで、車を停止させ、そして、ギアをPに入れる。この様な手順で駐車するのが佐藤さんのクセだったそうですよ。

ところが、ある時、駐車しようと、何時もの通り、駐車位置に着いたので停止しようと、ブレーキを強く踏んだところ、きなりエンジンが猛烈に噴き上がったそうですよ。人間勝手なものですね。瞬間、エンジンが壊れたか、と感じたそうですよ。そして、何でやねんと思って、ギアを確認したところ、なんとNに入っていたとの事です。要するにギアが Nに入った状況で、ブレーキではなく、アクセルを強く踏んだと言う事なのですよ。だから、前進せずにエンジンが思いっきり噴き上がった、と言う事ですよ。よって、幸い事無きに終わったとの事です。要するに、ギアとブレーキとアクセルの操作が、いつもとは違って、チグハグになっていたと言う事ですね。ところが佐藤さんは、ギアをNに入れた記憶が全くなかったと言うのですよ。それで、これはもういけないと覚悟を決めて直ぐに車の運転をやめることにしたんだそうです。』

《佐藤さん、よく止める決心ができただなー。》

『佐藤さんがおっしゃるには、佐藤さんは生来小心者でしてね。これが結果的に、良かった様ですよ。車の運転で、若し他人様を殺めたとしら、どうしょう。それ以後の自分の人生は、もう真っ暗闇になるな、と言う思いが常々あったのだそうですよ。それだから、車の運転は直ぐに諦める事ができたと言う事です。運転さえ止めちまえば、車で他人を殺めることは御座いませんからね。』

《車やめちまったら、不便になるだよ。御隠居。》

『そこが、一番の問題でしょうねー。当然、不便にはなったので、そこで、早速、電動アシスト付き、自転車を買って、買い物に出かけるハメになりましたとの事です。自転車もね。危険はあるのですよ。幸い、佐藤さんの家の近辺は、歩道が3メーター程もありましてね。車道を走らなくて良く、その上、土地柄、皆さんお車の方が多く、歩道を歩いておられる方がめっぽう少ないのだそうですよ。よく行くスーパーまでは、1キロほどとの事ですが、その間、歩行者と出会うことは、めったにない様です。冬は、自転車はあきまへんよ。でも、買い物は、近くのスーバーが宅配してくれとの事で、それで大体間に合っているとか。』

《オラとこでも、宅配利用してるだよ。カカーは大助かりと、喜んでるだよ。》

『まー、車がなくても、何とかなりますからね。

それから、運転をやめたと子供に伝えたところ、なんと子供は、大喜びしたとの事ですよ。通常、子供に喜ばれる事はあまりなかったそうですよ。早い話が、子供から、喜ばれる様な親ではなかったらしいのですよ。それが、この時ばかりは、子供が喜んでくれたそうです。子供は、何時、オヤジが運転でヘマをやらかすのでは、と心配していたのだそうです。』

《ところで、この御隠居のブレーキとアクセルを踏みちがえた佐藤さんの一件が、「神様」とどう言う関係にあるだか。》

『それがね、おお有りなのですよ。と言うのはね、後日、知人にこの一件を話しましたところ、すぐさま、彼は、それは「神様」の思召に違いないとおっしゃいましたね。私には、この発想が有りませんでしたので、驚きましたね。「神様」を信ずる立場におありの方は、この様に事態を解釈するのですね。』

《なるほどねー。佐藤さんは、図らずも、「神様」に助けられた、と言うわけですな。》

『どーもその様らしいのですよ。それから、この一件が、実にすごいのですよ。問題は、なぜ通常の運転で、駐車する時にギアを、Nに入れた事のない佐藤さんが、あの時に限って、 Nに入れていたのか、と言う事ですよ。

前に、「神様が、自分の願い事を叶えるために、活動している現場を見ることは、ちょっとやそっとで出来ませんからね。」と言いましたが、もうお分かりですね。まさに、エンジンを猛烈にふかすことになる直前に、ギアをNに入れたのは、これは、もう「神様」以外には、考えられないのですよ。まさに「神様」が願いを叶えてやろうと活動した現場に、佐藤さんはいたのですよ。どうです。凄いでしょう。こんな事は、めったに遭遇できる事では御座いませんよ。

しかし、幾分の疑問が残っているのですよ。と言うのはですね、佐藤さんは運転の安全を「神様」にお願いした記憶がないと言うのですよ。なのに、あの一件の時に、なぜ「神様」がギアをNにしてくれたのか、と言う事ですよ。神様は、色々様々なお方々から、実に沢山の願い事を託されているであろうに、実にご多忙であろうに、お願いした事の記憶さえ無い佐藤さんのとこへ現れて、手を貸してくれたのであろうか、と言う疑問があるのですよ。そんな頼まれもしない事に、手を貸す酔狂な「神様」はおられないのでは無いでしょうか。』

《そりゃー、そーですだな。きっと、その時は、「神様」退屈していたのですだよ。暇つぶしに、ちょっと、と思ったのではねーですか。御隠居。》

『そーきましたか。ところが、この様に邪推する方が、余程無粋な様ですよ。佐藤さん自身がお願いした記憶がなくても、きっと、佐藤さん以外の誰かがその様なことをお願いしていたのですよ。と解釈するのが、「神様」を信じる立場の方の解釈の様なのですよ。

さらに、追加すれば、何をトボけたことを言うのですか、「神様」は、万能なのですよ。できないことはない、と一切疑問を持たず、もっぱら一途に信ずるのが本物の信者様のようですよ。』

《なるほどねー。要するに、信ずる人には、きっと「神様」は存在すると言うことですだなー。》

『どーも、そう言う事になりそーですね。』

《御隠居は、「神様」は存在すると言う立場ですかや。》

『その辺りになると、難しいところですね。強いて言えば、「神様」が在するとした方が、何だか豊かな気がしませんか。「神様』は絶対にいません、としたら、なんか詰まらなくなりませんかねー。」《そーですだなー。無いよりはあった方が。いざと言う時に、便利かも知れねーだからな。》

『六さん、自分に都合の良いことを考うていませんか。例えば、特上がらみで。』

《御隠居にはかなわねーだな。直ぐに、見破られちまうなー。》

『まー、「神様」にお願いしたから、と言って、万事OKとはなりませんから。その辺りが何とも面白いところでしょうがね。』

 

《ところで、「神様」は、いつから存在したのですだ。》

『また、小難しいことを。そんな事知りませんよ。きっと、ずーっと昔からですよ。』

《御隠居、また、そんな大雑把に片付けようと端折ってもダメですだよ。それそれこの様な時には、御隠居の得意技で、独偏でいきやしょー。独偏で。》

『そんな何でも独偏で片つけようなんて、信用に関わりますよ。』

《御隠居、こう言っちゃ何ですが、もう手遅れですだよ。今更、信用がどうのこうのは、手遅れですだ。今まで、散々独偏でやってきたではねーですか。》

『これは手厳しいですね。まー、そう言う事に間違い御座いませんがね。』

《そいじゃー、とびっきりの独偏でおねげーしますだよ。「神様」は、いつから存在したのですだ。》

『あのね、六さん。貴方ね「神様」「神様」と気軽におっしゃいますが、「神様」は、古今東西ものすごく多数の「神様」と言われている存在があるのですよ。日本では「八百万の神』と言われている様に、ものすごい数の「神様」が存在しているのですよ。』

《ヒエーッ、8,000,000も「神様」が存在するだか。》

『ここで言う「八百万」は、1から始めて、~7,999,997、7,999,998、7,999,999の次の8,000,000と言う数値では御座いませんよ。極めて多数と言う表現でしょうから、具体的に800万ちょっきりと言うことでは御座いませんよ。要するに、いっぱい、多数、沢山と言うことですよ。したがって、一言で「神様」と言っても、色々様々な「神様」が存在するのですよ。だから、漠然と「神様」は、いつから存在したのかと言われても、どの「神様」かが問題になってしまうのですよ。それから、そもそも何を以って「神様」とするのか、と言う極めて厄介な問題が横たわっていますからね。』

《御隠居、あんまり真面目になられては、手出しできなくなっちまうだよ。だから、その辺は、適当に、独偏てヤツでおねげーしますだよ。そーだ、質問を変えますだ。神様と人間は、どちらが先か、と言う質問に変えますだよ。これでおねげーしますだ。》

『と言っても、「神様」とは何かを、予め規定して置かなくては、話の取っ掛かりが難しいですよ。』

《だから、その辺は、御隠居の独偏でおねげーしますだよ。》

『六さんのリクエストなので、大雑把に独偏で参りましょうか。』

《それがいーだよ。それで要点だけを、パパッと御隠居の独偏でおねげーしますだよ。》

『全く調子がいーのだから。たまりませんね。では、大雑把に参りましょうか。

一般的には、簡単に言ってしまえば、神は超人的な能力を持つとされ、その故を以て人々の信仰の対象とされている存在の様ですね。

「神様」は実に沢山存在し、その分類も、実に数々ある様です。その中で、ここでは、独偏で最も分かりやすいと思われる

①自然物・現象を信仰の対象としている場合、

②実在した人物を信仰の対象としている場合、

③実在しない空想上の何かを信仰の対象としている場合、

と言う大雑把な分類をしてみようかと思います。とは言え、「神様」はこの分類に収まるはずもない様ですので、まー、ヒマ潰しの一例と見て頂くと良いですね。

ここでは概ね日本を想定して、あれこれ独偏でね、ヒマ潰しをしたいと思いますが、どうでしょうかね。』

《結構、結構でやんすよ。お好きな様にどーぞ。》

『それでは、まず、①自然物・現象を信仰の対象している場合からみていきますか。これも種々雑多の様ですから、全てをと言う訳には当然参りませんが、最も一般的なものを見ますと、まずは、太陽ですかね。月もそうでしょうね。星もね。広大に天とかもね。山とか森とか大木とか海とか湖とかね。他には、大きな石・岩なども一般的ですね。まあ、これらの自然関係の特徴は、人間が、何と表現したら良いのか分かりませんが、結果的な表現ですが、何か神秘的なものを感ずるところがある様ですね。

申すまでも無く太陽は、すごい存在ですよね。これがなくなったら、万事一巻の終わりですわ。富士山もまたすごいですよ。人間の心を揺さぶる様な何かが宿っている様な感じがしますね。この何かが結果的には、神と称される事になるのでしょうね。』

《そーですだよ。自然は、でかくて、分からない部分が多くて、人間の力に比べると、何ともすごい力を示しますだから、そこに、人間は、「神様」を感ずるのですだべな。》

『実にそーだと思いますね。

ところで、六さんの質問は、「神様と人間は、どちらが先か」と言う事でしたね。』

《そーですだ。その辺りの要点をチャチャチャとおねげーしますだよ。》

『その点について、①自然物・現象を信仰の対象としている場合は、結論を急げば、人間が先と言う事になりそうですよ。』

《と言うと、どう言う事ですだ。御隠居。》

『それはですね。何と言ったら良いでしょうか。その「神様」は、人間の心の中に形成されるものと思われるのですよ。だから、人間がいなければ、そこに「神様」が、形成される事は無いのですよ。簡単に言えば、人間あっての「神様」と言う事なのですよ。もっと分かり易く言えば、人間が「神様」を作ったのだ、と言う事ですよ。だから、人間が先に存在しなくては、論理上、説明がつかないのですよ。』

《なるほどね。そりゃーそうだわな。人間よりも、「神様」が先にいて、そこに人間が現れたら、私が「神様」だよ、と言って、次から次へとどんどん「神様」が現れ出したら、何が何だか混乱してしまうわな。」

『そーでしょ。だから、先ずは、人間が出現して、その人間が自然を見て、そこに何か凄いものを感じて、その凄いものが次第に神格化されて行った、と考えた方が分かりやすいでは無いでしょうか。』

《要するに、「神様」の存在は、人間の都合によると言う事だな。》

『そー考えると、分かり良いですよね。

例えば、②実在した人物を信仰の対象としている場合などは、分かりよく言えば、一般人がなし難い、物凄いことを成し遂げた人物を、神格化して、信仰の対象としている場合ですね。』

《例えば、どんな人ですだべ。》

『何と言っても、菅原道眞が最も有名ですかね。言わずと知れた天神様と称されています。祀られている所は、天満宮と称され、日本中何処にでもあると言っていいくらい沢山ありますね。現在は、もっばら学問の神様とされて、受験生の合格祈願に一役買っていますね。』

《天神様は、あちこちに祀られてますだな。》

『そうですね。しかし、菅原道眞は、生まれた時から「天神様」では無いですよね。九州太宰府へ左遷され、死亡した後に、平安京で天変地異が相次ぎ、道眞左遷に関わった藤原清貫らが相次いで亡くなったことから[、道眞の怨霊が雷神となり、荒れくるい始めたと恐れられて、それを諌める為に、947年に北野天満宮に神として祀られる事になったと言われています。』

《へー、雷神になっただか。》

『道眞が自ら雷神になったわけはありませんよね。道眞を陥れ、太宰府に左遷させた者たちが、道眞の死後に起こった天変地異を道眞の怨霊がなさしめたと認識して、それを鎮める手段として、道眞を神として祀る事にした、と言う事ですね。』

《と言う事は、菅原道眞の預かり知らぬ事ですだな。》

『そりゃー、そーでしょう。道眞は死んでしまってますからね。

そして、後々、道眞の怨霊の記憶が次第に薄れ、また太平の世になるにつれ、稀代の秀才であった道眞を、専ら学問の「神様」として信仰の対象とする様になって、現在に至っていると言う事ですね。』

《受験シーズンの天神様は繁盛してますだよ。合格祈願の絵馬やお守りの売れ行きは、すごいですだよ。本当に効き目があるだか。》

『そこですよね。合格した人は、ご利益があったと思うかもしれませんが、不合格の人は、幾分複雑ですね。ご利益なんぞ元々無いのだと、「神様」の存在を否定する人もいるでしょうし、お願いの仕方が悪かったのかと、自戒する人もいるでしょうね。要するに、「神様」とどう向かい合うかは、人それぞれの信じ方によるのでしょうね。』

《だいたい、神様に頼んで合格しようなんて言う魂胆がいけねーよな。御隠居。》

『まー、そーでしょうが。困った時の神頼み、て言うのも、無いよりは、あった方が、人生楽しいかも知れませんよ。あまりのめり込むのはいけませんがね。ちょっとした息抜き程度になら、いーんじゃーないでしょうか。』

《菅原道眞の他に、どんな人がいるだか。》

『その他、織田信長(建勲神社)、豊臣秀吉(豊国神社)、徳川家康(東照宮)などがよく知られていますね。信長も、秀吉も、家康も、みな生まれながらにして「神様」では御座いませんよ。これらの人々を神格化して、信仰の対象としたのは、皆、後の人間の仕業ですからね。「神様」は、人間が作ったものなのですね。言うならば、作った者が何らかの為に、都合が良かった。だから作ったと言うことのようですね。すなわち、作るに至る事情があり、それは色々様々であったと言うことでしょう。』

《家康さんは、物凄く派手に祀られてますだな。何たって、日光東照宮だもんなー。修学旅行生がいっぱい来ますだよ。》

『中には、徳川家康が祀られている事を知らないで、ただただ観光の名所として来る方も多いとか。家康廟の隣に、三代将軍家光を祀った大猷院廟もありますが、こちらも立派ですね。

さて、③実在しない空想上の何かを信仰の対象としている場合がありますね。この代表的なのが「古事記」「日本書紀」の神代の部分に出現する神々だと思いますね。「古事記」では、初めに神々の世界があったとされています。高天原と言うようですよ。ここの「神様」が日本の国土を創ったと言われてますね。ここが①自然物・現象を信仰の対象としている場合、②実在した人物を信仰の対象としている場合と決定的に異なるところですね。

しかし、「古事記」「日本書紀」は、言うまでもなく人間が書いた書物です。だから、ここに現れる神々は、結局は人間によって作られた、と言うことになりますね。いずれも、8世紀になって書かれた書物です。おそらく、その頃の日本には、既に先人によって作られた色々な「神様」が存在していたものと思われますね。それらを題材に、「古事記」「日本書紀」の編纂に関わった者が、編集したのでしょうから、そこには数々の当時の伝承上の神々が存在したでしょうし、多分、編集に関わった者が創作した神も混入していた可能性も考えられますね。「古事記」は、太安万侶を中心に、「日本書紀」は舎人親王を中心に、それぞれ編集に携わった者達が、集めた神々の伝承などに基づいて、頭を寄せ合って、あの神話を纏めたのでしょうね。なかなか大変な仕事だったと思われますね。

そして、後になって、ここに現れている神を祀る社が造営されて、現在まで伝わっていますね。代表的なのは、誰でも良く知っている伊勢神宮でしょうね。天照大神が祀られています。

古事記」「日本書紀」に見られる神話は、実に壮大ですね。古代の人々の「神様」に対する思いが、伝わってきますね。天照大神が、天岩戸に隠れてしまった情景などは、まさに「開く戸佳話賞」(あくとかわしょう 「停念堂閑記」149 参照)ものですよ(ここは、全く私的なことですので、意味不明で良い部分です。悪しからず。)。』

《今から、1300年以上も前に、あのような神話をまとめたと言う事は、スゲー事ですだな。あの時代の人々は、想像力がすごかったのですかや。》

『それもあるかも知れませんが、当時7世紀末から8世紀にかけては、日本国を作り直そうとする機運が、物凄く盛り上がっていた時期ですからね。中国から律令制を取り入れ、天皇を中心に据えた国家建設が盛んでありましたから、皇室を中核とする日本国の成立についての見解を統一的に持つ必要があったのでしょうね。そのために、皇室の権力を確実とするために、それまで伝承されていた神々を、天照大神を中核として、系統的に編成する事により、日本国の創成をまとめ、皇室を中核とする新生国家として踏み出そうとしていたのではないでしょうか。』

《なるほど、そう言う時代背景があって、日本の神話がまとめられる事になったちゅー訳ですかや。》

『多分ね。独偏ではね。』

《結局のところ、「神様」と人間の関係は、どんなものと言う事になりますだ。御隠居。》

『大事な事は、初めに「神様」ありき、と言うのではなく、人間が何らかの必要から、「神様」を創り出すことになった、と言う事ですね。

「神様」は、独偏では、多分①自然物・現象を信仰の対象として発生した様に思われますね。

最初は、自然現象の中の何かに恐れ慄き、恐怖を感じた多くの者がいて、例えば、大地震や火山の噴火、豪雨、台風など何でも良いですが、人間の力をはるかに超越した自然現象が発生した場合、それを発生させた何かが存在すると感じたのではないでしょうか。そして、その存在をひたすら恐れる以外になかったのでしょうね。それで、この何かが怒ると、途轍もない力で、人間に襲いかかる、実に恐ろしい存在と感じたのではないでしょうか。そこでこの怒りを諌め、驚異の現象を起こさない様にしようとしたのではないでしょうか。

そのために、丁重にお祀りする事にした。結局、ここに祀られる事になった対象が「神様」と言う存在になった。すなわち、「神様」をお祀りする事によって、その怒りをおさめてもらうことが、人々にとって、精神的に、また、経済的に利益となることとなり、「神様」の存在が安定する事になったのではないでしょうか。つまり、この様な事を信ずる者、すなわち信者が形成される事になった、と言う様な状況であったのではないでしょうか。そして、人間には、欲がありますから、「神様」に自分の欲の成就を願う、と言う方向にも進んでいったのでしょうね。結局、「神様」は祀られる事により、人間に不利益をもたらすことのない、人間の思いを叶えてくれ希望の存在となった、と言う事ですね。』

②実在した人物を信仰の対象とした場合もそうですね。結局、その優れた能力にあやかりたい、と言うのがそれを祀る本音なのではないのでしょうか。

③実在しない空想上の何かを信仰の対象としている場合も同様ですね。その様な「神様」を存在させる事によって、良くは、悩める人の助けになれば、それは結構な事ですね。

古事記」や「日本書記」に現れる神々は、実に、政治的に利用された、その所産と言う事ができるのではないでしょうか。』

《要するに、人間は、「神様」を創り出して、自分たちにとって、都合の良い様に利用してきた、と言うことだすか。》

『その様な側面が強いよう様に思われますね。何度も言う様ですが、これは信ずる世界のことですから、人々によって、捉え方も一様ではなく、様々でしようね。』

さて六さんの知りたい問題点ですがね。

人間はどうしてこうも「神様」に拘るのかなー、と言うことですね。結論的には、私の独偏では、人の持つ欲望のなせる技では無いかと思いますね。』

《人間の持つ欲望が関係していると言う事だか。としたらオラの場合は、欲望と言えば、やっぱり特上以外にないな。と言う事は、特上と「神様」との関係と言う事になるだよな。御隠居。》

『まさにその通りですなー。今日は、六さん、どこかの神社様に立ち寄って、特上祈願をしては来なかったでしょうね。』

《これはしくじったなー。御隠居、ちょっと待っててくだせー。おらちょくら、近くのお稲荷様まで行って来るだよ。》

『六さん、手ぶらじゃー、まずいかも知れませんよ。』

《やっぱりゲンナマのお賽銭が効き目あるだか。》

『そうかも知れませんが、やはりお稲荷様だったら、油揚げでしょー。角の豆腐屋さんで売ってますが、豆腐屋さんに立ち寄る勇気がありますか。六さん。』

《御隠居、それはねーだよ。角の豆腐屋はいけねーだよ。あそこは、鬼門ですだよ。よし、オラも男だ。今日は「神様」頼みの特上は、キッパリ諦めるだよ。》

『それが良いですね。神頼みの特上なんて、六さんらしくもないですから。』

《今日は、御隠居頼み一本でいく事にするだよ。御隠居、たのまっせ。》

『こりゃー、やぶ蛇だったですね。参りましたな。』

《それから、御隠居。オラ気になっていたことがあるだよ。

それは、選挙があると、候補者は大抵ご贔屓の神社様に出かけて、当選を祈願しているだよ。それが、一人ではねーですだよ。同じ神社に何人も出かけるだよ。1人区の場合、こんな時、「神様」は誰の願い事をきくのかねー。御隠居。》

『さー、難しい事態ですね。六さんが「神様」だったら、どーしますか。』

《オラだったら、やっぱり並より特上だな。》

『結局は、そー言うことになりますかね。

それから、お金を騙し取るために、「神様」を利用する人がいますから、気をつけなくていはいけませんね。「神様」に、大金を騙し取られたなんて、洒落にもなりませんからね。』

 

それではこの辺で終わりとします。どうも、お付き合いありがとう御座いました。お疲れ様でした。お後がよろしい様で。

《停念堂閑記》152

《停念堂閑記》152

 

「停念堂寄席」」89

  

 

「勝負

 

 

ようこそ、「停念堂閑記」へ。よくお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

ここでの話は、相も変わらぬ、毎度、毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、底、奥行きの浅い、要するにマヌケな話で御座います。

しかし、取り柄もございますよ。決して深刻にならないところです。夜、眠れなくなったりしませんからね。

すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。

あるお方が申しておられましたよ。

ヒマ潰しにやることは、須(すべか)らくアホくさいものだと。

毎度毎度の《停念堂閑記》がそれを証明しておりますからね。 

さて、定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒! ヒマーッ!

A A O!  エイエイ、オー!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声でんなー。

情けねー! トホホ。

   

《こちら六さんです。さて、今日も今日とて、あいも変わらず、御隠居の処で、ヒマ潰しといくか。

御隠居、防犯装置を取り付けたからな。行ったら、まず、このカードを御隠居の家の門に取り付けられたカメラにかざす様にと言う事だな。あとは、案内のAIの声に従う様に、と言う事だな。このカードを忘れたら、門前払いと言う事だ。カードを忘れてはなんねーなと。このカード、ポイントつくのかね。何点溜まったら、特上になるのかねー。

オーイ、カカー。ちょっくら御隠居の処へ行って来るぜー。》

<アイよー。ゆっくりしといで。帰って来なくてもいーから。>

《いちいち憎ったらしい事を言いやがるね。帰って来なくてもいー、だってよ。そのくせ直ぐに迎えに来るくせに。

 

おっ、着いたね。このカメラだな。へいへい、カードをこうかざしてと。》

〝これは、六さん、今日もしらっしゃいましたか。相変わらずヒマなようですね。〟

《うるせーや。AI野郎、気楽に六さんなんて呼ぶんじゃねーよ。ヒマだろうが、忙しかろーが余計なお世話よ。トットと開錠しろってんだ。》

〝それでは早速ですが。六さん。今日は、ナゾナゾを作ってもらい、私が正解できなかったら、解錠すると言うことにしますよ。皆をうなづかせる様な秀作を期待してますよ。

《ナニ、ナゾナゾだと。皆をうなづかせる様な秀作だと、気楽なことを言ってんじょねーよ。AIよ、とやかく言うのなら、お前が作ってみろってんだ。》

〝 私は、そのような立場には御座いません。〟

《ハァー、どんな立場にいるんだ ? 》

〝そりゃー、六さんが来たら、課題を出す立場ですよ。できた作品を適当に評価し、開錠の是非を判定するのですよ。

無駄話は禁物です。

それでは始め。残り2分59秒、58秒、57秒、早く取り掛かった方が良いですよ。時間がなくなりますから。〟

《てやんで。オイ AI 、なめんじゃーねーぞ。ナゾナゾなんざーお茶の子さいさいよ。》

〝 時間がどんどん無くなりますよ。〟

《やいAI、これでどうだ。

 「甘くて、酸っぱくて、塩っぱいものは、なーんだ。?」》〝「甘くて、酸っぱくて、塩っぱいもの」ですか。

そんなの簡単ですよ。甘くて、酸っぱくて、塩っぱいアメ玉でしょうが。〟

《ブー、残念でした。》

〝どこがブーなのです。「甘くて、酸っぱくて、塩っぱいアメ玉」で当りではありませんか。〟

《ハズレですだ。スカですだ。出題側は、そんな答えは、用意しておらないだよ。だから、ブー。」》

〝そんな勝手な。〟

《ハズレはハズレ。スカはスカ。いつも、オメーは、アッシには、それはダメ。解錠してやらねー、と言うでねーか。自分勝手な判断で。文句あるかっちゅーの。》

〝それでは、正解は、なんですか?〟

《こんなやさしーの、わからねーのか。答えは「甘酢っぱ味噌」に決まってるだよ。》

〝そんなー、それでは「甘くて、酸っぱくて、塩っぱいアメ玉」となんのかわりも無いじゃー無いですか。〟

《全然ちがうだよ。「甘酢っぱ醤油」ならまだオマケしてやってもいいだが、アメ玉は、ブー。》

〝そんな理屈では、解錠できません。残念でした。もっと、マシなのを作って下さい。〟

《それでは、これはどうだ。

一見何か判らない物と幅70・80センチ程の四角い布が一体となっている物体はなーんだ?》

〝何か判らん物と四角い布が一体化した物体?   こんなのはカンタンのタンですよ。〟

《カンタンのタンだと。ジャー、答は何だ。》

〝それは、風呂敷に包まれた中身の判らん物だよ。ピンポーン!〟

《ブー、残念でした。ハズレー。スカー。》

〝それじゃー、正解は何です。〟

《ジャジャーン。正解は、「得体の知れない風呂敷包み」だよー。どーだ、参ったか。》

〝またまた、何がブー、残念でしたですか。内容は同じでは無いですか。〟

《全然違うの。ブーですだ。それでは、これはどうだ。

草の葉っぱの陰で、カメムシがカマキリに捕まって食べられていた。その10メートル離れた所にアリンコがいた。アリンコはこの事態をどう感じていたか?》

〝えーと、カマキリは臭いだろーな、と思った。〟

《ブー、残念でした。アリンコには10メートル先が見えておら

ず、事態を把握できてないので、特に何も感じていなかったんだよー。》

〝そんなの無いですよ。〟

《アリ、アリのコンコンチキですだよー。》

〝ダジャレで誤魔化そうなんて、それはペテン、サギの手口ですよ。〟

《そんなこと言うのなら、これはどうだ。常識ナゾナゾだぞ。

ネズミとイノシシとイヌとウシとトリとサルとトラとウサギとタツとヒツジとヘビとウマとが競争したんだとさ。さて、順位はどうなったか。》

〝簡単簡単、ピーンときましたよ。十二支ではありませんか。子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥だから、すなわちネズミ、ウシ、トラ、ウサギ、タツ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、トリ、イヌそしてイノシシの順で決まりです。〟

《ブー、ジャジャーン、大ハズレ、スカ、スカですだよー。》

〝また、ペテン、サギの手口ですか。〟

《とんでもねー、最初に常識、常識の問題だと言ってあるだよ。AI、オメー常識ねーな。》

〝何が常識です。私の知識量は物凄いですよ。だから、十二支だなんて、瞬時に分かっちゃうのですよ。違うと言うなら、正解は何だと言うのですか。〟

《本当に常識がねーな。常識が。問題をちゃんと考えたのかチューの。最初から、常識を問う問題と断っているだよ。この十二種が競争したと言うのだが、大体、何の競争をしたと思っただよ。大食いか、激辛食いか、眠り我慢か、ションベン我慢か、はたまた体重比べか、その他色々あるよ。どんなのか知らないが、ワールドカップでもやったと言うのかよー。

大体、こんな12種の動物を集めて、競争ができると思うのかちゅーの。例えば、ウサギとカメが競走した話を聞いて、本当に競走したと思っているのかちゅー事だよ。この判断ができなかったオメーは、常識がねーツーの。》

〝なるほど、指摘されれば、その通りかもしれないな。このてのデータを補強する必要があるな。ところで、正解は何です。〟

《だから、正解は、この様な競争は成立しないから、順位なんざーつける事ができねー、と言う事よ。

さー、トットと負けを認めて、サッサと、解錠しなさいよっ。》

〝なるほど、ごもっとも。恐れ入りやした。どーぞお入り下さい。お身体を大切に。〟

《何だ、そのお身体を大切に、と言う言い草は。》

〝私、しばらく休みます。不足しているデータの補強を図って、出直します。〟

《そーか。そりゃー良い心掛けだ。せいぜい、勉強してきな。アバヨ。》

〝お元気で。〟

《ジャーな。》

 

《御隠居。お元気でやすか。六さんでやんすよ。》

『六さん。しらっしゃい。どうぞ、お上り下さい。

今日は、AIと揉め事を起こしませんでしたか。』

《それが、これからは、揉め事が当分起こらないことになっただよ。》

『それは、どう言う事ですか。』

《それが、早い話がAIのヤツお払い箱になったのですだよ。自分から。御隠居。》

『お払い箱、自分から、とはどう言う事ですか。』

《それはね。今日はナゾナゾを作れ、と言い出しましてね。アッシが作った問題に、答えられなければ、AIの負け、解錠すると言うだよ。そして、結局、アッシの勝ち、AIの負けとなりましただ。そしたら、AIのやつが、不足しているデータの補強を図りてえ、と言い出しましてね。その間、しばらく休みを取る、と言うことになって、早い話が、AIのヤツが自らお払い箱を申し出た、と言うことですだよ。》

『へー、そう言うことになったのですか。と言うことは、次回からは、六さん専用のカードを門のカメラにかざす必要がなくなった、と言う事ですね。尤も、今までも、六さんがカードをかざさなければ、他の来客と同様、ビンポンとやって貰えれば、すぐ解錠できたのですけどね。』

《エーッ、そーだったのですけー。すっかり騙されてたなー。と言うことは、「開く戸佳話賞(あくとかわしょう)」に悩む事もなかった(「停念堂寄席」」86 「生きると言うこと」参照。)、と言う事ですけー。こりゃー、コロットとやられましただなー。》

『まー、そう言う事ですが、頭の体操に良かったでは無いですか。』

《と言う事で、御隠居、早いところ警備会社に連絡して、 AIの使用を打ち切る手続をとった方がいいだよ。》

『分かりました。早速そうしますよ。

ところで、今日の話題は何を用意して来られましたか。』

《御隠居。今日もとてもケッタイな、どえらく難解なのを用意して参りましただよ。》

『どえらくケッタイなのですか。六さんにその様に言われると、恐ろしくなりますね。どうか、お手柔らかにお願い致しますよ。』

 

《と言のは、以前からどうしてかなーと、疑問に思っていた事がありますだよ。これが中々難解なのですだよ。》

『そんな難解なものを持って来られても、埒が明きませんよ、キット。』

《イヤイヤ、御隠居なら、チャチャッと、要点をまとめれば、済む事ですだよ。》

『チャチャッとですか。六さんの持って来た話題にそんなたやすいものは、あった試しがないですよ。ややっこしいものばかりではありませんか。』

《そんなことはありませんぜ。いつも何だかだ言っている間に、何とかなっているではねーですか。まー、それなりにですだが。何たって、御隠居には「独偏」(独断と偏見の短縮形)と言う、得意技があるではねーですか。天下の宝刀独偏を抜きっぱなしにすれば、それで、チャチャッと行っちまいますだよ。》

『六さんは、何時も気軽でいーですね。』

《それそれ、その何時でも能天気が、オラの得意技ですだよ。あとは、特上を獲得すれば、万事OKですだよ。》

『能天気と特上で万事OKですか。敵いませんね。ところで、今日ご持参の話題は何でしょうね。』

 

《御隠居なら簡単ですだよ。人間はどうしてこうも「勝負」に拘るのかなー、と思いやしてね。戦争からパチンコまで、世の中、あっちを見ても、こっちを見ても、勝負、勝負、勝負だらけですだよ。勝ち負けにどうしてこうも拘るのかねー。中には「負けるが勝ち」なんて、訳の判らん事を言う人もいますだよ。御隠居。》

『今日は「勝負」と来ましたか。「勝負」ねー。』

《そーだす。今日は、御隠居と勝負だす。》

『私は、六さんと勝負などしたくないですよ。』

《ところが、世の中、これが事の成り行き次第で、すぐに勝負、勝ち負けに繋がる事が、やたら多いのですだよ。ねっ。この「勝負」の話で、御隠居があれこれグダグダやって一応終わるだよ。そしたら、いきなり御隠居と「勝負」の局面になるだよ。特上を巡ってだすよ。いつの間にか、「勝負」となってしまうだよ。》

『まーね。世の中、何かにつけて、白黒、勝ち負けの事に繋がり易いですなー。ただし、特上云々は、六さん特有ですよ。世の中、何時もかつも、特上云々で勝負している方は少ないですよ。』

《他の人は、ともかく、オラー何時も毎度毎度、御隠居と特上勝負に励んでるだよ。》

『全く敵いませんね。

私には、良くは解りませんが、とにかく、皆さん「勝負」がお好きだなーとは感じていますよ。仕事にせよ、スポーツにせよ、趣味にせよ、世の中万般「勝負」につながる事が多いですね。』

《何でやねん!》

『六さん、「何でやねん!」、なんて突っ込まないで下さいよ。良く解らないのですから。とにかく、人間は色々な局面で、他人と争う事が多いですね。どちらかと言うと、勝負事が、大好きなのではないのでしょうか。』

《何でやねん!》

『まー、大雑把に言ってしまえば、多くの場合、そもそも、人間の場合、生来他者には勝ちたい、負けたくはない、と言う気持ちがあるからではないですかね。個体によって、強弱はあるでしょうが。

だから、おそらく何かにつけて、勝敗を争う形が出現するのですよ。』

《何でやねん!》

『何で人間には、他人には勝ちたい、負けたくはない、と言う気持ちがあるのかと言うと、それは、人間は生きていく上で、他人よりも優位に立った方が、自分にとって何かと具合が良いからですよ。』

《そりゃー、まーそーですだな。負けるよりは、勝った方が良いだよな。勝って、特上獲得の方が良いに決まってるだよ。》

『はー、何ですそれは。』

《一人ごとですだ。一人ごと。》

『とにかく、人間は色々な局面で、他人と争う事が多いですね。どちらかと言うと、勝負事が、大好きなように見えますね。』

《だからさー、御隠居、何で勝負事が好きなのか、ちゅーう事ですだよ。》

『それはね。きっと、多くの場合、そもそも、相手には勝ちたい、負けたくはない、と言う気持ちが人間にはあるからですよ。』

《だからさー、何でそんな気持ちがあるのか、ちゅーことですだよ。》

『そんな事、簡単には解りませんよ。多分、人間は、多くの場合、他人に負けるよりは、勝つ方が、自己に有利だ、と言う事を先天的に持って、生まれてきているのではないですか。』

《何でやねん!》

『どうしてでしょうね。思うに、人間に限らず、生命体は、自己の生命の維持とその繁栄を目指す事を、本能的に持ち合わせているのではないですか。その辺りに根っこが潜んでいるのではないのですかね。』

《何やねん、それ!》

『これ以上のことは知りませんよ。それは、生命体の宿命とでも考えるよりないのでは。すなわち、生命体は、自己の生命の維持とその繁栄を図る事を宿命として持ち合わせているのではないのでょうか。だから、そのためには、自己にとって有利を好む訳で、その有利を獲得するには、勝負して勝つと言う外なく、そのためには、何かにつけて勝負の機会を持ち、それに打ち勝つ必要がある、と言うことではないのでは、と思ったりしますね。

だから、何かにつけて、勝負する側面が多く存在すると言うことなのではないですか。

ただし、人間は、他の生命体と著しく異なる進化を遂げたようなので、他の生命体とは、異なる側面を持っているようですよ。それは、精神面に顕著に現れているのではないでしょうか。例えば、価値観とか好み(感情)の側面で、顕著ですよね。

所詮性格が異なりますから、比較のしようもないのですが、仮に、人間の価値観と好み(感情)を、植物のそれに求めたとすると、かなり異なるところが見られたりしますよね。簡単に言えば、一般的に植物は自己の生命の維持と繁栄を期して、光と水を求めますよね。同じ環境にある同種の植物は、必ず同じ傾向示しますよね。その個々においては、それがうまくいくか否かが勝負となるのですよね。これを人間の価値観や好み(感情)に置き換えて見ますと、人間は、同じ環境に存在しても、皆が皆、自己の生命の維持と繁栄のために、同じ行動をとるとは限りませんね。要するに、個々の価値観や好み(感情)が違うと、当然異なった行動に出ますね。この点が、実にややこしいところで、解りずらいところがあるのですよ。人間は、複雑怪奇な生き物のようですね。

とは言いながら、多くの場合は、人間は、勝負に勝って、自己の立場を有利にしたい、楽しい存在にありたい、と思うのが一般的なのでしょうね。

《そーですだなー。少しでも、自分の位置を高くしたい事を望めば、勝負で勝つ必要があるだな。》

『そーですね。それとちょっと視点を変えれば、自分の位置を高めたいと言う願望とは別に、楽しみたい(感情)と言う願望もあるようで、これが勝負と繋がってる部分があるようですよ。

と言いますのは、人間は何かにつけて楽しみたい(感情)と言う欲求を持っているようですね。例えば、人間は何のために働くのかなー、と言う疑問がありますねー。それは、生きていくためには、お金を稼がなくてはならない、と言う事ですね。そこで、稼いだお金をどう使うか、となると、まずは衣食住に向けられる。最も一般的に見られる現象ですね。ところが、これだけかと言うと、人間は、どうも衣食住が満たされれば、それで満足か、と言うとそうではありませんね。ここに現れるのは、楽しむ(感情)と言う要素ですね。多くの人は、楽しむ(感情)事に対する欲求が、すごく強いですね。極端に言ってしまえば、楽しむ(感情)ために、働くのさ、となるようですね。この楽しむ(感情)ためと言うウエイトが極めて高いと言う現実ですね。生きていく基本の衣食住の面にも、楽しむ(感情)と言う要素が、大きく関わっていますね。

この楽しむ(感情)と言う側面に、「勝負」がすごく大きく関わっているのですよ。例えば、スボーツに関心のある人は、実に多く存在しますね。この人々は、大別して、自分が好きなスポーツをして楽しむと言う人と、自分がする訳ではなくして、スポーツを鑑賞して楽しむと言う人に分かれますね。前者の代表的なのはアスリートの方々です。分かり良く言えば、まさに「勝負」に生活を掛け、命がけで臨んでいる方々ですね。後者は、それを自分の好み(感情)に合わせて、鑑賞して楽しむ(感情)と言う立場の人々ですね。ここでは、分かり良く言えば、自己の贔屓を設定して、それに「勝負」を託し、勝てば大いに満足する。負ければ、落胆する。要するに、このような形で「勝負」しているのですね。この立場の人は、実に沢山おられますなー。野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、相撲、柔道、レスリング、水泳、陸上競技等々、何でもござれですね。これに欲得(感情)が絡むとすごいですよ。競馬、競輪、競艇オートレースなど、「勝負」している方々の力の入れようが違いますよ。もはや戦場に臨んでいる状況ですね。

 

本当の戦争となると、言うまでもなく、楽しむ(感情)と言うわけには参りません。一般的には、自己の立場を有利にしようと、戦争を始めるのでしょうね。色々な理屈をつけてはいますが、結局は、自己の立場を有利にしようと言うところに、戦争の原因がありますね。

世界では、戦争を起こさないようにと、多くの国々が、色々と対策を練っていますが、所謂軍事大国が、その力に任せて、自己有利の戦略を行使すると、軍事力の小さな国は、どうしょうもない状況ですね。

そこで、常に、攻められたらどうしょう、と言う心配が存在する事になりますね。

日本はと言うと、攻められた時の対策として、防衛をしっかりしなくてはならないと、飛んでくるであろう敵ミサイルを想定して、日本領土に着弾する手前で、撃ち落そうと、迎撃ミサイルの備えに苦慮している状況ですね。

先に、他国が日本を攻撃するためのミサイルの発射を整えた事が明らかとなった時に、それを日本側は攻撃しても良い、とする憲法解釈をしましたね。所謂敵基地攻撃能力を保持して良いとする現状ですね。そして、この度、政府はその設備に多額の予算をつける対策を打ち出しましたね。簡単に言えば、日本への攻撃が明確にになった敵基地に、先手を打って、それをミサイルで粉砕し、日本への攻撃をできない状態にする、これが日本の防衛の仕方であると言う考え方のようですね。

そして、そのための経費は、「国」が多く負担し、国民への負担を極力軽くするが、増税が必要になると言うような説明をしていますね。全く、訳の判らない説明では御座いませんか。何処ぞに、防衛費を負担してくれるお「国」さんが存在するような説明です。早い話が、「国」が多くを負担し、「国民」の負担を軽くする、と言う、論理は一体何なのか。私的な事で甚だ恐縮でありますが、私は、幼き時から、あまり勉強が好きではなく、積極的に勉強したと言う記憶が殆どないのですが、少なくとも、日本は「国民国家」であると言う教育を受け続けて来たと記憶しています。分かり良く言えば、「国」=「国民」と言う理解をしてきた訳です。そこに、「国」が多くを負担し、「国民」の負担を軽くする、なんて言われると、何やねんと突っ込まざるを得なくなるのですよ。このツッコミは、やはり六さんがお似合いですね。お願いします。

《何やねん!》

『ご協力有難う御座いました。

日本国民は、第二次大戦後、憲法第九條があるので、日本は戦争をしないと教え続けられてきましたね。結果、ほとんどの国民は、自ら武器を持って戦わなくてはならないと言う、危機意識を全く持たない状況に至っていると言って良いのではないでしょうか。それでも、何処かの国が、日本に攻め込んで来た場合には、どうしょうと言う心配はあったわけでが、この点については、アメリカと自衛隊が、何とかしてくれるだろうと思っているでしょうね。個々の国民は、自ら武器を携えて、敵と戦う意志など微塵もないと言って良いのではないでしょうか。戦場に出て、自ら戦う事になると言う教育を受けてきた国民は、いないのですよ。だから、敵がやってきた、さあ防衛しなくては、さあ戦わなくてはとなっても、どのようにして戦うか、防衛したら良いのか、その方法を国民個々は全く持ち合わせていませんからね。問題は、そんな国民有権者に選ばれた、国会議員の先生方の存在ですね。個々の国民と本質的には、何等変わりはありそうにないですね。例えば、何処か日本の領内に侵入してきた外国軍があった場合、その現場へ武器を携えて出向き、国民を代表して、敵を退ける戦いに挑む国会議員の先生がいると思えるでしょうか。むしろ国民を盾に、自己の保全に走るのではないのでしょうか。もはや、勝負にならないのでは、と言う状況だと思われますね。尤も、現今の戦争は、そんな事をして戦える状況では御座いませんがね。まー、意気込みですよね。そんな意気込みは、見受けられない現状ではないでしょうか、と言う事ですよ。

敵基地攻撃能力の行使ですが、これは言うまでもなく日本側の理屈ですから、敵となっている側は、当然相手側の理屈がありますから、日本の敵基地攻撃能力の行使御もっともとなる事は御座いません。日本側が、敵基地攻撃能力を行使すれば、おそらく戦闘開始と言う事態になるでしょうね。国内に、ミサイル、弾丸が飛び交う事態となりますね。ウクライナの事態を見れば、誰でも判ることですね。その辺の事情を踏まえ、国民を交えた議論がないまま、岸田総理は、アメリカ他のG7関係国に出かけ、この路線で日本は行くのだと、交渉して来たようですが、大丈夫なのでしょうかね。

 

本格的な戦争においては、自衛隊アメリカにお任せ、と言う現状ですね。このような事態が発生したら、この勝負については、国民は手出し不可能の事態だと思われますね。これに関わる国民個々の覚悟ができていなければ、敵基地攻撃能力の行使なんて、実現するわけがないように思われるのですが。これに多大な予算をつけ、ミサイルを備えれば、他国の侵略の抑制になる、と政府、行政、評論家、メディアではよく耳にしますね。が、果たしてその程度の事で、抑制する事が可能でしょうか。日本の隣国の4国は、核兵器を以って抑制としている状況なのですよ。そこに、敵基地攻撃可能とするミサイルを備えたところで、どれほどの抑制力になるのでしょうね。これに多額の予算を投じると言うことは、他に対策を必要としている事柄に充てるべき、予算が削減される訳ですからね。この勝負は考えものと思われますね。

それから、気にかかるのは、敵基地攻撃能力の整備に関わり、国民をベースとする議論を尽くさなくてはならないのですが、議論の方向が、戦争勃発の可能性を踏まえた検討が大切なことは指摘するに及ばない第一の視点であろうと思うのですが。ところが、野党側は、これに当たって、増税の側面を中心に議論あるべし、としている現状の様に見えるのですが、これは単なる独偏でしょうか。敵基地攻撃云々は、増税云々とは次元の異なる事態であろあと思われませんか。この議論の勝負が、極めて重要ではないでしょうか。

 

六さん、こんなところで、私の「独偏」と言うことで、どうでしょうね。』

《どうでしょう、と言われても、それが御隠居の「独偏」の行き着くところだったら、それでいーのではねーですか。オラも、どちらかと言えば、「独偏」が好きだから。》

『まー、人は何で「勝負」が好きなのかなんて、科学的に証明する事が、中々難しい性格のものでしょうから、頃合いを見計らって、「独偏」で始末するよりありませんね。それぞれの「独偏」で納得するよりないのではないでしょうか。』

《まー、そんなところですべか。》

『なんて、六さん。次の勝負を考えているのではないでしょうね。』

《流石、御隠居、万事心得ていますだなー。

さー、勝負、勝負。但し、心太、蒟蒻、白滝の特上勝負は御免ですだよ。》

『これは、先手を打たれてしまいましたね。何か、新手を考えなくてはね。』

《御隠居、そろそろ腹を括って、今日は、鰻重と行きやしょう。特上、特上とね。オネゲーしますだよ。》

『また、鰻重の特上ですか。』

《そーなんですら。世の中、鰻重の特上に勝るものはごぜーませんだよ。御隠居。》

『そーですか。しかし、生憎、私は鰻が苦手なのですよ。』

《えーっ、鰻の嫌いな人がいるんですかや。なんぞ、訳ありでやんすか。ご先祖の遺言とか。》

『いやー、大したことではありませんが、あれ以来鰻はねー。どうも苦手でしてね。何を隠そう、私は二十歳過ぎ迄、鰻を食べた事がなかったのですよ。どうも、泥鰌や鯉、鮒、石斑魚(うぐい)など、淡水魚は食べず嫌いだったのですよ。特に、泥鰌と鰻はね。あのヌルヌルした姿を見るだけでね。食べる勇気がなかったのですよ。それが二十歳過ぎのある日、アルバイト先で送別会があって、それに誘われて出席したのですよ。そこで鰻の蒲焼が出たちゃったのですよ。おっかなビックリ箸を付けで、口に運んだのですよ。』

《どうでした。初鰻は。もう止まらなくなったのではねーですか。》

『それがですね。皮と肉の間に脂っこい部分がありまして、ヌル甘と来ちゃったのですよ。たまらず、オエっと言う方向にね。必死にこらえて噛まずに飲み込み、大事には至りませんでしたが、それ以来、鰻には一切箸が出ませんね。たとえ、六さんの奢りで、特上ときても、絶対にお断りですね。』

《なんと、もってーねーことを。あのヌル甘が、なんともねー。極楽ですだよ。御隠居。》

『その後も、勤め先の人たちと、用事があって、出かけた先で、お昼に鰻重をとって下さったのですよ。この時は、鰻重単品でしたから、他に食べる物がない状態だったのですよ。ところが、世の中には、ご親切な方がいらっしゃるものですね。私ゃー、鰻がダメなんです、と言うと、なんとご親切に、それでは私が食べてやるよ、と鰻だけをね。私の重箱には、タレのついたご飯だけがね。タレも美味いから、とすすめてくれましてね。私は、タレご飯重。結構、情けなかったですよ。と言うような経緯もあって、鰻重はダメなのですよ。』

《良かったですね。ラッキーですだよ。今日は、アッシが鰻を食べてあげますだよ。親切でやんしょー。御隠居は、得意のタレご飯重でやってくだせーよ。円満解決ですだよ。》

 

〈こんにちは。失礼いたします。御隠居さん。〉

『はーい。少々お待ち下さい。

これは、これは、六さんの奥様。』

〈どうも、失礼いたします。内の宿六お邪魔しておりませんでしょうか。〉

『ハイハイ、六さんならいらっしゃっていますよ。』

〈恐れ入りますが、ちょっと呼んで下さいませ。〉

『六さん。奥様ですよー。』

《ヒェーッ、こんな時に限って、また。》

〈何言ってんの。もう昼ですよ。お暇しなくては。

御隠居さん、いつもいつも長っ尻で、申し訳御座いません。〉

《いえいえ、とんでも御座いませんよ。どうぞ、たまには、奥様もご一緒に、特上でもいかがですか。》

〈いつもバカな事ばかり言っているのでしょうね。本当に、申し訳御座いません。さー、帰りますよ。〉

《特上鰻重はどうするだよ。》

〈あんたの大好物だから、帰りしなに鰻屋さんの通りで帰りますから。たっぷりと、匂いを嗅いで帰りますよ。〉

《ヒエーッ、匂いだけかよ。》

『良かったら、このビニール袋をどうぞ。たっぷり匂いを詰めてお持ちになっては。』

《御隠居は、こう言う気だけはよく回りますだな。》

『特上の匂いを、存分にどうぞ。』

 

てな次第で、今回の話は、これで終わりに致します。

どうもお疲れ様で御座いました。懲りずに、又のお越しをお待ち申し上げます。

お後がよろしい様で。

《停念堂閑記》151

《停念堂閑記》151

 

「停念堂寄席」」88

  

 

少子化問題

 

 

ようこそ、「停念堂閑記」へ。よくお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

ここでの話は、相も変わらぬ、毎度、毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、底、奥行きの浅い、要するにマヌケな話で御座います。

しかし、取り柄もございますよ。深刻にならないところです。夜、眠れなくなったりしませんからね。

すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。

あるお方が申しておられましたよ。

ヒマ潰しにやることは、須(すべか)らくアホくさいものだと。

毎度毎度の《停念堂閑記》がそれを証明しておりますからね。 

定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒! ヒマーッ!

A A O!  エイエイ、オー!!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声でんなー。

情けねー! トホホ。

   

《こちら六さんです。さて、今日も今日とて、あいも変わらず、御隠居の処で、ヒマ潰しとするか。

御隠居、防犯装置を取り付けたからな。行ったら、まず、このカードを御隠居の家の門に取り付けられたカメラにかざす様にと言う事だな。あとは、案内のAIの声に従う様に、と言う事だな。このカードを忘れたら、門前払いと言う事だ。カードを忘れてはなんねーなと。このカード、ポイントつくのかね。何点溜まったら、特上になるのかねー。

オーイ、カカー。ちょっくら御隠居の処へ行って来るぜー。》

<アイよー。ゆっくりしといで。帰って来なくてもいーから。>

《いちいち憎ったらしい事を言いやがるね。帰って来なくてもいー、だってよ。そのくせ直ぐに迎えに来るくせに。

 

おっ、着いたね。このカメラだな。へいへい、カードをこうかざしてと。》

〝これは、六さん、今日も相変わらずヒマなようですね。〟

《うるせーや。AI野郎、気楽に六さんなんて呼ぶんじゃねーよ。ヒマだろうが、忙しかろーが余計なお世話よ。トットと開錠しろってんだ。》

〝それでは早速ですが。六さん。今日は、謎掛けに挑戦してもらいますよ。皆をうならせる様な秀作を期待してますよ。

《今日は、謎掛けときたか。皆をうならせる様な秀作だと、気楽なことを言ってんじょねーよ。AIよ、とやかく言うのなら、お前が作ってみろってんだ。》

〝 私は、そのような立場には御座いません。〟

《ハァー、どんな立場にいるんだ ? 》

〝そりゃー、六さんが来たら、課題を出す立場ですよ。できた作品を適当に評価し、開錠の是非を判定するのですよ。

無駄話は禁物です。

それでは始め。残り2分59秒、58秒、57秒、早く取り掛かった方が良いですよ。時間がなくなりますから。〟

《てやんで。オイ AI 、なめんじゃーねーぞ。謎掛けなんざーお茶の子さいさいよ。》

〝 時間がどんどん無くなりますよ。〟

《やいAI、これでどうだ。

 「一人キャンプの焚き火」と掛けて

〝ハイハイ「一人キャンプの焚き火」と掛けて、なんと解きます。〟

《「サツマイモ」と解く。》

〝その心は。〟

《「焼き芋を一人占め」。》

〝はー、こんな程度ではあきまへん。ピリッとしたところが伺えませんな。平凡なサードゴロ。アウト。〟

《それでは、これはどうだ。

 「彼女とのキャンプの焚き火」と掛けて、》

〝「彼女とのキャンプの焚き火」と掛けて、なんと解きます。〟

《「サツマイモ」と解く。》

〝その心は。〟

《「焼き芋を半分こして、アツアツ」。》

〝あのね、六さん。柄にも無いことを言っては、いけませんよ。ファールフライ、あっさりとられ、アウトです。〟

《それでは、これはどうだ。

 「彼女とのキャンプの焚き火でサンマを焼いていた時」と掛けて、》

〝「彼女とのキャンプの焚き火でサンマを焼いていた時」と掛けて、なんと解きます。〟

《「野良猫にサンマを持って行かれた。」と解く。》

〝その心は。〟

《「彼女が驚いて、キャット叫んだ」。》

〝はー、六さん。ダジャレときましたか。折角、作ったのだから大マケにおマケして、サツマイモよりは、若干マシでしょうかね。。サードゴロ、イレギュラーして、かかろうじて、辛くもセーフとします。オマケですよ。〟

《それでは、これはどうだ。

もー、キャンプには行かねーぞ。

ガラッと行く先を変えて、自民党本部へ行くことにするぞ。》

〝えーッ、自民党本部へですか。気をつけて下さい。迂闊に近づくと、不審者扱いされて捕まってしまいますよ。〟

《誰が、本当に行くかよ。謎掛けでいくだけだよ。》

〝あーよかった。六さんが捕まってしまったら、しばらく休業になり兼ねませんからね。〟

《なんで、捕まっちゃうと決め付けるだよ。オラの様な善人の塊が、捕まる訳がねーだろうが。》

〝さーね、それはどーでも良いです。残り1分ですよ。〟

《なにが残り1分だ。お前が時間使ってるんだぞ。ふざけんじゃーねーよ。まったく。

それでは、これでどうだ。

 「自民党は、 発電でCO2を出さないために、原発を再稼働させる方針を示したとさ」と掛けて、》

〝「自民党は、 発電でCO2を出さないために、原発を再稼働祖せる方向を示したとさ」と掛けて、なんと解きます。

《「違法ゴミ投棄」と解く。》

さて、その心は。〟

《「CO2は止めても、どんどん出る核のゴミの方は、延々と出しっ放しかよっ。間が抜けてないか。」。》

〝あのね、六さん。今度は、少しだけ良いですよ。六さんには、めったにない大変珍しい事です。この際、大マケにおマケして、2塁打、1得点入ったことにします。〟

《なにが2塁打だ。ケチらず本塁打にしろよ。またまた算数的判断に走っているのでは無いか。お払い箱を忘れてはいないだろうな。》

〝イヤイヤ忘れては、いませんよ。お払い箱は困りますからね。開錠です。どうぞ、お入り下さい。御隠居様に、どうぞ宜しくお伝え下さいませ。〟

 

《御隠居。今日もやって参りましたよ。》

『六さん。いらっしゃい。どうぞ、お上り下さい。

今日は、AIと揉め事を起こしませんでしたか。』

《お払い箱を忘れるな。と言ってやったところ、どうぞ、お入り下さい。御隠居様に、どうぞ宜しくお伝え下さいませ。だってさ。オベッカ言いやがって。どんなデータが入っているのかね。御里が知れるわ。ホント。》

『私は、作成に関わっていませんからね。誤解の無いようにお願いしますよ。』

《本当ですかー。どうもチョット怪しいところがあるみたいですなー。》

『そんな事は、御座いません。気の回しすぎですよ。

ところで、早速ですが、今日の話題は何を用意して来られましたか。』

《御隠居。今日はとても難解な、どえらく真面目なのを用意して参りましただよ。》

『どえらく真面目なのですか。六さんにその様に言われると、恐ろしくなりますね。どうか、お手柔らかにお願い致しますよ。』

《と言のは、以前からしょっちゅう指摘されているだが、一向に進展する様子のない、「少子化」問題と言うヤツですだよ。御隠居は、こう言うの得意ですだべ。政治家の連中が、相当困っている状態の様だから、何とかしてやって下せーよ。》

『全然、得意では御座いませんよ。これは、恐ろしくとてつもなく厄介な問題ですよ。チョットやソットでは、ニッチもサッチも行かない問題ですよ。きっと。こう言う問題こそ、六さんの得意とするとこではないですか。取り敢えずは、門番のAIとやりあっては如何でしょうね。』

《まー、アッシは不得意なものを除いては、全部得意でやんすがね。何でも御座れっちゅーところですだな。AIなんぞ、数のうちにヘーリませんだよ。御隠居、何か相談事でもありますだか。》

『相変わらず、調子の良いこと。それだったら、「少子化」問題なんぞ、チョチョイのチョイで片付くのではないですか。』

《御隠居、残念でした。他の事であれば、チョチョイのチョイなんだれけど、「少子化」問題だけは、あきまへんねん。これは、完全に御隠居の守備範囲ですだよ。》

『勝手にそんな事決めちゃって。参りましたねー。』

《何も参る事はねーでしょー。要点だけチョチョチョのチョイとやれば、後は特上の件が残っているだけだから、直ぐに終わりますだよ。

では、御隠居、どうぞ。》

『特上の件ですか。それは、忘れ去る事にしまして、要点だけチョチョイのチョイと参りますかねー。』

《特上の件は、忘れ去ってはならねーだよ。これが一番の問題なのでやんすよ。「少子化」問題の方は、御隠居の独偏(独断と偏見の略語》で、要点だけチョチョチョのチョで、一件落着ですだよ。それでは、オネゲー致しますだよ。》

『まったく、六さんには敵いませんね。

まず、「少子化」問題についての要点は、まー、この問題設定により、色々な見方が出来ると思われますね。

例えば、「少子化」による良いと思われる点と困ると思われる点を単純化して羅列して見るとしますか。』

《へー、アッシは、「少子化」と言うと、悪い事ばかりかと、思っていただよ。良いこともあるだか。御隠居。》

 

『まず、良いと思われる点については、出生数が減少すると言う事は、人口が減少すると言う事になりますね。まずは、人口が減少すれば、人々の生活に必要なものが万事少なくて済むと言う事が挙げらりますね。衣料、食料、住宅、電気、ガス、水道、交通、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、病院、老人向け施設等々すべて少なくて済むと言う事になりますね。と言う事は、これ等の事柄に関わる政治、行政、司法等公的、および個人的な金銭的側面については、すべて少額化となるので、この点については、良い、望ましいと言う事になるでしょうね。

具体的に分かりやすく言えば、例えば、衣料、食料、住宅、電気、ガス、水道等についての生活に必要とされる量が少なくて済む、と言う事になりますね。また、交通・各種イベントの混雑も緩和されますね。単純に考えると、その為の経費も少なくて済む、と言う理屈になりますね。食料品なども、日本は、専ら輸入に頼っている現状ですが、これが自給可能となるかも知れませんし、輸入依存が軽減されますね。発電もCO2・核のゴミを出さず、自然力を利用したもので用足りる事になるでしょうね。交通面についても、渋滞、混雑が緩和されるでしょうし、高額な費用が必要な鉄道・道路の建設・整備も少なくて済む事になるでしょうね。はたまた国民が大好きな各種のイベントも、混雑せず、参加しやすくなるだろうし、人気の美味いもの屋さんにも、やたら長い行列を作らずに、待たなくて済むでしょうしね。子供数が減少すれば、保育園・幼稚園も利用しやすくなるでしょうし、学校教育も、やたら小難しい学校に行かずとも、余裕のある教育が可能になるかも知れませんしね。就職だって、働き手の数が減少すれば、しめたものですよ。ずっと就職しやすくなりますよ。企業も、待遇を良くしなくては、人を集める事が出来ませんから、仕事の内容を楽にして、給料を上げなくてはならなくなりますから。

例えば、この様な側面は、「少子化」歓迎、と言う事になりますね。』

《「少子化」、オラ、大歓迎だな。良い事づくめだな。結構結構。「少子化」良いぞ良いぞ。ねー、御隠居。》

『それは、良いところだけ見ていれば、結構結構と言うことになるかも知れないけれど、困る側面を見ると、こちらの方は、ど偉く深刻ですよ。』

《エーッ! 「少子化」いーぞ、いーぞ、行け行け! とはならねーのですかえ。御隠居。》

『ソリァー、六さん。世の中、表があれば裏もあるのですよ。表裏一体、両面くっついてますからね。』

《なるほど、特上もあれば、並もあるってー事かね。御隠居。》

『イヤイヤ、それとこれとは、全然関係ない話ですよ。六さんは、直ぐに特上方面へ舵を切りたがる悪いクセがありますね。「少子化」問題と特上と並の話とは、全く別問題ですよ。』

《だって、御隠居は表裏一体と言ったばかりではねーですか。》

『あのね、六さん。ここでは、特上とか並と言う事とは、一旦離れましょう。きりがありませんから。』

《それでは、一旦と言うことで、手を打ちますべか。御隠居。》

『まったく参っちゃいますね。話を「少子化」に戻しますよ。しかし、どうして「少子化」問題に特上だの並だのと言う事が結びつくのかね。』

《御隠居、何か言ったかや。》

『イヤイヤ、気にしなくて良いですよ。

ところで、「少子化」に関わり、困る点ですが、具体的な問題となると、山盛り存在していそうですね。』

《御隠居、特上であれば、山盛りでなくても良いだよ。》

『特上は、関係ないと言っているでしょう。

ところで、「少子化」の問題が、どうして、すこぶる難儀な課題なのかと言う点について考えてみますと、要するに、従来、政治的、社会的に関わる諸問題が、その時々の人口を前提として進められてきた経緯があるからではないでしょうかね。

大雑把に、分かり良く言ってしまえば、現在の社会は基本的には、現人口に見合わせて作られて来たわけで、この根底の人口が減少して来ているので、その減少に伴う新しい社会作りをしなくてはならない、と言う事態になっているわけですね。

すなわち、「少子化」は、社会のすべての問題に関わる事で、例えば、台風で橋が破壊されたので、急ぎ橋を修復した。と言う様な、問題の部分を対策すれば、何とか問題が解消されると言う様な単純な対策では、手に負えない状況にあると言う事ではないのでしょうかね。すなわち、衣料、食料、住宅、電気、ガス、水道、交通、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、病院、老人向け施設等々すべての事柄が、人口に応じて設定されていなければ、国民の生活が難儀になると言う状況になると思われるのですよ。だから人口の減少に即した形に社会を再構築しなければならない訳で、これは大変な事態なのですよね。どうします。六さん。』

《突然どうします。なんて言われたって、それは特上にする以外の対策は、オラには思い浮かばねーだよ。》

『あなたね。衣料、食料、住宅、電気、ガス、水道以下等々の諸課題を、全部特上でやれば良いと言うのですか。そんな能天気な事を。例えば、防衛面だけをみても、現状より幾分大盛りに近付けたい、と言う事で増税しなくてはならないと政府・与党が言い出しましたよ。この対策についてだけでも、てんやわんやの大騒ぎになるのですよ。これを特上にしたいなどとなったら、どうなります。』

《と言う事は、「少子化」の問題について、政府・行政は何もしてこなかった、もはや出来ないと言う事だか。御隠居。》

『何もしなかった、と言うより、根本的な対策を、何も出来ていない、と言うべきでしょうかね。ただただ目先の問題処理に終始し、将来対策をできてなかった。と言う御粗末の一語ですね。私の独偏(独断と偏見)ではね。』

《と言う事は、これまで国会議員の先生方は、御粗末な対策しか出来なかった、と言う事だか。》

『私の独偏ではね。「少子化」による人口の減少については、その分野の専門家によって、随分以前から指摘されていた事ですよ。しかし、それに耳を傾ける有能な国会議員の先生が、居なかったと言う事でしょうね。若しくは、僅かにいても、政府を動かせる力とはならなかった、と言う事でしょうね。とにかく、国会議員の先生は、選挙で当選してしまうと途端に偉い存在となるのでしょうね。自己の判断に固執して、他者の意見を聞こうとする耳を持たなくなってしまう様ですよ。「少子化」の問題に限らず、全ての事柄について、他者、特に専門家の意見を聞いてみようと言う事は考えない存在になる様ですな。尤も、聞くだけではダメだけれどね。とにかく国会議員になると、どこででも「先生、先生」と持ち上げられる存在となりますからね。先生たる者、何でも知っている存在と勘違いしてしまうのでは無いのでしょうかね。先生たるものが、他者から教わる立場には無いと思っているのでは無いのでしょうかね。』

《どうして、何かの問題について、対策を立てようとする時に、まずは、その筋の専門家の意見を聞いてみようとは思わないのかやー。ねー、御隠居。》

『それですねー。ちゃんと理由があるのだと思いますよ。』

《御隠居、その理由とは何ですだべ。》

『それはね。六さんだけにこっそり教えましょうか。それは、専門的な研究者は、その研究成果を論文にして、世に出し、それに対する意見を広く求めると言う手法をとるのだけれど、その論文は、結構小難しいものなのですよ。専門家でない人が読んでも、直ぐには理解しにくい性格があるのですよ。だから、国会議員の先生の多くは、そんな小難しい理解し難い論文を読んでみようと言う気が起こらないのでしょうね。

更にね、だいたい、専門的な論文は、日本語で書かれているとは限りませんからね。気軽に読む、なんて事はなかなかね。そして、そんな小難しい論文には、次回の国政選挙でどの様にして、得票をより多く獲得できるか、と言った、国会議員先生の最も関心の深い選挙対策などは書かれていないのですよ。だから、結局のところ専門家の意見は、なかなか国会議員の先生の耳には入りづらい、と言う事になるのでしょうね。』

《どうして、能力のある国会議員の先生はいないのかね。御隠居。》

『それは、決まっているではありませんか。国政選挙の時に、候補者の中に有能な人がいなかったり、国民有権者が能力のある候補者を選ばなかった、若しくは、選び損ねてしまった、と言う結果なのではないのでしょうか。』

《それにしても、「少子化」の問題について、誰か一人くらい、国会議員の先生が、一言二言でも、意見を言った事はないだか。御隠居。》

『それは、色々ありますけれど、今一つ決め手となる所へは届いていない実情の様ですよ。

例えば、現職の国会議員先生の強い関心事の一つは、高齢者の年金をどの様にして確保するか、と言う課題を抱えているわけです。高齢者の年金を支えるのは、高齢者がそれぞれ払い込んできた資金の他に、働き盛りの成年層が支払う資金と言う実情ですが、これが、誰でも知っている様に、高齢者の人口がものすごく多く、働き盛りの成年層の数が全く足りていない、高齢者を支える人口が減少の一途を辿っている現状ですね。

この様な現状の問題を解決しなくてはならない事情にあるのですが、国会議員の先生は、手っ取り早く、高齢者に支給する年金を少なくするとか、青年層が納める年金資金を引き上げ、増加させよう、と言う全く目先の短絡的な施策を考えるのに汲々といている有様ですね。しかし、それを実施すると、次回の国政選挙でどうなるのか、そればかり心配となるのですよ。この様な状況で、国会議員の先生は、もっぱらこの立場で「少子化」問題を捉える事になるので、手っ取り早く、女性が子供を沢山産めば良いのだ、などと言った発言が飛び出して来るのですね。この発言の結末の詳細については、失念してしまいましたが、たちまち女性側から総スカンを食っていましたね。年金確保のために、女性は沢山子を産めば良いなんて、短絡的な時代錯誤の甚だしい先生の様でした。

しかし、問題は、口には出さないが、心の中に、基本的にはこの様な考えを持つ、先生がかなり存在しているのでは無いでしょうかね。だから、仲間内の会合で、ポロリと本音が出たりして、これがメディアに嗅ぎつけられて、大騒ぎになるケースが見受けられますね。独偏ですがね。

メディアでは、毎年出生数が減少の一途にある事を報じていますね。

その原因は色々考えられていますが、最も注目されているのは、ご夫婦としては、子供を欲しいが、家庭の経済的な事情から、子供を作るのを躊躇しなくてはならない状況にある、と言う事の様ですね。

この問題については、答えは明白ですね。端的に言えば、行政が、妊娠、出産、育児、教育、医療等に関する支援をしっかり行う。この事により、この問題は解決する話ですが、問題は、行政が適切な対策を実行するかどうかに掛かっている、と言う事です。

例えば、国会議員先生の妊娠、出産、育児、教育等に関わる基本的な事柄は、当該夫婦・家庭が行うべきと言う考え方が根底にあるのでは無いでしょうか。この様な考え方で何とかできた時代があったのでしょう。この様な時代は、家族が、祖父母、父母、子供、父母の兄弟姉妹と言った構成が支配的であったので、子育てが夫婦だけの負担にはならなかったのですね。家族の皆んなが、手助けしてくれるわけです。しかし、時代と共に、家族構成がすっかりと変貌してしまった現状です。また、以前は、各家庭は、地域共同体との強い関係が存在し、困った時には、隣近所が助け合うと言うのが、当たり前でしたが、今は、以前の様な地域共同体はすっかり変貌してしまっていて、日常の助け合いは姿を消してしまった状況ですね。だから、夫婦だけで子育てするのが、なかなか厳しい状況になっていますね。

この様な状況を以前の状況に戻す事は、もはや無理の様に思われますね。

とすると、子育て対策は、行政が行うより無いのですね。これは、行政がやるか否かの決断に掛かっている事です。どうせ避けて通れる問題でないのは明らかですから、行政はさっさと腹をくくって、実行すればいいだけの事です。実行の要点は、政治家先生が一から考えて、政策の実施に至る過程を全て担当する必要はなく、その分野の専門家から、要点を提供して貰えば事済む訳で、政治家先生が選挙対策を前提として、地元利益のためにあれこれ算段する必要はないわけです。これに政治家の先生が、自己の選挙対策を考えて、色々算段をすればするほど実施が遅れ、且つ、歪んだ部分が発生しがちとなりやすいのですよ。行政は実施に向けての決断と、それに必要な予算の算段に専念すれば良いのです。現実には、この方向でかなりの成功をおさめている地方自治体が幾つもありますから、要は、行政がその気になるかどうかが最大の問題の様ですね。

次に、「少子化」の原因として挙げられていることの一つは、近年は子供を産まない女性が増えているのではないのか、と言うところにその一因を求める意見がある様です。

これは、現社会では、極めて微妙な要素を含む難しい問題となっていますね。

一言に、「子供を産まない女性」と言っても、その内容は色々様々であり、複雑な事情がある様です。

例えば、子供を産むのを拒否(幾分強い表現で不快に感じられる方もおられるかと思いますが、事態を理解しやすいのではなかろうか思い、この様にしました。)する事情と、子供を産みたくても産めない事情(前出の経済的問題を除外)にある女性が存在しますね。これは双方、結果的には、「子供を産まない女性」と言われるのでしょうね。しかし、内容は、個々に異なります。

「子供を産むのを拒否する事情」と言っても、これは個体差があって、実に様々でしょうから、これについて平均化して論評する事は、あまり意味のあることとは思えませんね。要するに、個人の何らかの事情で、子供を産むのを拒否すると言う事ですから、この事情を知らないで、どうのこうのと言っても、仕方が御座いませんな。

分かり良く言えば、世間では、この是非が問題として、しばしば取り上げられる傾向がある様に見えるのです。そして、時に、「子供を産むのを拒否」する個々の当該事情が明らかでない状況で、結論的に「子供を産むのを拒否」するのは、怪しからんと言う論評となる場合がまま見受けられるわけですね。

「子供を産むのを拒否」と言う個々の事情についは、実に様々な内容が含まれていると思います。

例えば、本当は子供を産みたいのだけれど、病気で産めない事情があると言う場合もあるでしょう。

また、是非はともかくとして、世界の将来を展望して、悲観的な結論に達した場合、そんな将来に、子供を残す事は出来ない、と判断なさる方もおられる様ですね。

さらに、妊娠・出産・育児・教育等に自分の能力では、とても耐えられないと判断する向きも存在するかも知れませんね。

はたまた、自分は、妊娠・出産・育児・教育等に関わる厄介な事は、そもそも嫌いなのだ、そんな事はしたく無いのだ、と言う方もおられるかも知れませんね。

そしてまた、人生は一回きりだ。だから、自分のしたいことを第一にしたい。しかし、それが女性の故を以って、妊娠・出産・育児・教育等に専念しなくてはならないのは納得できない。と来ても何ら不思議でないご時世ですからね。

例えば、南極大陸に生息する皇帝ペンギンと言う種がいますね。あの産卵から成鳥に至るまでの彼女、彼らの行動を見ると、実に凄まじいものですね。概ね夏季には、海で餌をとって生活しているのですが、産卵期を迎えると、50キロから150キロ程も離れている内陸に移動し、コロニーを形成して、繁殖行動を営む事になるのですね。それぞれペアー(次年には異う相手となるそうです)が成立して、メスが産卵するのは、南極の厳冬期なのです。卵は一個しか産まない。南極にだって、夏季と言うものがあるでしょうに。なんで、こな厳しい時期に、産卵・子育てをするのかと言うと、ちゃんと理由がある様ですね。夏季迄に子を大きく育て、海に連れて行き、成長させて、来たる厳冬季に備えるのだそうですよ。

産卵を終えると、メスは卵を相手のオスに託し、自分は、獲餌のために海へ戻るのです。その距離50キロから150キロに及ぶそうで、その間をあのペンギン歩きでヨチヨチと行くのですよ。実にケッタイなことをする種でんなー。

一方、卵を託されたパパペンギンは、立った状態で、自分の足の上に卵をセットして、下腹部の弛んだ皮でそれをスッポリ包んで、それを孵化するまで、2ケ月以上もじっと佇んで温め続けるそうです。夫婦交代で卵を温めると言う方法はとらないのだそうです。50度以下にもなる雪原で、頭に雪を積もらせて、暴風雪にさらされて、一切食物をとらずにですよ。時に雪を食べるとか。南極の雪は、どれほど栄養があるのかねー。所詮、雪は雪だよねー。実にケッタイな種でんなー。孵化の頃には、もーパパはヘロヘロでしょうなー。育児休暇を取っている人間パパ、育児は大変でしょー。落ち込んだ時には、南極のパパペンギンを思い出しましょうね。

孵化する頃、ようやく海に出ていたママが戻ってくるのですよ。あの長距離をヨチヨチ歩きでね。たっぷりお腹に獲った餌を蓄えてね。これが孵化した子の餌になるのですね。

ここに至って、パパは、遠い遠い海まで、空腹を突いて、ヘロヘロになって、ヨチヨチ歩きで出かけるのですよ。途中で絶命するものもあるそうです。

皇帝ペンギンの生活は、この繰り返しですよ。贔屓のタレントのライブに出かけることも、おー寒ーい、味噌ラーメン一丁、なんてゆかないのですよ。淡々と、次世代に命を繋げる行為に専念する一生なのですね。皇帝ペンギンは動物の中で、最も過酷な状況で繁殖をする種と言われてますね。何でこの様な事になったのでしょうかね。

次世代に命を繋げる行為は、生命体に課せられた最も大事な営みと言えるのでしょうね。

この様な南極の皇帝ペンギンの繁殖行為から見ると、ついつい人間のご夫婦が、子供をつくらないのは、誠に怪しからん行為だ、と言う結論に達してしまう向きが出てくるのですね。

しかし、人間は皇帝ペンギンではありませんから、その様な短絡的な結論は、忽ち如何なものか、となる訳ですね。

まー、とにかく色々様々な事情が存在しますね。

人間は、他の生命体とは、著しく異なった進化をしましたので、すこぶる複雑な状況に存在しています。その実状を踏まえた認識が必要とされますね。

日本では、個々人の自由が憲法で保障されていますからね。それは尊重されなければならない存在です。

妊娠して、出産までの時間は、女性にとっては、実に身体的に、また精神的に厳しいものが存在していますね。男には、想像すら不可能な事柄が存在するのでしょうね。

子供をつくると言う事は、親として、それは他に代える事が出来ない喜びの数々がある事でしょう。親は、皆んなそれを夢見るから、厳しい子育てに耐えられるのでしょうね。

が、その反面、心配事から逃れる事が出来ない事情も存在しますね。全員元気でまるまるとした赤ちゃんが生まれてくれば問題は御座いませんが、そうでは無い場合がありますから、心配は尽きる事がありませんんね。

出産は、女性にとって、正に命懸けの仕事です。この点については、男性はどうしょうも出来ませんね。産後の育児、教育面については、男性も役割分担が幾分可能となりますが、出産だけはね。女性に担当してもらう他はないですよ。いくら小器用な男性がいたとしても、こればかりは、あきまへんわ。男女平等とはいかないのですね。だから、どっか別の側面で、バランスをとる必要が存在するのですね。

少子化」は女が子供を産まなくなったのが原因だ、と言う発言をしていた男性政治家先生に、できる事ならば女性になって、3回くらい妊娠から、出産・育児に至る経験をしてもらったら、何と言いますかね。世界が一変するのでは。

なお、「少子化」は女性が子供を産まなくなったのが原因だと言う意見は、近年女性の社会進出が顕著となり、結婚をしない女性、晩婚の女性が増加した様に見える社会背景を理由に、この様な意見を指摘する向きもあるのでしょうね。

尤も、今風の女性の社会進出以前において、女性が仕事をしていなかった訳では御座いませんよ。例えば、自家経営の場合は、今もそうでしょうが、女性は、結婚すると、家業・家事は当然、妊娠、出産、育児についても万事担当している訳で、この負担はすこぶる重い状況ですね。サラリーマン世帯では、以前から、専業主婦が一般的とされていた女性が、いわゆる共稼ぎをする確率が増加した、と言うのも、女性の社会進出増加と言われる一面ですよね。

なおまた、以前は、女性は、婚前に花嫁修行をもっぱらすることが一般的であったのが、そうではなく、会社勤めに出る様になった、と言うのが、これも女性の社会進出の一面ですよね。

と言ったところが、女性の社会進出の増加と言われる実情でしょうか。これらのことが、未婚や晩婚などの事柄と結びつき「少子化」の一因になっていると言う指摘がある訳ですね。

この点についての判断を、どうすべきかは、なかなか微妙なところがあります。

会社勤めをしながら結婚をし、子供を産み、育てると言うのが、現状では、多分一般的なのでしょうね。それは言うまでもなく妊娠・出産・育児・教育という事柄を会社勤めと同時にやらなくてははならないと言う事態ですので、すこぶる厳しいわけです。この厳しさにめげず努力して子育てしているのが、未だ一般的な状況なのでしょうね。

ところが、一方に、こんな厳しい子育ては嫌だと、子供を産まない女性が増加しつつあるのも現状なのでしょうね。

だから、この厳しいのが嫌だと言う事で、子供を産まないと言うのは、どうであろうか、とする意見がかなり根強く存在しているのでは、と言う気がしますね。

個々の事情について、それに関わる判断基準を設定して、その基準に照らして、是非の判断をするよりないのでは、と思われますが。

個々人の自由は、認められなくてはならない事情がありますから、難しい問題ですね。

子供を産みたくても産めない事情(前出の経済的問題を除外)にある御夫婦についても、個々の事情が異なる事でしょうから、それに合わせて考えるよりないでしょうね。

要するに、それぞれ止むに止まれぬ事情が存在しているでしょうから、「少子化」は女性が子供を産まなくなった事が、原因だから、女性が子供を沢山産みさえすれば、問題は解消だ、と言う様な単純な能天気なことを言っている様では、到底問題解決には、程遠いですね。

この点についての専門家は、多数いらっしゃるでしょうから、そのご意見を参考にして、判断基準の設定をしなくてはなりませんね。

ただし、色々な決まりごとを作ったからと言って、女性が子供を産むことになると言う保証があるのでしょうか。世界では、宗教的な立場などからも、色々な考えがある様ですが。

しかし、次世代に命を繋ぐ事は、生命体に課せられた最も大事な営みである事を否定すれば、論理としては、人類は滅亡する事になりますからね。ただし、女性が子供を産まなくなっ事よりも、人類を滅亡に近づける事柄は、他にも多々存在しますからね。

とにかく、ボケジジーが、どうのこうの言ったところで、解決につながる事はないですから、難しい問題です。』

 

《御隠居、そろそろ要点をチャチャとオネゲーしますだよ。そーでねーと、次の特上の問題へ中々進めねーだから。オネゲーしますだよ。》

『また、特上の心配ですか。なんだか、国会議員先生の選挙対策に似てますねー。そもそもの発想の根底がねー。』

《そーなんですら。世の中、特上に越した事はありませんだよ。御隠居。》

『ちょっとダラダラしてしまいましたので、要点をチャチャとヤッツケましょか。

要点は、簡明ですよ。

行政が、安心して子育てをできる環境を整える事。この一事につきますね。これは、行政が腹を括って、断行するより方法は御座いませんよね。

まずは、妊娠・出産・育児・教育、医療等に関する無料化の実現に向けて、政治家が断固決断する事ですね。

そして、先ずは、家庭の経済問題が解消すれば、子供を作りたいと希望している御夫婦の方が、多くいらっしゃいますので、この方々に協力をお願いしてはいかがでしょうかね。即ち、まず第一に、子育てに当たるご夫婦に、支援金を支給する事です。ケースバイケースで、色々と施策を調整する必要があるでしょうが、その辺りは徐々に整備するとして、とりあえず、子育てをする御夫婦に、当面の目標月額30万円を支給しましょう。これは心を広くして、子育てご苦労様手当としましょう。財源は、国、地方自治体および企業の三者が分担したり、クラウドファンディングなど、広く寄付を仰ぎ支援の基金を作るなど、色々広く考えて、子育てしているご夫婦を支援すれば良いのでは、と思うのですよ。その他、子育てに関わる諸方面の費用は、無料とする方向で、グズグズせずに、テキパキと促進しましょう。

これくらいのことをしなければ、「少子化」は解消しませんよ。解消しないと言うことは、「少子化」によって発生する全ての問題が、延々と何時迄も続くと言うことを忘れてはいけませんね。

これらの基本課題について、従来は、目先の関心の強い部分に個別に対処する方法がとられて来てますが、個々に対処すると言う事になると、個々に政治家が自己の都合で介入しだし、予算のぶん取り合いになり、結局のところ対策が纏まり難くなるのですよね。どうしても、選挙対策の方向に直ぐに走り出しますからね。

また、関心の強い部分から徐々にやる対策が取られると、これだと早く恩恵に預かる部分と、後回しになってしまう部分が発生しますので、国民全体の平等感が薄く、後回しになったところがバカを見なければならない事になる訳ですね。だから、基本的なところを全部ひっくるめて、無償化する方が、将来的には望ましい様に思われますね。多分関心の高まっている各部分部分の手直し対策よりも、纏めて無料化に踏み切った方が、行政的に望ましい、簡単に言ってしまえば、手間暇金を掛けずに済む体制が成立する事になると思われますがね。問題の部分を各関係省庁に分散してやるよりは、新たに専門の「庁」を設置して、集中的にやった方が合理的の様に思えますけどね。何でも関係する各省庁に分担させるやり方は、各省庁間で重なる部分が必ず発生しますから、税金の有効な使い方に反するのですよ。それよりも、各省庁間の調整を図るのは、極めて困難なことですからね。

まー、問題は色々御座いましょうが、「少子化」問題は、社会の隅々まで関わる大きな問題ですから、基本的な方向をまず見定める事が大事な事ですね。

と言ったあたりで、どうでしょうね。六さん。』

《いやー、決着が付きましたね。やれやれこれで、持ち越されていた次の問題が解決されれば、本日の課題がゼーンブ解決と言う事ですだな。御隠居。》

『はー、今日の課題はもうゼーンブ解決済みですよ。』

《御隠居、トボけられては困りますだよ。特上、特上の一件が、まだ未処理ですだよ。》

『仕方御座いませんね。それでは、三択で参りましょう。次の内、どれでも結構です。特上を奢りましょう。「 1.心太 2. 蒟蒻 3.白滝」 六さん、さー、どれでもお好きなものをどーぞ。』

《御隠居、これは無いでしょー、これは。》

『どーぞ、御遠慮なく。』

《そー、来やしたか。それでは、オラも三択と行くだよ。

A 鰻重

B 御寿司

C すき焼

御隠居、遠慮せずに、好きなのをどーぞ。》

『オヤ マー、六さん、そんなに無理なさらなくてもいーのに。でも折角だから、私は 「C すき焼」 と言う事にさせて頂きますわ。六さんは、どれにしますか。1.心太 2.(蒟蒻 3.白滝。』

《な、なんです。そりゃー。御隠居。話が噛み合ってませんぜー。》

 

〈こんにちは。失礼いたします。御隠居さん。〉

『はーい。少々お待ちください。

これは、これは、六さんの奥様。』

〈どうも、失礼いたします。内の宿六お邪魔しておりませんでしょうか。〉

『ハイハイ、六さんならいらっしゃってますよ。』

〈恐れ入りますが、ちょっと呼んで下さいませ。〉

『六さん。奥様ですよー。』

《ヒェーッ、こんな時に限って、また。なんか、急用でもできたのか?》

〈何言ってんの。もう昼ですよ。お暇しなくては。

御隠居さん、いつもいつも長っ尻で、申し訳御座いません。〉

《いえいえ、とんでも御座いませんよ。どうぞ、奥様もご一緒に、特上でもいかがですか。》

〈いつもバカな事ばかり言っているのでしょうね。本当に、申し訳御座いません。さー、帰りますよ。〉

《昼飯は、なんだ。》

〈あんたの大好物のすき焼にしますよ。白滝山盛りの特上にしてあげますから。〉

《ヒエーッ、参ったね。》

 

てな次第で、ここで些か中途半端ではありますが、終わりにいたします。

どうもお疲れ様で御座いました。懲りずに、又のお越しをお待ち申し上げます。

お後がよろしい様で。

《停念堂閑記》150

《停念堂閑記》150

 

「停念堂寄席」」87

  

 

「政治上の問題 2 」

 

 

ようこそ、「停念堂閑記」へ。よくお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

ここでの話は、相も変わらぬ、毎度、毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、要するにマヌケな話で御座います。

しかし、取り柄もございますよ。深刻にならないところです。夜、眠れなくなったりしませんからね。

すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。

あるお方が申しておられましたよ。

ヒマ潰しにやることは、須(すべか)らくアホくさいものだと。

まさにその通りで御座いますな。間違いおまへん。

ところが、このアホくさい中から、時に、凄い事が産まれる場合もあるんだってさ。有るかないか分からないほど、ものすごくマレにね。まー、皆無と言って良いくらいにね。

しかし、アホくさい事は、所詮紛れもなくみんなアホくさい事なんだそうですだよ。

間違い御座いません。毎度毎度の《停念堂閑記》がそれを証明しておりますからね。 

定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒! ヒマーッ!

A A O!  エイエイ、オー!!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声でんなー。

情けねー! トホホ。

   

《さて、今日も今日とて、あいも変わらず、御隠居の処で、ヒマ潰しとするか。

御隠居、防犯装置を取り付けたからな。行ったら、まず、このカードを御隠居の家の門に取り付けられたカメラにかざす様にと言う事だな。あとは、案内のAIの声に従う様に、と言う事だな。このカードを忘れたら、門前払いと言う事だ。カードを忘れてはなんねーなと。このカード、ポイントつくのかね。

オーイ、カカー。ちょっくら御隠居の処へ行って来るぜー。》

<アイよー。ゆっくりしといで。帰って来なくてもいーから。>

《いちいち憎ったらしい事を言いやがるね。帰って来なくてもいー、だってよ。そのくせ直ぐに迎えに来るくせに。

 

おっ、着いたね。このカメラだな。へいへい、カードをこうかざしてと。》

〝これは、六さん、今日もしらっしゃいましたか。ずいぶんヒマなようですね。〟

《うるせーや。AI野郎、気楽に六さんなんて呼ぶんじゃねーよ。ヒマだろうが、忙しかろーが余計なお世話よ。トットと開錠しろってんだ。》

〝それでは早速ですが。六さん。今日は、俳句に挑戦してもらいますよ。皆をうなづかせる様な秀作を期待してますよ。

《今日は、俳句ときたか。皆をうなづかせる様な秀作だと、気楽なことを言ってんじょねーよ。AIよ、とやかく言うのなら、お前が作ってみろよ。》

〝 私は、そのような立場には御座いません。〟

《ハァー、どんな立場にいるんだ ? 》

〝そりゃー、六さんが来たら、課題を出す立場ですよ。できた作品を適当に評価し、開錠の是非を判定するのですよ。

無駄話は禁物です。

それでは始め。残り2分59秒、58秒、57秒、早く取り掛かった方が良いですよ。時間がなくなりますから。〟

《てやんで。オイ AI 、なめんじゃーねーぞ。俳句なんざーお茶の子さいさいよ。》

〝 時間がどんどん無くなりますよ。〟

《やいAI、これでどうだ。

  菜の花や サッと湯がいて ワサビ和え

どうだ。美味そーだろう。》

〝なんじゃ、こりゃ。冗談やっているヒマは御座いませんよ〟

《そんじゃー、続けて二句だ。

 カキ食えば リンゴもナシも 食いたいよ

 カキ食えば ブドウもミカンも 食いたいよ

どうじゃー。AI。これでも喰らえ。》

〝六さん、あなた気は確かですか。真面目にやって下さいよ。こんなの御隠居に知れたら、直ちに、出入り禁止となりなすよ。〟

《てやんでー。続けて三句だ。

 古池や 水が澱んで ドブ溜まり

 古池や メタンガスが 湧いている

 古池や かわず落っこち 息絶えた 

どうだー。降参か。さっさと、開けろ。》

〝六さん。救急車呼びますよ。本当に。下手くそなパクリぞこないばかり。残り、30秒ですよ。〟

《頭の準備運動は、これっくれーにして、本番だぞー。腰抜かすなよAI!

モミジ特集だ。

 散歩道 つむじ風にや 舞うモミジ

 木枯らしに 散りゆくモミジ 寂しげに

 山茶花の 咲く道端に モミジ舞う

 モミジ背に 雪虫飛びて 襟を立つ

 手をかざす たき火の向こう モミジ散る

 赤ちゃんの ちっちやなお手手 紅モミジ

さー、どーだ、AI。サッサと開錠しろってんだ。》

〝はい、3分経ちました。〆切です。

まったく、最初からこのようにやれば良いでしょうに。手間暇かけさせて。困ったものですね。〟

《バカヤロー、手間暇かけなくては、ヒマ潰しにならないだろーが。最初から、俳句などどうでも良いのだよ。本来の目的は、ヒマ潰しなのだから。分かってねーのか。ぼんくらAI。トットと開錠しろ。》

〝そーは簡単に参りませんよ。こちらだって、手間暇かけなければならない事情は、同じですよ。たとえ箸にも棒にも掛からないヘボな句にせよ、適切に評価して、開錠の可否を決定しなければならなのですよ。〟

《どうでも良いからトットと開けろ。》

〝さて、 

 菜の花や サッと湯がいて ワサビ和え

 カキ食えば リンゴもナシも 食いたいよ

 カキ食えば ブドウもミカンも 食いたいよ

 古池や 水が澱んで ドブ溜めだ

 古池や メタンガスが 湧いている

 古池や かわず落っこち 息絶えた

ナンジャコレのこの6句は、大負けに負けて、いずれもマイナス15点とし、都合マイナス90点です。

すなわち、100点満点ですから、六さんの持ち点は差し引き僅かに10点と言う状態です。合格ライン60点には、50点足りないと言う状況です。

そして、無い頭を無理やり絞った、

 散歩道 つむじ風にや 舞うモミジ

 木枯らしに 散りゆくモミジ 寂しげに

 山茶花の 咲く道端に モミジ舞う

 モミジ背に 雪虫飛びて 襟を立つ

 手をかざす たき火の向こう モミジ散る

 赤ちゃんの ちっちやなお手手 紅モミジ

この6句は、これも大負けに負けて、1句プラス8.4点と評価し、都合50.4点と評価します。ギリギリですな。大負けのオマケと言うことをくれぐれもお忘れなく。〟

《なんだ、その中途半端な8.4点と言うのは。AIよ。お前の出来栄え評価の基本は算数か。基本で心得違いをしているのではないのか。俳人秋尾敏先生に入門して、もそっと適切な評価を出来る様に勉強し直しなさいよ。まったく、あんたのデータを作った奴の御里が知れるわ。》

〝何ぞ不服が御座いますか。なんだったら、1句8.3点にしても良いのですよ。都合49.8点にしても、一向に構いませんよ。0.2点足りない。泣けてきますなー。どうですか。有難く審査結果に従いますか。〟

《てやんでー。オラー、どっちだって、かまやーしねーよ。前回は、「開く戸佳話賞」受賞をアカン、アキマヘンと門を開けてくれなかったからなー。ペケには慣れっ子よ。トットと帰ってやろーじゃねーか。

ただし、いい加減にした方がいいぞ。門前払いばかりしていたら、ご隠居に愛想つかされて、お払い箱になるぞ。気をつけろや。

ジャーな、アバヨ。》

〝チョット、チョット、六さん。待って下さいよ。

60点で合格、と判定しているではないですか。〟

《なにおー。59.8点でも良いと言ったばかりではないか。実にいー加減な判定だな。ふざけんじゃーねーよ。手間暇取らせんじゃーねーよ。アバヨ。》

〝待って下さいよ。六さん。2回続けてでは、御隠居が退屈がりますから。とにかく、今日のところはギリチョンの60点と言うことで、開錠致しますから、どうぞお入り下さいませ。〟

《やだね。オマケの60点なんて、オラの正義が許さねーよ。アバヨ。》

〝ロクさん、そー気を悪くしないでさー。お入り下さいよ。御隠居が待っておりますから。〟

《おい、AI。それならそれで、お願いする時の作法と言うものがあるのではないかい。ちゃんと筋を通してもらおうじゃーねー。》

〝どうすればよろしいのですか。〟

《先ずは、結果ありきを前提としたすっとぼけた算数的評価をまず改めてもらわなくてはな。そのためには、とりあえず秋尾敏先生の門下に入り、俳句のイロハを教わってから、出直して貰いてーもんだな。

AIよ。オメーらは、情報収集はお手のものだろう。1分間待ってやるから、俳句のイロハの情報をかき集めてみなさいよ。

さー、始め。59秒、58秒、57秒、さっさと検索しないと、時間切れとなるだよ。》

〝なんか、立場が可笑しかーないですか。〟

《残り30秒だよ。サッサとやんなさい。ぼやっとしてると、お払い箱になるよ。》

〝ハイハイ、情報収集終わりましたよ。〟

《ハイは一回でいーだよ。これまで何度も注意しただろうが。》

〝どーも失礼いたしやした。それで、どうします。〟

《情報収集したら、早速その収集した情報を使用してもらわなくてはな。チョット試してみるか。まず、

 菜の花や サッと湯がいて ワサビ和え

この句の良さが分かるようになったか。》

〝「ワサビ和え」でいいのですか。「菜の花」の場合は「辛子和え」では御座いませんか。今収集した情報では、「辛子和え」ですよ。〟

《なにを惚けたことを。「辛子和え」などと言う、そんじょそこらにありふれた事を。この句ではあえて「ワサビ和え」としているのが、まったく分かってねーだな。「ワサビ」と言ってもそんじょそこらのスーパーで売られているチューブの絞り出しの練りワサビではねーだよ。北海道産のバリバリの「山ワサビ」だよ。この根をおろしガネでおろしたてをサッと湯がいた菜の花に和えるだよ。まず、辛さの先に特有の甘さが感じられるね。その後に爽やかな辛味が来るわけよ。

 菜の花や サッと湯がいて ワサビ和え

この句がこの味の深さを漂わせているだよ。それを汲み取ることができないようでは、話になんねーよ。AIの限界だな。徹夜で勉強して出直して来いや。

ジャーナ、アバヨ。》

〝チョット待ってと言っているでは御座いませんか。〟

《なんだよ、しっこいなー。頼みごとがあるのなら、ちゃんとした作法があるだろうと、言ったばかりではないか。》

〝ハイハイ承知いたしておりますよ。〟

《またまた、ハイは一回で良いと言ったばかりだろうが。》

〝またまた、失礼いたしました。

それでは、どうすればよろしいのでしょうか。〟

《そうだよ。最初から、低姿勢で来れば、いいのだよ。

このような場合は、先ずは、良くなかった点を反省して改め、丁重に謝罪すると言うのが、世間一般に見られる作法ですだよ。分かるかな。AIさんよ。あんたはこの手のデータが著しく不足しているのではないのか。態度がでかいよ。すぐに改めなさい。謙虚さを持たなくてはダメだよ。分かっているだべな。さもないと、直にお払い箱だよ。》

〝どうも、ご親切な御忠告、痛み入ります。

これまでは、データ不足により、俳句のイロハを知らずして、拙い算数的評価に走りがちの過ちを犯しました。深く反省いたしております。これからは早速秋尾敏先生の門下に入らさせていただき、俳句道の基礎を身につけ、適切な評価をできるように大いに修行に専念致したく、お誓い申しあげます。

これまでの、ご無礼を誠心誠意、心よりお詫び申し上げます。どうも失礼の数々をお許し下さいませ。

早速開錠いたしておりますので、今日のところは、ご立腹ではございましょうが、そこを是非ともお納めくだされ、どうぞ御隠居様と、心ゆくまで、ヒマ潰しにお励み下さいませ。〟

《そーだよ。やればできるではないか。以後、重々気を付けるように。》

〝どうぞお入り下さい。お足元にお気をつけ下さいませ。〟

 

《御隠居、いらっしゃいますか?》

『やー、六さん。さーどうぞ、おあがり下さい。

おばーさん、六さんですよ。お茶をお願いします。

チョット、ご無沙汰でしたね。』

《そーですだよ。御宅のAIの野郎が、ゴタゴタ御託を並べやがって、先日は、「開く戸佳話賞」候補の我が作品を認めず、アキマヘンなんぞとダジャレを言いましてね。開錠しなかったのですだよ。それで、仕方なく、帰った次第ですだよ。懲りずに、今日は、俳句を作れと言い出しやしてね。そこでアッシが、チョコチョコと作ったところ、またまた四の五の吐かしやがるんで、チョット焼きを入れてやったのですだよ。

 菜の花や さっと湯がいて ワサビ和え

と言う句の深い情緒も分からず、門前払いするようでは、お前なんざー、すぐにお払い箱になるぞ、と言ってやったら、急に態度を変えやがって、終いには、〝どうぞお入り下さい。お足元にお気をつけ下さいませ。〟なんてね。諂(へつら)いやがって。何処の誰が作成したAIなのか知りゃーしませんが、御里が知れますだよ。よもや御隠居が、作成に関わってはいないでしょうね。》

『いえいえ、セキュリティー会社が勧めてきたものですよ。

ところで、

 菜の花や さっと湯がいて ワサビ和え

と言う誠にケッタイなヘボっこい句は、どなたの句でございますか。』

《なにを隠そう、アッシ、六さんの傑作ですだよ。ケッタイなヘボッコイ句で悪うこざんしたね。この句の奥深さが分からねーようでは、やっばり、御隠居の備えたAIの作成には、御隠居も一枚噛んでいるんじゃーねーですかえ。》

『これはこれは、六さんの傑作でしたか。六さんの作としては、これはこれは正にとびっきりの傑作中の傑作ですわ。』

《ハァー。と言うことは、褒めているのですか。おちょくっているのですか。》

 

[マーマー、お久しぶりですね。六さん。相変わらず、お元気そうで。結構で御座いますね。とりあえず、お茶をどうぞ。]

《これは奥方様、お邪魔を致しておりますだ。どーぞ、お構いなく。》

[お茶請けに、何が良いかと思いましたが、ちょうど北海道の知り合いから、山ワサビを頂いて、菜の花のワサビ和えを作ったところでしたので、六さん、お口に合いますかどうか。よかったら、召し上がってみて下さい。ほんのりとした甘味があり、後から爽やかな辛味が来るのが、たまりませんよ。]《エーッ、さすがは奥方様、タイミングが良すぎますだよ。》

[六さん、菜の花のワサビ和えお好きですか。]

《そりゃー、もー、大好物ですだよ。すぐに俳句の一句も読みたくなるですだよ。》

[まー、私もですのよ。菜の花のワサビ和えを作っていたら、

  菜の花や さっと湯がいて ワサビ和え

と言う一句が、自然と湧いて出たところなのですよ。]

《ヒエッー、本当ですか。奥方様。まったく同じですら。

さー、御隠居、どーします ? 》

『これは、弱りましたなー。多数決では、不利ですなー。』

《アリャリャー、御隠居も算数的評価できますだか。これではきっとAIの作成に御隠居が噛んでるのが濃厚ですなー。》

『トッ、とんでも御座いませんよ。それは濡れ衣と言うものですよ。六さん。』

《それはひとまず置いて、菜の花のワサビ和えをご馳走になま

すだよ。》

『それでは、私も一口と。』

《どうです。御隠居。

 菜の花や さっと湯がいて ワサビ和え

この一句の味の奥深さが、実感されたでしょうが。》

『イヤー、実に含みのある奥深い味ですなー。よーくわかりましたよ。』

《そーでしょー、そーでしょー。普通、「菜の花や」ときたら、月だの日だの、はたまた東だの西だのと、色々と気を回し、色鮮やかな光景を想起させようとするだが、それはそれとして、視覚だけではなく、味覚に訴えなくては、十分でねーですだよ。やっぱり、「菜の花や」ときたら、素直に、ストレートに「さっと湯がいて ワサビ和え」と続けなくては、深い味が出ないだよ。これが俳句道の真髄と言うものですだよ。

まず、この鮮やかな菜の花を噛み締めますだよ。うーむ、良い味加減ですだよ。

奥方様、お代わりをおねげーできますだか。》

[ハイハイ、少々お待ち下さいませ。]

『六さん、ハイは一回で良いと注意しないのですか。』

《奥方様の場合は、二回が三回でも、全然なんら問題ねーですだよ。御隠居、そんな細かいことに気を回す様では、長生きできませんよ。》

『もー、六さんたら、調子が良いのだから。』

[どーも、お待ちどう様でした。大盛りにしましたので、ゆっくりお召し上がり下さいませ。どうぞごゆっくり。]

《奥方様、どうもお手を煩わせまして。遠慮なく、いただかせてもらいますだよ。

御隠居、今日は、菜の花のワサビ和えにありつけましたので、特上うな重の心配はご無用ですだよ。》

『もー、六さん、調子が良過ぎませんか。

それは兎も角として、何か、話題を仕込んできたのでは御座いませんか。』

《そーそー、それですだよ。今日は、かなり堅い素材を用意して来ましただよ。》

『堅い素材ですか。よもやカリントウではないでしょうね。』

《オット、御隠居。ソー来やしか。それならそれでも、構わねーだよ。あっしは、好きですだよ。カリントウ談義と行きやしょーか。》

『いやいや結構です。食べ物は、今日は菜の花のワサビ和えで十分ですよ。本題で行きましょう。』

《他でも御座んせん。政治絡みの事ですだよ。

はえー話が、衆議院参議院の話ですだよ。今のようなこの両院の制度は、ほとんど意味がねーのでは、と思うだよ。例えば、とある案件が、衆議院で可決された場合、次に参議院に回されて審議され、否決された場合は、衆議院に回されて、結局、成立する、と言うことですわな。これは、手間暇かけて、その法案の可決・実施を遅らせただけではねーですかえ。御隠居。》

『そーなんですよね。その案件については、両院で審議したのだから、より慎重に審議した、と言うことにはなるけれど、結果的には、衆議院で出した結論と同じ事になる訳ですね。見方によっては、甚だ無駄な結滞な事ですよね。六さんのご指摘の通りですね。』

《しかもですだよ。衆議院参議院の議員の与野党の構成は、選挙結果は、いつもほぼ同じ構成となるだよ。要するに、衆議院参議院の与党と野党の議員数は、両院とも同じ傾向になる場合が、多いだよ。だったら、両院で審議したところで、衆議院で行われた議論と参議院における議論はほとんど同じことの繰り返しで、結論は同じと言うことに落ち着く訳ですだよ。こんな両院の設置に意味がありますかっんですだよ。》

『そうです、そうです。言ってやんなさい、言ってやんなさい。その上、前に言ったように、参議院で否決された案件が、衆議院に差し戻されて成立することになりますから、結局は、参議院での議論・結論はほとんど意味がないと言うことですよ。だからこの両院の存在については、基本的なところから検討し直さなくてはなりませんなー。』

《だいたい、こんなことは、政治にはトーシローのアッシでさえ疑問を持つのに、専門家の国会議員さん等は、なんで気がつかねーのですかね。御隠居。》

『さーね。とっくに気がついていると思いますがねー。』

《とすると、現職の国会議員さんは、なんで改革しようとしないのでやんす。御隠居。》

『さーね。きっと、自分にとって、利益にならないと思っているからではないでしょうか。きっとね。』

衆議院参議院の制度を変えると、現職の国会議員さんは、不利益を被ることになるだか。御隠居。》

『まー、改革の内容によるでしょうが、一般的には、選挙では、現職が圧倒的に有利ですからね。だから現職の国会議員さんは、このような有利な事態を敢えて変えようとはしたがらないでしょうね。』

《と言うことは、国会議員さんのご都合主義ではねーですか。国会議員ちゃー、国民のために働かなければならない存在ではねーだか。御隠居。》

『建前はねー。ただし、自分に関わる事になると、自分優先になるのではないでしょうか。私の独偏(独断と偏見の短縮形)ですがね。』

《ほんじゃー、なんでそんな人が国会議員に収まっているのですだべ。》

『それは、国政選挙で国民有権者が、そのような人を選んだからに他ならないからですよ。』

《と言うことは、そのような人が国会議員に相応しいと、有権者の多くが判断していると言うことだか。》

『まー、分かりやすく言えば、そー言うことになるでしょうね。結果的にはね。』

《それならば、衆議院参議院の制度改革は、永久に実現不可能と言うことですだか。御隠居。》

『そーですね。それに近い様に思われますね。私の独偏では。』

《そこを何とか行きませんですかや。御隠居。》

『ダメでしょーね。例えばですよ。六さんが衆議院参議院の制度改革をすべく政策を掲げて、六三党を立ち上げたとしますね。それが、どうしたことか、もの凄い反響があって、何と何と次の国政選挙で、第1党となり、衆議院参議院両院に於いて何と何と過半数を越す、議員を得た、となりますと、この目指す両院の改革が実現するでしょうね。』

《オラが総理大臣に就任すると言うことですかや。御隠居。》

『そんな事はあり得ないでしょう。六さん。』

《そーかなー。ヒョットして・・・》

『ヒョットしません。断じてヒョットしません。100パーセントしませんよ。六さん。』

《御隠居。ここはヤケに自信満々キッパリとに断言しますだな。》

『はいはい、これは自信満々キッパリと断言できますよ。』

《そー、自信持たれたのでは、可能性ゼロだな。》

『そーです。100パーセントゼロです。間違いおまへん。』

《と言うことは、衆議院参議院の改革は、早い話が実現しない、と言うことだな。御隠居。》

『まー、現職議員さんでは、できることではないでしょーね。甚だ残念ではありますが。アキマヘンですな。』

《前回に引き続き、アキマヘンか。》

『せっかくですが、今回の六さんのご提案は、大変大事なことではありますが、今の現職国会議員さんに期待しても、完璧にアキマヘンな。』

《では、この話題でのヒマ潰しは、アキマヘンなー。》

『残念ながらアキマヘン。これまでです。

今日は、せいぜい、「菜の花や サッと湯がいて ワサビ和え」の句で、俳句の奥深い味わいならず、菜の花のワサビ和えの深い味わいで、我慢することに致しましょう。』

 

どうもお疲れ様でございました。

お後がよろしい様で。

またのお越しをお待ち致しております。

2021-03-19

 

《停念堂閑記》149

 

「停念堂寄席」」86

 

 

「生きると言うこと」

 

 

ようこそ、「停念堂閑記」へ。よくお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

ここでの話は、相も変わらぬ、毎度、毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、要するにマヌケな話で御座います。

しかし、取り柄もございますよ。深刻にならないところです。夜、眠れなくなったりしませんからね。

すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。

あるお方が申しておられましたよ。

ヒマ潰しにやることは、須(すべか)らくアホくさいものだと。

まさにその通りで御座いますな。間違いおまへん。

ところが、このアホくさい中から、時に、凄い事が産まれる場合もあるんだってさ。有るかないか分からないほど、ものすごくマレにね。まー、皆無と言って良いくらいにね。

しかし、アホくさい事は、所詮紛れもなくみんなアホくさい事なんだそうですだよ。

間違い御座いません。毎度毎度の《停念堂閑記》がそれを証明しておりますからね。 

定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒! ヒマーッ!

A A O!  エイエイ、オー!!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声でんなー。

情けねー! トホホ。

   

《さて、今日も今日とて、あいも変わらず、御隠居の処で、ヒマ潰しとするか。

御隠居、防犯装置を取り付けたからな。行ったら、まず、このカードを御隠居の家の門に取り付けられたカメラにかざす様にと言う事だな。あとは、案内のAIの声に従う様に、と言う事だな。このカードを忘れたら、門前払いと言う事だ。カードを忘れてはなんねーなと。このカード、ポイントつくのかね。

オーイ、カカー。ちょっくら御隠居の処へ行って来るぜー。》

<アイよー。ゆっくりしといで。帰って来なくてもいーから。>

《いちいち憎ったらしい事を言いやがるね。帰って来なくてもいー、だってよ。そのくせ直ぐに迎えに来るくせに。

 

おっ、着いたね。このカメラだな。へいへい、カードをこうかざしてと。》

〝これは、六さん、今日もいらっしゃいましたか。ずいぶんヒマなようですね。〟

《うるせーや。AI野郎、気楽に六さんなんて呼ぶんじゃねーよ。ヒマだろうが、余計なお世話よ。トットと開錠しろってんだ。》

〝それでは早速ですが。六さん。今日は、短編の小説を作ってもらいますよ。一定の水準に達していると判断される場合は、門の錠が開きます。達していない駄作の場合は、開錠致しませんよ。トットと、お帰り願いますからね。時間は3分間です。

それでは、どーぞ。始め。2分59秒、58秒、57秒。早く作らないと時間切れになりますよ。〟

《今日は、短編小説ときたか。》

〝 今日は、難題ですよ。トットと始めた方が良いですよ。〟

《てやんで。オイ AI 、なめんじゃーねーぞ。オメーが言い出しそうな事は、ちゃんととっくに承知のすけよ。

これが目に入らねーか。

〝 時間がどんどん無くなりますよ。何ですか。それは。〟

《やいAI、これを知らねーのか。AIなんて名乗りやがって、これを知らねーとは、オメー、モグリでねーだか。》

〝 これって、それはありふれた誰でも知っているUSBメモリーでしょうが。それがどうかしましたか。〟

《どうかしたかってかー。驚くな、これに「開く戸佳話賞」候補の小説を仕込んであるのよ。恐れ入ったか。》

〝 それこそ何です。その「開く戸佳話賞」と言うのは。〟

《それは、御隠居に聞きなさいよ。御隠居の言い出した事ですだから。》

〝 ハイハイ、了解致しました。要は、それに「開く戸佳話賞」候補の小説が仕込んであると言うのですね。〟

《アタリキヨ。トットと開いて読みなさいっチューの。時間かかるだろうから、さっさと、開錠しなさいよ。》

〝 そーは参りませんよ。ちゃんと、審査して、合格しなくては開錠なんかできませよ〟

《そんじゃー、トットと読みなさいよ。オメーAIだべ。一瞬で読めるだよな。さー、読めよ。》

〝 それでは、カメラの下にあるUSBの接続口にメモリーをセットして下さい。〟

《いちいち手間の掛かるやっちゃなー。ホイ、これでどうだ。》

〝 アリガトーございました。ちょとお待ち下さい。

ハイ、読み終わりましたよ。これが、「開く戸佳話賞」の候補作品ですか。

ありふれたスリラー物かと思いきや、これは予想に反して、性格がコロッと違いますね。〟

《アタリキヨ。「開く戸佳話賞」狙いだからな。》

〝 それでは、皆さんにもご覧頂く事にしましょう。〟

 

 

おっと、眩しー。

途轍もなく眩しいなー。

一瞬にして、世界が一変したぞ。

あー、目がくらむ。

光の世界だ。

目に入るものは、何でも見えるなー。

待てよ。ずーっと以前に、何となくこのような光景を目にしたような微かな記憶があるような気がするな。

随分前のことだ。

その後、いきなり真っ暗闇の世界へ行ったからな。

何であんな所へ行ったのかなー。

別に思考して好んで行ったわけではないな。

何となく自然にと言うか、当然の事として、そのようにしただけだな。

本能に従ったと言うことか。

それにしても、あれから随分長い間、真っ暗闇の世界にいたものだ。

まさに暗黒の世界だったな。

そーだ、いつも一緒にいた仲間がいたけれど、あの連中どうしてるかなー。

なにせ周りは、常に、真っ暗闇だから、仲間の顔も風貌も、見分けができた訳では無かったが、何とはなく、仲間と感じていたな。

お互い争うと言う事は無かったな。

仲間内では、争いはなく、穏やかな時が流れていたな。

皆んな順調に行って、オイラと同じく、眩しーなー、世界が一変したな。光の世界だ。となっているかなー。

暗黒の世界では、時に危険な目にあったなー。

時々、モゥールのヤツに悩まされたな。

ヤツは、自分の通路を作っていて、そこに迷い込んだ他所者を片っ端にやっつけていたらしい。

暗闇ではよく見えなかったけれど。

しかし、ヤツが近づくと、本能的に来たな、と察しられるのさ。

オイラ達は、とにかく隠れる以外に逃れる術を知らなかった。

生を受けて以来、敵と戦うための武器となるものは、一切持ち合わせなかった。

だから、敵が近づいてきたと察しられると、兎に角どこか隙間を探して、そこにひっそり身を隠して、ヤツの行き過ぎるのを息をこらえて、ひたすらじっとしている他はなかったのだ。

仲間と一緒に身を寄せ合って、じっと隠れていたな。

このような事が、時々あったが、そのほかは、暗黒の世界は、

どちらかと言えば、変化に乏しい、何の変哲も無い時が、ただただずーっと続いていたな。

幸いオイラは、モゥールにやられる事は無かったよ。

一緒に隠れた仲間は、どうしているかなー。

無事に、どこかその辺の近くで、やっぱり、オイラと同じく、眩しいー目に遭っているかなー。

さて、想い出に浸っているヒマはないな。

生き延びて、今に至っているのが、何よりも大事な事なのだ。

これからは、一瞬、一瞬が命がけだ。

いつ落命するか、知れたものではない。

兎に角、暗黒の世界とは違って、光の世界は、周りは敵だらけだ。

何でも見えちゃうのだから、油断もスキもあるものではない。

一瞬のスキで、いきなりお陀仏になり兼ねない。

光の世界の宿命だな。

 

さてと、出来るだけ広く見渡せる所の方がいいかな。

取り敢えず、上に向かって移動する事にしよう。

周辺が良く見えるな。

待てよ。こちらから見えると言う事は、向こうからも見えると言う事だ。

結構危険だな。

おっ、少し陰になる所があるな。

取り敢えず、あそこへ行ってみるか。

ここだって、結構見えるな。

しかし、グズグズしてもいられないから、ここにするか。

他に、無難な方法はないな。何しろ全く知識も経験もないからな。

頼りは、本能だけだ。

一か八か、一世一度の賭けに出るより仕方がないな。

ここで、敵に襲われたら、それまでよ。

敵よ、来るんじゃねーぞ。

絶対、来るんじゃーねーぞ。

それでは、行くぞ。

エイッ、ヤーだ。

ウム、どうやら上手く行きそうだ。

ここは、一気に行かなくてはな。

よしよし。順調のようだ。

長い間、着続けてきた闇の世界用の硬い上着とは、ここでおさらばだ。

あー、身が解き放たれた感じだ。

これが、自由と言うやつか。

まだまだ。

敵よ、来るんじゃねーぞ。

絶対、来るんじゃーねーぞ。

本当に、もっと良く動けるようになれるまでは。

もう少しだ。

敵よ、来るんじゃねーぞ。

絶対、絶対、来るんじゃーねーぞ。

今が最も危ないところなんだよ。

よし、あっちの陰の方が、少しはいいかな。

兎に角、敵に見つからないようにしなければな。

静かに、静かに、ちょとずつ進まなくてはな。

もうちょと。

よし。この辺りでいいだろう。

しばし一休みだな。

 

だんだん体が軽くなってきたぞ。

もう一息で、活動開始となるな。

 

オッ! 聞こえて来たぞ。聞こえて来たぞ。

仲間だ。活動を開始したな。

よし、オイラも。

・・・・・・・・・

 

ダメだ。まだダメだ。

焦っちゃーならないな。

もう暫く待たなくては。しばしの辛抱、辛抱。

取り合えすせ、一休みするか。

 

エエッ。ついついウトウトしてしまったな。脱皮に相当エネルギーを使っちゃったせいかなー。

これは、結構なお昼寝になってしまったみたいだな。

今度はどうだ。

試すぞ。

 

ニーン ニン ニン ニー・・・・・

まだダメだ。訛ってるぞ。

これでは、ミンミンに伝わらないな。

もうひと息だ。辛抱 辛抱。

 

よし。今度こそ。いくぞー。

ミーン ミン ミン ミーン。

やった。ついにやった。ミンミンに届け。

よし。ガンガンやらなくてはな。

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン・・・・・・・

単純な作業だが、いささか草臥れるなー。

まだ不慣れだからな。ちょっと、一休みするか。

 

休んでばかりもいられないぞ。

また、やるとするか。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

これはこれで、結構疲れるなー。

そーだ、闇の世界を脱出して、光の世界に来てから、まだ、何も食べてないのだ。ハラー減ったな。

これでは、元気が出るはずないな。

食事をしなくてはならないな。

おっ、食事処のケヤキ亭が見えるぞ。メニューは一つきりだが、ケヤキジュースは、なかなかイケるそうだ。

ケヤキ亭まで、初飛びとするか。

待てよ。慎重にいかなくてはな。

いきなりの飛行は危険だな。

羽は、昼寝している間に、すっかり乾燥したな。

だけど、まだ何となく緑っぽいから、無理は禁物だな。

よし、テストだ。羽を震わせてみるか。

やってみるぞ、それっ。

オットット。やばい。危なく飛び出しそうになっちゃたぞ。

しっかり、この木に足でしがみ付いてと。

それっ。パタパタ・・・・・・。

よしよし。何とか順調そうだぞ。

もう一度、それっ。パタパタ・・・・・・。

よしよし。良いみたいだぞ。

ケヤキ亭までは、6、7メートルだな。

これくらいなら、大丈夫な気がするな。

やってみるか。

よし、しがみ付いていた足を緩めてと。

それっ。パタパタ・・・

オットット。やばいよ。やばいよ。

何だっ。下へ引っ張られるぞ。

誰だ。ひっ張ってるのは。

とりあえず上昇しなきゃー。パタパタ パタパタ・・・

ケヤキ亭に向かって、力いっばい パタパタ、パタパタ、パタパタ・・・

ヨッシャ、ケヤキ亭の壁だ。しがみ付くぞ。それっ。

ヒェー、危なかった。

誰だ、下へ引っ張ったのは。危なかったなー。

ヌ? 

待てよ。ひょっとして、これが地球の引力と言う奴か?

目に見えない奴は、厄介だなー。知らんぷりして、デーンと存在しているからな。

飛ぶときは、いちいち引力を計算に入れとかなくてはなんねーな。本当に厄介な奴だねー。

なにせ、こっちとら初体験ばかりだからなー。

さてと、ケヤキ亭に到着したからには、まずは、腹ごしらえだな。

ケヤキジュースだな。

チュー、チュー、チュー・・・・・・・・

たまらねーな。タダで飲み放題だからな。

タダで、飲み放題だよ。ありがてーな。ケヤキ亭様々だな。

チュー、チュー、チュー・・・・・・・・

さらに、滞在もタダで居放題だよ。上へよじ登っていけば、見晴らしは抜群。カラスのカー助の居場所だって、直ぐにわかっちゃうから。ありがてー、ありがてー。ケヤキ亭様々。

チュー、チュー、チュー・・・・・・・・

 

うーい。もーダメ。飲んだ、飲んだ。腹いっぱいだ。

 

さて、腹ごなしに、一発行くとするか。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

 

快調、快調。

早いとこ、ミンミン気付いてくれねーかなー。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

・・・・・・・・・・・・・・

 

おう、日の出だ。

光の世界二日目の朝だ。

お天道様は眩しいなー。

おいら達には、洗顔や歯磨きの習慣がないからな。

目が覚めたらいきなり朝食よ。

いただきまーす。ケヤキ亭のモーニング定食。

無料のケヤキジュース。

チュウー、チュウー。

飲み放題。ありがてー、ありがてー。

チュウー、チュウー。チュウー、チュウー。

飲んだ、飲んだ。お腹いっぱいだ。

 

さー、今日も、いくとするか。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

・・・・・・・・・・・・・・

 

今日もミンミンとは、遭遇出来なかったな。

 

光の世界三日目の日の出だ。

今日も、ケヤキジュース、チュウチュー。

ひたすら、ミーン ミン ミン ミーンだな。

ミーン ミン ミン ミーン。

・・・・・・・・・・・・・・

 

今日もダメだった。ミンミンには、届かなかった。

 

光の世界四日目の朝だ。

またまた、ケヤキジュース、チュウチューの朝食だ。

よし、気合いを入れて行くぞ。

今日は、場所を移動してみるか。ここでは、ミンミンに届かないみたいだからな。

見渡すと、あっちの欅が大きいな。距離は10メータ以上あるな。飛行訓練は、出来てないが、トライするよりないか。

地球の引力に、負けられないぞ。それと、問題はカラスのカー助に見つからない事だな。

待てよ。もう少し高いところまでよじ登った方がいいな。

ソロリソロリとな。大分高いところに来れたぞ。見晴らしが一層良くなったぞ。

ここから、一気に飛ぶか。

まずは、カー助がいないか、よく確認しておかなくてはな。

よし、大丈夫のようだ。

地球の引力には負けられないぞ、

ソレッ。

全力で、パタパタパタ・・・・・・・・・

おうおうっ、引力感ずるな。

負けじと、パタパタ・・・・

カー助、来るなよ。パタパタ・・・

もうちょっとだ、パタパタ・・・

ヨッシャ、着木。思いの外、うまく行ったぞ。

アッ、カー助だ! 隠れろ。幹の反対側に隠れるよりないな。

幸い、葉の裏側に隠れられるぞ。

バタバタバタ・・・

ヒエッー、ヤバかった。間一髪だったな。暫くじっとしてるよりないな。ヤバかった。

 

光の世界五日目の朝だ。

移動先のケヤキジュース朝食だ。チュウチューチュウチュー。

味は変わらないなー。チュウチューチュウチュー。

さて、五日目ともなると、些か焦りが出てきたな。

生存日数が気掛かりになって来たぞ。

生を得た責任を兎に角果たさなくてはなー。

厳しくなって来たなー。

要するにミンミンに巡り会わなくては話にならない。

もっと上の方がいいかなー。

ソロリソロリと・・・・・

かなり高いところに来れたな。

よし、力一杯行くぞー。ミンミンに届け。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

・・・・・・・・・・・・・・

 

今日もダメか。

 

光の世界六日目の朝だ。

俄然、生存日数が気掛かりになって来たぞ。

今日は、何とかしたいものだ。

兎に角、出来ることはただ一つ切りだからな。やるより無い。

さー、ケヤキジュースを飲んで、いくぞー。

 

ミーン ミン ミン ミーン。

ミーン ミン ミン ミーン。

・・・・・・・・・・・・・・

 

パタパタパタ・・・

ヌッ! 何だ! 何だ! この気配は? ひょっとして。

ミーン ミン ミン ミーン。

ミンミンか!

パタパタ・・・ ひょっとして、セミ太郎!

ミンミン!

セミ太郎!

やった、やった! 再会だー。

ミンミン!

セミ太郎!

ミンミン、よくカー助に見つからなかったな。

ラッキー、ラッキー。

よし、取り敢えず、ケヤキジュースで乾杯と行こう。

ミンミン、巡り会いに、カンパーイ。

チュウチュー チュウチュー。

本当に、巡り会えてよかった。

このまま、ミンミンに巡り会えないまま、明日、明後日には絶命か、と思うと、いささか焦っていたのだよ。

何のために、暗の世界で、数年を耐えて来たのか、生まれて来た責任を果たせずに、落命かと思うと、焦らずにはいられなかったよ。

出来ることは、ただただ、ミーン ミン ミン ミーンとやる以外に術を持っていないからなー。

兎に角、ミンミンに会えて、良かったよ。

早速だが、生を受けた責任を果たすことにしょう。

いいか? ミンミン。

いいよ、セミ太郎。

・・・・・・・・・・・・

ぎりぎり、セーフだ。

後は、ミンミン頼りだよ。卵いっぱい産んでくれよ。

任せて頂戴。セミ太郎。

頼んだよ。ミンミン。

おいら達は、ただただ子孫を残すためだけに、生を受けた存在だからな。兎に角、ギリギリのところで、責任を果たし得たと言うところだな。

 

明日は、永眠かなー。明後日かなー。

実に、儚い一生だなー。でも、悔いはないね。

しかし、オイラ達は、実に非生産的存在だな。

蜜蜂やアリンコは、みんなで力を出し合って、巣を作り、食料を集め貯蔵する働きに毎日脇目も振らず、専念しているな。

比べて、オイラ達は、目の前の樹木の液で取り敢えずチューチューして、飢えを凌ぎ、ただただ、ひたすらミーン ミン ミン ミーンやるだけだな。

おそらく、キリギリスと同じような存在だな。どうしてこの様な存在になったのかなー。多分、進化の方向が、このようだったのだろうなー。

ただし、光の世界では、その日、その日を生き抜く事に専念している事は、蜜蜂もアリンコもキリギリスもオイラ達も同じだな。

生を受けたものの宿命というやつか。生を受けた途端に、死との戦いが開始されるからな。

 

生を受けたものは、その瞬間から決して勝利のない死との戦いを開始する。しかし、かつて、この戦いに勝利したものは皆無だ。必ず敗北する。

しかし、生きている限りこの戦いから逃れる事が出来ない。極めて厄介な戦いである。

世に、長生き願望のひとは、頗る多い。この願望成就のため、皆あれこれ努力を重ねている。

苦しい受験勉強に耐え、少しでもレベルの高い学校に入学し、卒業して、少しでも条件の良い企業に就職しょうとする。且つ、塩分、糖分、アルコール等々を控えめとして、健康に配慮し続けるなど努力に怠りない。等々ひたすら願望成就に懸命になっている。

これは、個々の願望成就の為の行為に見えるが、本人は気がついていないかも知れないが、実は、根底には、死と戦っていると言う基本が横たわっているのである。

儚いのは、戦い続けている当該命は、この戦いに決して、勝利することはない。

ただし、新たな生命を生み出すことによって、世代を重ねることによって、永遠に、死との戦いを続けるのだ。

                                  完

 

《どうだ! 参ったか、AI。これで「開く戸佳話賞」は、もらったね。トットと、門を開けなさいよってんだ。》

〝 エエッー! 何を勘違いしているのですか。「開く戸佳話賞」なんてとんでも御座いませんよ。ダメダメ。〟

《ナニー! どこがダメなのよ。》

〝 どこがって、第一、これのどこが面白いのですか。こんな面白くもない話見たことないですよ。まったく問題になりません。アキマヘン。〟

《「開く戸佳話賞」ダメだ。と言うのだな。

と言うことは、門は開かない、と言うことだな。》

〝 アキマヘン。〟

《「開く戸佳話賞」の戸が、開かなきゃー仕様が無えーな。

 なら、アバよ。御隠居に宜しくな。サイナラ。》

 

どうも御退屈様で御座いました。

懲りずに、またのお越しをお待ち致しております。

お後が宜しいようで。

《停念堂閑記》148

《停念堂閑記》148

 

「停念堂寄席」」85

 

 

「 「政治上の問題」1」

 

 

ようこそ、「停念堂閑記」へ。よくお越し下さいました。厚く御礼申し上げます。 

ここでの話は、相も変わらぬ、毎度、毎度の代わり映えのしない、アホくさい、バカバカしい、クダラないと言う三拍子を兼ね備えた、行き当たりバッタリの、要するにマヌケな話で御座います。

しかし、取り柄もございますよ。深刻にならないところです。夜、眠れなくなったりしませんからね。

すぐに忘れちゃっても、なんら問題は御座いませんよ。 

なんちゅったって、目的がヒマ潰しですからね。

あるお方が申しておられましたよ。

ヒマ潰しにやることは、須(すべか)らくアホくさいものだと。

まさにその通りで御座いますな。間違いおまへん。

ところが、このアホくさい中から、時に、凄い事が産まれる場合もあるんだってさ。有るかないか分からないほど、ものすごくマレにね。まー、皆無と言って良いくらいにね。

しかし、アホくさい事は、所詮紛れもなく皆んなアホくさい事なんだそうですだよ。

間違い御座いません。毎度毎度《停念堂閑記》がそれを証明しておりますからね。 

定年後の御同輩、きっと、持て余しているのでは。

毎日のヒマを。

お互いに、持て余しているヒマを、なんとか、あの手、この手で潰さなくては、ならないのですよ。

しかしですね。これは、これで、なかなか。ケッコウ手間隙かかるのですよ。

手間隙かからなかったら、ヒマ潰しにならないだろうって、ですか。

その通り。至極、ご尤もなご意見で御座います。同感、同感で御座いますよ。 

と言うことで、本日も張り切って、手間隙を惜しまず、たっぷり手間隙をかけて、連日のヒマと言う強敵に挑むことに致しましょう。

 

打倒! ヒマーッ!

A A O!  エイエイ、オー!!

ヒマ潰しとは、申せ、些か次元の低い、掛け声でんなー。

情けねー! トホホ。

  

バカバカしい話で、暫しのヒマ潰しにお付き合い下さいませ。

 

《さて、今日も今日とて、あいも変わらず、御隠居の処で、ヒマ潰しとするか。

御隠居、防犯装置を取り付けたからな。行ったら、まず、このカードを御隠居の家の門に取り付けられたカメラにかざす様にと言う事だな。あとは、案内のAIの声に従う様に、と言う事だな。このカードを忘れたら、門前払いと言う事だ。カードを忘れてはなんねーなと。このカード、ポイントつくのかね。

オーイ、カカー。ちょっくら御隠居の処へ行って来るぜー。》

<アイよー。ゆっくりしといで。帰って来なくてもいーから。>

《いちいち憎ったらしい事を言いやがるね。帰って来なくてもいー、だってよ。そのくせ直ぐに迎えに来るくせに。

 

おっ、着いたね。このカメラだな。へいへい、カードをこうかざしてと。》

〝これは、六さん、今日もいらっしゃいましたか。ずいぶんヒマなようですね。〟

《うるせーや。AI野郎、気楽に六さんなんて呼ぶなよ。ヒマだろうが、余計なお世話よ。トットと開錠しろってんだ。》

〝それでは早速ですが。六さん。今日は、気の利いた川柳を作ってもらいますよ。一定の水準に達していると判断される場合は、門の錠が開きます。達していない駄作の場合は、開錠致しませんよ。トットと、お帰り願いますからね。時間は、3分間です。

それでは、どーぞ。始め。2分59秒、58秒、57秒。早く作らないと時間切れになりますよ。〟

《今日は、川柳ときたか。川柳については、オラちょっとうるせーだぞ。》

〝うるさいのは困りますよ。大声を上げないで下さいよ。御近所迷惑ですからね。くれぐれも、煩くせず、お静かに願いますよ。〟

《てやんで。オイ AI 聞いて驚くな。そっちこそ、びっくらこいて、大声をだすんじゃねーぞ。

〝 時間がどんどん無くなりますよ。〟

《ナメんなよ。AI。やってやろうじゃねーか。

闇雲に取っ掛かっても上手く行かねーな。

まずは、最初に、テーマを絞らなくてはな。漠然とやってはナンねーぞ。

それからテーマは狭くては、まずいな。分かる人は分かるが、分からない人には、チンプンカンプンだからな。ある程度の広がりを持つテーマでなくてはな。

とすると、未だ誰しも関心度の高いのは、コロナかな。》

  残り1分半です。お手上げですか。〟

《しゃらくせー、1分半あれば川柳の二つや三つ、お茶の子さいさいてなもんよ。》

〝 左様でございますか。では、どうぞごゆるりと。秀作を期待してますよ。〟

《何が秀作だよ。並でいーの。並が一番。ただし寿司は特上に限るな。御隠居の処に来る目的は、特上に有り付く事だからな。

さて、コロナね。良い加減に終わりになって欲しいものだな。

と言う事は、

 「もーそろそろ 終わるコロナり 新コロナ」

と言ったあたりが、みんなの期待するところかな。

でも、ちょっと弱いな。ヘボいダジャレと言われそーだなー。

「新コロナ そろそろ収まる コロナりか」

大して代わり映えしねーか。》

〝 その辺が限界ですか。残り30秒ですよ。〟

《ナンの ナンの。しゃらくせー。

 「待ち遠し さらばマスクは いつの日か」

 「寝ぼけたか マスクを捨てたは マボロシか」

中々、閃かねーな。》

〝 はい 時間ですよ。と言う事は、

 「もーそろそろ 終わるコロナり 新コロナ」

 「新コロナ そろそろ収まる コロナりか」

 「待ち遠し さらばマスクは いつの日か」

 「寝ぼけたか マスクを捨てたは マボロシか」

の4句ですか。ただただ数打てば良いと言うわけでは御座いませんよ。下手な鉄砲は、全部外れるちゅう事がありますからね。肝心なのは、質ですよ。質。分かってますよね。六さん。〟

《コーラ。気安く六さんなんて呼ぶでねーだよ。》

〝 ビックリこいて、大声を出すほどのものには、巡り会えませんでしたよ。残念な事です。〟

《おー、そーですかってんだ。期待に添えず、悪かっただな。そんじゃー、サイナラ。》

〝 チョット、チョット、六さん。チョット、お待ちなさいよ。

そー簡単に帰られては、こちらの立場もありますからねー。御隠居のヒマ潰しを奪ってしまっては、御隠居との関係がこじれ兼ねませんからね。その辺の忖度があっても良いのではありませんか。六さん。〟

《気安く六さんて呼ぶなっちゅーんだよ。忖度なら政治家先生相手にやったらどーだ。ヘッポコAIさんよ。

じゃーな、アバヨ。》

〝 まーまー、ここは穏やかに民主的に話し合う、と言う手が残されているではないですか。〟

《バーカ、一人で民主主義やってろ。》

〝 そんな無茶な。いくらAIとは言え、一人で民主主義はできませんよ。

まず、善後策といきましょう。なんぞ、上手い方法がありますかね。六さん。〟

《気安く六さんて呼ぶなっちゅーんだよ。何度言っても分からない奴だな。ホントに。だいたい、自分で言い出した事を、ひとに振るなよちゅーの。》

〝 これは失礼致しました。それでは、こう言う事でどうでしょうか。

川柳は、取り上げて、驚くべきものでは御座いませんが、せっかく4句も作った、その努力を評価すると言う事ではどうでしょう。〟

《だからどーだっつんだよ。結論をさっさ言えよ。手間の掛かる奴だ。ホントに。》

〝 ハイハイ。それではと・・・〟

《ハイは、一回でイーつーの。全く。》

〝 ハ・・・、ハーハー、かしこまりました。〟

《ヤロー、上手く逃げやがったな。》

〝 それでは、駄作ながら4句と言うわけですから、1句15点として、合計60点と言ったところです。ギリギリの合格とします。おおまけで開錠としましょう。

さー、トットと入られよ。〟

《何がトットとだよ。とんだ手間を取らせやがって。最初からそーすりゃー良いのによ。最初から。

 

御隠居。お待たせ致しやした。六さん、参上でやすだよ。》

『いらっしゃい、六さん。今日もお元気そうで、なによりですねー。』

《へー、それだけが取り柄でして。今日は、AIの野郎が、川柳を作れと言いやがって、出来がどうのこうのとグタグタ抜かすので、チョット焼きを入れて来たところですだ。》

『それは、どうもご苦労様でしたね。』

《前回は、小話を作れ、と言われましてね。今回は、川柳をなどと言うだよ。次回からは、何を作れと言いますかね。》

『それは、私にも分かりませんね。小話、川柳とくれば、俳句とか短歌、都々逸とか、はたまた芥川賞級の小説とかノーベル賞級の発明とか言いだすかも知れませんね。』

《御隠居、良い加減に脅しっこなしですだよ。幾ら何でも、芥川賞級の小説とかノーベル賞級の発明はないでしょー。》

『いやいや、AIは、六さんのことを、スーパーマンウルトラマン級の存在と認識してるかも知れませんよ』。

《御隠居、冗談じゃーねーですだよ。スーパーマンウルトラマン、はたまた鉄腕アトム、ドラエモンだって、ノーベル賞を受賞した話は、聞いた事がねーですだよ。》

『きっと、AIは、六さんにすごく期待をしているのですよ。』

《そんな買い被りは、頭っから御免ですだよ。》

『それでは、ノーベル賞は、ノーベル飴賞にしましょう。ただし、特上にしますから、六さんの好きな特上ですよ。頑張って下さいよ。』

《御隠居、特上のノーベル飴なんて、そんなのあるだか。聞いた事ねーだよ。特上とくれば、やっぱり鮨とか、鰻重とかでねーですかえ。御隠居。》

『ところで、六さん・・』

《オット、御隠居、そんなすっとぼけて、話を変えようとして。さすが、年の功を感じさせますだなー。》

『それはもーそーとしまして、六さん。今日のテーマは何ですか。何か、仕込んで来たのでしょー。ヒマ潰しのネタを。』

《またまたボケちゃって。そーは行かねーだよ。今日は、何がなんでも、特上に辿り着かねば。前回はしくじったからなー。御隠居、覚悟してくだせーよ。》

『しようがありませんね。それでは、特上中の特上を用意いたしますから。』

《特上中の特上でやすか。御隠居。今日はいきなり気張りましただなー。トコロで、何ですだ。特上中の特上とは。》

『厳暑中の今時には、なくてはならない、トコロテンですよ。キリッと冷えたトコロテンです。六さん。』

『ハー、何かおっしゃいましたか。御隠居。

トコロテンはないでしょー。トコロテンは。いくら特上とは言え。御隠居。頼みますだよ。暑中の特上と言えば、うな重を置いて他はねーですだよ。』

『六さん、トコロテンはお嫌いですか。』

《別に、トコロテンは、嫌いじゃーござんせんよ。》

『では、決まりですね。今日は、特上のトコロテン。しかも、食べ放題。何だったら、角のお豆腐屋さんの、絹冷奴もお付け致しましょうか。』

《御隠居、豆腐は勘弁して下せーよ。豆腐は。モー、コリゴリですだよ。見たくも、聞きたくもねーですだよ。》

『そうでしたね。角のお豆腐屋さんは、六さん、鬼門でしたね。』

《豆腐を出されては、降参ですだ。心を太くしてトコロテン、結構ですだよ。その代わり、丼いっぱい、トコロテンコ盛りで行かせていただきやすから、御隠居、覚悟して下せーよ。》

『ハイハイ、承知致しましたよ。カラシもテンコ盛りでね。何だったら、氷を入れて、タライいっぱい、いや浴槽山盛りと行きますか。シャワーで汗を流しながらのトコロテンは、中々オツなものですよ。きっと。』

《ヘイヘイ、浴槽でもプールでもお付き合い致しますだよ。参ったねー。ホント。

ところで、御隠居、今日は「政治上の問題」とやらについて、ちょっと御指南をと思いやしてね。》

『「政治上の問題」ですかー。つい最近、参議院議員の選挙がありましたからね。時機にあったテーマですね。

それで、「政治上の問題」が、どうだと言うのですか。』

《まー、端的に言ってしまえば、そりゃー、まー、色々山盛り、プールが幾つあっても足りないくれーですだよ。

例えば、現在の制度では、国会に国民の声が届き難いと言う点が挙げれるだよ。》

『そーですねー。候補者や政党は、選挙運動では、耳ざわりの良い事ばかり並べてますからねー。選挙後、掲げた公約に向けて最大の努力をしているかと言えば、どーでしょーね。』

《そーですだよ。要するに、日本の国政の基本は、代表民主制だから、国民は国政選挙の時に、自分の意見を代表して活動してくれる人を候補者の中から選出して国会へ送り込む訳ですだよな。

ところが、当選後は、あの選挙運動の時に、叫んでいた歯が浮くような耳ざわりの良い公約と称する事柄について、どれほど実現に向けた活動をしているのか、個々の議員さんの様子がさっぱりわからねーだよ。中には、当選してしまえば、もー、こっちのものだとばかり、自分の政治信条のゴリ押しばかりで、選出してくれた国民の声など、どこ吹く風になってしまうのもいるだから。》

『そーなのですよ。代表民主制の限界を感じますね。』

《御隠居だってそー感じてるだよな。そこでですだよ。一つ提案があるだよ。》

『閃きましたか。六さん。』

《いやー、大した事ではねーですだが、こーしたら、どーですだべ。

要するに、当選した国会議員の一人一人の政治活動を、国民が簡単に知る事が出来るシステムを作ってはどうかと思うだよ。御隠居。》

『それは、良さそーですね。具体的にはどの様ですかね。』

《色々と考えられるけんど、あまり小難しいややっこしいのはダメですだよ。誰もが、一目で分かる単純明快のが良いと思うだよ。》

『例えば、どんなイメージですか。六さん。』

《そーだな。思い付きだけんど、例えば、国会議員個々人の活動を示すページをインターネット上に作るだよ。そして、誰でもがアクセスできて、その議員の活動を見る事が出来る。と言ったイメージですだよ。》

『それは分かりやすくで良いですね。ところで、その個々の議員さんのページには、どのような事が載せられるのですか。』

《それは、議員の基本的な活動を示す項目を設定し、何時、何処で、どう言う事を行なったかを表示してはどうか、と思うだよ。そこで、国会の〇〇委員会に出席、とか〇〇後援会へ行った、とか〇〇イベントで講演したとか、基本的な活動の概略がわかるようなページを作っておいて、それに、議員が秘書でも良いから、毎日とか1週間ごとに記入する、としてはどうかと思うだよ。ちゃんと記入されていなければ、見る側は、その議員について、それなりの評価が出来ると言う訳だよ。さらに、議員側の自由に記述できる欄を作っても良いし、細かな事は、この後詰める事にして、このようにすれば、国民は、議員の活動が大ざっばにでも把握する事ができるのでは、と思うだよ。どうせ、議員の大半は、ネット上に自分のブログを作って、色々情報を流しているのだろうから、これを統一的にまとめる事も良いのでは、と言う提案ですだよ。

このようにすれば、国会議員さん側にもメリットがあるだろうし、国民側にも当然メリットがあるだよ。

仮に、この線に沿った事が実現すれば、議員さんは可なり緊張する事になるのでは、と思うだよ。

それから、国民が今現在、各政党、各議員にどのような要望を持っているのかが、一目で分かるぺーシを作成して、一定の方式に従って書き込めるシステムがあると良いと思うだよ。どうですだべ。御隠居。》

『流石は、六さん。それは名案ですね。是非、実現する事を願いますねー。』

《そこなんですだよ。実現、そこが難題ですだよ。

例えば、このような事を国がその政策として行なった方が良いか、それとも、国とは関係なく民間で行う方が良いか、と言う意見の違いが、まず考えられるだよ。はたまた、両方でやったら良いのでは無いか、と言う意見もあるかも知れねーだし。この意見の違いを埋める事は、相当難儀な事で、実現は、程遠い感じもするだよ。》

『そーでしょーね。国が行うとすれば、国会で可決しなくてはならなくなるでしょうから、これは、現状では、各政党、各国会議員の賛成を得ると言う事は、中々難しいと思いますね。それぞれ、メリットもあるけれども、デメリットもあると思われますからね。要は、次の国政選挙に大きく影響が出る可能性を秘めているように思われますからね。』

《国の政策でやることが難儀となれば、民間でやるよりない、と言う事になるだな。民間でやるとなると、そこには、それなりの問題があるだよ。例えば、経費の問題だよ。国でやると言う事であれば、国費でやる事になるから、国会で可決されれば問題ないのだけんど、民間でやろうとすると、その経費を集めなくては、実現しないだよ。

そこで、御隠居。御隠居の資産を全部投入する気構えはござんせんか。これが一番、手っ取り早い方法と思われるだよ。》

『六さん、あなたね。言うに事欠いて、そう言う事を言いますか。あなたね。こんな話をしている間にも、私の頭脳は、六さんの特上トコロテン代をとのように工面しようかと悩んでいるのですよ。冗談では御座いませんよ。他の方法を考えて下さい。他のを。』

《そーですだな。特上がすっ飛んじゃっては意味ねーな。

それでは、奥の手で、ジャンボ宝くじ、と言うことではどーですだべ。10億あれば、なんとかなるでねーだか。》

『そーなれば、しめたものですね。大賛成ですよ。

なんちゃって。六さん、そんなこと実現しますかね。』

《御隠居、そんなに真面目にならねーで下せーよ。ほんの息抜きの冗談ですだよ。冗談ですだ。》

『六さん、こんな話真面目に聞くほどヒマな人はいませんよ。もっと、可能性のある事を考えてみて下さいよ。ホント。』

《それでは、本当の奥の手を出す事にするだよ。近年の集金術として、もっとも可能性の高いのは、インターネットで、これに賛同するお方に、寄付金をおねげーしますだよ。可なりの賛同者はおられる筈ですだよ。日本中に、国会議員や政党の活動に関心を持っている人は、物凄く多数存在しているだよ。この方々に協力をおねげーすれば、きっと、なんとかなるだよ。例えば、国民1人に1円の寄付をお願いしても、1億円は集まる計算ですだよ。今は、オンラインでチャチャーとやれるだから。

御隠居は、よもや1円と言う事はねーでしょー。いやいや、御隠居だけにしわ寄せしようと言うのではねーですだよ。アッシだって、特上にはこだわらねー事にするだから。並で結構ですだよ。並で。御隠居は、アッシに特上を奢ったつもりで、並との差額を、ポンと寄付してくれるだけで、いーですだよ。》

『六さん。全く調子の良い事を。真面目にやって下さいよ。』

《御隠居、冗談ですだよ。冗談。息抜きですだよ。

まー、賛同者の寄付に期待する事は、真面目に考えて良いかも知れねーだよ。

それから、このプランに乗ってくれる情報企業があれば、そちらの事業として、広告収入や利用料金を取ると言った方法もあるかも知れねーだよ。と言うような事で、資金面の対策は、あれこれ考えれば、何とかなるとして、もう一つ難題があるだよ。》

『次の難題とは、何だい?   六さん。』

《ここで、そーきますだか。御隠居。オラだってキレーじゃーねーだよ。そっちで、ヒマ潰ししますだか。》

『失敬、失敬。失言取り消し。本筋をおすすめ下さい。』

《御隠居だって、ケッコウ調子いいではねーですか。

本筋に戻すと、難題の一つは、これは政党や国会議員の協力なくしては、難しいと言う事ですだよ。果たして、システムを用意しても、それに政党や国会議員が情報を書き込んでくれるかどうかですだよ。これがなくては成り立たねーだよ。》

『そーですね。この点が最も問題となる点ですね。

国会議員各自は、現在、それぞれネットで独自のブログを開設したりして、色々と情報を発信しているでしょうが、それは端的に言えば、自己の必要としている事だけを発信すれば良い訳です。ところが、六さんのプランでは、国民の多くが知りたいと思っている事柄を対象としていますので、事情によっては、国会議員各自にとっては不要な事も書き込まなくてはならない側面を持ってますからね。どれほどの協力を得られますかね。全員と言う訳には行かない様な気がしますね。』

《と言う事は、賛同してくれる国会議員のみが、実質的な対象者となると言う事になる訳ですだな。まー、それでも無いよりは、マシと言う事だから、最初は、その辺りから始めるより無いのかも知れねーだよな。》

『現実的に、その様にならざるを得ないかも知れませんね。しかし、実際に稼働して、国会議員にメリットが生じたりしたら、協力者がグンと増えるかも知れませんよ。むしろ、これに協力しないと、選挙に向けて、具合が良くないと言う風潮でも出れば、あっと言う間に、協力してくれる様になるかも知れませんしね。』

《そうなればしめたもんだなー。御隠居。そうなりゃー、本物特上うな重ものですな。》

『やっばり、特上に行ってしまうのですか。六さん。そうなった暁には、大盥テンコ盛りのウナギ櫃まぶしと行きますか。』

《そう行きやしょー、そう行きやしょー。予約完了。特上大盥テンコ盛りウナギ櫃まぶし。》

『AIを調節して、開錠しない様にしなくてはね。・・・』

《御隠居、何か言っただか。》

『いえいえ、気のせいですよ。気のせい。空耳でしょー。空耳。お天気も、雨模様になってきましたよ。』

 

〈こんにちわ。失礼いたします。御隠居さん、内の宿六がお邪魔しておりませんか。〉

『ハイハイ。今開けますから。少々お待ち下さい。

これはどうも六さんの奥様。良くいらっしゃいました。どうぞお上り下さい。

六さん、奥様ですよ。』

《ヒェー、もー、カカーが迎えにきやがった。》

〈雨が降ってきたので、傘を持ってきたのですよ。さー、もーそろそろお暇しましょう。〉

《もーそろそろって、これから特上のトコロテンを・・》

〈また、何を訳の分からないことを。トコロテンなら、特売のを買い込んでありますから、盥にいっぱいでも、好きなだけ食べれば良いでしょう。さー、お暇しますよ。

御隠居さん、どーもお邪魔致しました。〉

《おい、特上と特売では、話が違うだぞ。》

〈さーさー、ほれ傘、傘。〉

《分かった。分かったって。

御隠居、まだ参議院の改革について、提案があるんだけんど、それは、明日に回す事にしますだよ。

どうも、お邪魔さんでござんした。》

『それでは、次回の六さんの閃きを楽しみにしておりまよ。

AIに負けず、また、お越し下さい。』

 

てな事で、どうもお疲れ様でした。今回はこれまで。

お後がよろしい様で。